【開幕】「源氏物語展-珠玉の三十三選-」天理ギャラリーで6月11日まで 写本、絵巻、注釈書 源氏物語を伝えてきた歴史を見る

源氏物語絵合巻 奈良絵表紙 伝土佐光信画 室町末期写

「源氏物語展-珠玉の三十三選-」
会場:天理ギャラリー(東京都千代田区神田錦町1-9東京天理ビル9階)
会期:2023年5月14日(日)~6月11日(日)
会期中無休
開館時間:9:30~17:30(入場は17時まで)
入場料:600円 高校生以下無料
詳しくは、天理図書館のページ https://www.tcl.gr.jp/exh/exh-6019/ へ

源氏物語はどのような形で伝えられてきたのか

平安時代に紫式部が著した『源氏物語』は、文学のみならず、絵画、工芸、学問など日本文化の隅々に影響を与えてきました。源氏物語が日本の歴史において、どのような形で受け入れられ、伝わったかについて、天理図書館が所蔵する重要文化財を含む資料で紹介する「源氏物語展-珠玉の三十三選-」が5月14日から6月11日まで東京・神田の天理ギャラリーで開かれています。

写本

紫式部が書いた源氏物語の自筆原本は現存していません。現代までその内容が伝わっているのは、写真やコピーが無い時代に全54巻もの物語を、人の手で1文字1文字、書き写した「写本」があるからです。その写本も、平安時代のものは現存せず、鎌倉時代のものが最古です。

重要文化財 源氏物語 池田本 伝二条為明等筆 鎌倉末期写
重要文化財 源氏物語 国冬本 伝津守国冬等筆 鎌倉末期・室町末期写

絵巻

源氏物語がこれだけ長く愛されたのは、文字だけでなく、絵と文字が一緒になった「絵巻」の存在も大きいでしょう。文字だけの「写本」が鎌倉初期あたりまでしか現存していないのに対し、絵巻には平安末期のもの(徳川美術館と五島美術館が所蔵する国宝「源氏物語絵巻」)が伝わっています。この国宝「源氏物語絵巻」に続く古い絵巻の一つが、鎌倉末期の重要美術品「源氏物語絵巻 若紫・末摘花巻」です。

重要美術品 源氏物語絵巻 若紫・末摘花巻 鎌倉末期写
重要美術品 源氏物語絵巻 若紫・末摘花巻 鎌倉末期写

注釈書

源氏物語が長い歴史を通じて読み継がれてきた大きな要素として、注釈書の存在もあります。源氏物語は54巻という長さで、主要な人物だけで約50人も出てくる上に、漢詩や和歌の知識が盛り込まれており、非常に難解な面もあります。

展示されている注釈書からは、鎌倉時代の藤原定家や江戸時代の本居宣長ら一流の知識人たちも苦労しながら源氏物語を読み解いていたことが分かります。

定家小本 藤原定家自筆 鎌倉初期
重要美術品 安波礼弁・紫文訳解 本居宣長自筆 宝暦8年(1758)

全54巻を1冊45丁(枚)にまとめた鎌倉時代の注釈書もありました。現代なら新書版「源氏物語入門」といった感じでしょうか。

重要文化財 源氏物語抄 高水本 永仁7年(1299)写

現代人の私たちなら、なおさら原文を理解できなくても当たり前と、少し気楽に源氏物語と向き合うことができそうです。来年の大河ドラマ「光る君へ」の予習をそろそろという方にも、オススメのコンパクトな展覧会です。

全54巻のあらすじも展示

(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班 岡本公樹)