【開幕】企画展「さつき盆栽展」6月4日(日)まで、さいたま市大宮盆栽美術館で

さつき(品種名・緋の司)

さいたま市の大宮盆栽美術館で、企画展「さつき盆栽展」が開かれています。コロナ禍の影響で、大規模なさつき展が行われるのは4年ぶりとなります。

さつき(品種名・白玲)

さつき盆栽界の第一人者、礒部繁男さん(礒部緑園)の協力で、多彩な花の色やかたちが魅力的な、満開のさつきが展示されます。休館日の6月1日(木)を挟んで9席ずつが展示される予定です。

さつき(品種名・緋の司)

こちらは深みのある緋色が印象的な「緋の司」という品種です。細い幹が弧を描いて立ち上がる文人樹形に仕立てられ、上下に振り分けられた枝先の花が棚のような姿を見せています。この一品を見ただけでも、盆栽が園芸ではなく、芸術として美術館に展示されるのが理解できるのではないでしょうか。

大宮盆栽美術館は、世界初の公立盆栽美術館として2010年にオープン。栃木県などにあった旧髙木盆栽美術館のコレクションを核とした名品をはじめ、盆栽用の植木鉢である盆器や、水石と呼ばれる鑑賞石、盆栽が登場する浮世絵などの美術作品、盆栽に関わる各種の歴史・民俗資料などを収集、公開しています。

「真の間」での展示

この美術館で最も目を惹かれるのは、座敷飾りでしょう。こちらは江戸時代に「真」「行」「草」の3つの様式に分けられた中で最高格式の「真の間」です。中央は、紅色のグラデーションが特徴の「日光」という種の大作で、太い幹やゆったりとした枝ぶりが風格を漂わせています。両脇には花の形が異なる別の種のさつきを配置し、華やかさがあふれています。

「草の間」での飾り

こちらは「真の間」より崩した、茶室風の「草の間」です。柱に異なる木を使って変化をつけ、狭さを感じさせないよう工夫しています。「真の間」と同じ種の「日光」を使っていますが、かなり雰囲気が違って見えるのではないでしょうか。

庭の風景

広さ約930平方㍍の盆栽庭園も見事です。常時約60点を展示、四季折々の盆栽を楽しむことができます。盆栽の背面に回ることもできるので、正面との違いも確かめることができます。

五葉松「千代の松」

同館で最も大きな五葉松「千代の松」は、推定樹齢が500年。日の当たり方を調節するため回転式展示台に飾られ、2週間に一度前後を変えています。現在は後ろを向いているそうです。

解説パネルには英語表記も

盆栽文化への理解を深めるため、いくつものパネルが掲示されているので、なじみのない方でも安心です。鑑賞のポイントとしては、まずは正面を見極めることが大事だそうです。正面から見た時に最も木が映える形で仕立てられるためです。あと、見るときに少しかがむことも大切です。下から見上げることで、枝ぶりなどの細かいところまで見ることができました。そのほか、根、幹、枝、葉という各部分の見どころなどを学べます。また盆栽と関わりのある盆器、水石、絵画資料、そして歴史・民俗資料も展示されています。

大宮が盆栽の街になったのは、1923年に起こった関東大震災がきっかけでした。被災した東京の業者が、盆栽づくりに適した広い土地、新鮮な水と空気を求めてこの地に移住し、「大宮盆栽村」と呼ばれるようになりました。今でも盆栽町という町名が残っています。

盆栽村に内外の要人を招くなどの努力を積み重ねてきたほか、1964年の東京五輪や1970年の大阪万博で大規模な展示が行われたことなどを通じて、芸術として世界に認められるようになり、「BONSAI」という単語が英語の辞書に掲載されるまでに定着しました。1989年には、初回の世界盆栽大会が埼玉県大宮市(現さいたま市)で開催され、世界32ヵ国の盆栽愛好者約1200人が参加して大成功を収めました。

駅前広場が盆栽のような土呂駅

行動制限が解除された現在は、外国人の来館が目立ちます。コロナ禍前の2019年は、約1割が外国人だったそうです。最寄りの土呂駅へは、東京駅から約40分で出られます。梅雨前の気持ちのいい晴れ間を選んで、日本が世界に誇る盆栽の素晴らしさを改めて学んでみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ編集班・若水浩)

企画展「さつき盆栽展」
会場:さいたま市大宮盆栽美術館(埼玉県さいたま市北区土呂町2-24-3)
会期:2023年5月26日(金)~6月4日(日)
休館日:6月1日(木)
開館時間:午前9時~午後4時30分 ※入館は午後4時まで
観覧料:一般 310円、高大生・65歳以上 150円、 小中学生 100円
詳しくは、同美術館HP