【プレビュー】「よそおいの美学」徳川美術館で6月3日から 尾張徳川家のよそおいをトータルコーディネートの演出で紹介

白綸子地鼓に藤・杜若文小袖 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝正室)着用 江戸時代 19世紀 徳川美術館 6月3日~28日公開

特別展「よそおいの美学」
会場: 徳川美術館 本館展示室(名古屋市東区徳川町)
会期: 2023年6月3日(土)~7月17日(月・祝)  ※展示替えあり
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日 ※ただし7月17日(月・祝)は開館、翌18日(火)は休館
観覧料:一般1,600円/高大生800円/小中生500円
※土曜日は高校生以下無料
同時開催 企画展「極める!江戸の鑑定」(蓬左文庫 展示室)
詳しくは、徳川美術館の公式サイト

特別展「よそおいの美学」が6月3日から7月17日まで名古屋市の徳川美術館で開かれます。
江戸時代の武家社会では、身分や年齢、季節や儀礼などによる細かな決まりごとのなかで、格式に相応しく、おごそかに、あるいは美麗によそおうことが求められました。男性は儀礼など最もフォーマルな場面では公家の伝統的な装束を身に着ける一方、日常のカジュアルな場面で着用する羽織や刀剣のこしらえ、また火事装束や陣中着などに武家ならではの粋を凝らしました。女性は生地や模様によって格の異なる着物を時に応じて使い分け、華麗な筥迫はこせこを身近に置き、化粧によって美を体現しました。
尾張徳川家であつらえられた衣服や装身具などをトータルコーディネートの演出で紹介しながら、それぞれの作品に込められた「よそおい」にかける武家の美学を探ります。名古屋市蓬左文庫で同時開催される企画展「極める!江戸の鑑定」では、重要文化財の郷義弘作の刀「名物 五月雨郷」が展示されます。

序 よそおいのきまり

武家のよそおいには、身分(地位)や職務を示す役割があり、さらに年齢や季節・場面に応じた細かなきまりがありました。徳川美術館には、徳川家康から幕末期の尾張徳川家14代慶勝よしかつ・16代義宜よしのりの用いた品々までが遺されています。江戸時代のよそおいを通覧できる重要な作品群です。

上:石首魚石入蝋色塗刀拵 下:・石首魚石入蝋色塗脇指拵 徳川慶勝(尾張家14代)所用 安政4年(1857) 徳川美術館蔵

第1章 殿のよそおい

よそおいのきまりは、特にフォーマルな場面で厳格に守られた一方で、日常着である羽織や、戦や火事の際に身に着ける陣羽織や火事装束には、輸入した貴重な布を用いたり、目を引くデザインにするなど、多様な好みが反映されました。

黒羅背板地葵紋付火事羽織 江戸時代 17世紀  徳川綱誠(尾張家3代)所用 徳川美術館蔵 6月29日~7月17日公開
黄金色地葵紋波兎文辻ヶ花染羽織(復元) (株)染技連 文化財修理所製作 現代 平成17年(2005) 徳川美術館蔵 6月3日~27日公開

第2章 姫のよそおい

武家の男性と同様、重要な儀式での女性のよそおいも、身分や年齢、季節や場面に応じて細かく定められていました。儀式後の着替えなど、場面に合わせて一日の内に何度もお召し替えをしました。

黒地子犬に雪持万年青文筥迫 江戸―明治時代 19世紀 徳川美術館蔵 6月3日~28日公開
金地胡蝶文筥迫 江戸―明治時代 19世紀 徳川美術館蔵 6月29日~7月17日公開
白綸子地鼓に藤・杜若文小袖 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝正室)着用 江戸時代 19世紀 徳川美術館 6月3日~28日公開

同時開催 企画展「極める!江戸の鑑定」では郷義弘の「名物 五月雨郷」も展示

重要文化財 刀 無銘 郷義弘 名物 五月雨郷 黒田長政・徳川家光・徳川光友( 尾張家2 代) ほか所持 鎌倉時代 14 世紀 徳川美術館蔵

美術品の真贋や価値を評価する「鑑定」には、画題や製作者を見極める専門的な知識が必要とされます。
江戸時代には、刀剣の本阿弥家をはじめ、刀装具の後藤家、書蹟の古筆家、絵師の狩野家・住吉家、茶道の宗匠そうしょうたちによって、それぞれの分野の鑑定が行われていました。鑑定の対象となった作品と折紙おりがみ極札きわめふだ箱書はこがきといった鑑定書から、鑑定の様子に迫ります。

本阿弥光室折紙 元和七年六月三日 (刀 無銘 兼光 付属) 江戸時代 元和7年(1621) 徳川美術館蔵
古筆手鑑「蓬左」 奈良―江戸時代 8―17世紀 徳川美術館蔵

(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)