【プレビュー】「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展、6月24日(土)から東京都庭園美術館で

広大な森と湖に代表される豊かな自然を誇る北欧の国・フィンランドは、機能性とともに洗練された美しさを誇る家具やインテリア、飲食器などのプロダクトが世界で愛され、日本でも人気が高まり続けています。

6月24日から東京都庭園美術館で開幕する「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展は、デザイナーが自ら「アートグラス」の名のもとにデザインし、職人との協働作業によって生まれた作品に着目した展覧会です。1930年代の台頭期から1950年代に始まる黄金期、そして今に至る8名のデザイナーと作家が手がけた優品約140件に焦点を当て、フィンランド・グラスアートの系譜を辿ります。

自然光のもと、透明感と輝きを放つ多彩な作品が並ぶなか、フィンランドの環境や歴史を背景に生まれたガラス作品の魅力を改めて味わってみてはいかがでしょうか。

第1章 フィンランド・グラスアートの台頭

アルヴァ&アイノ・アアルト《アアルト・フラワー》1939年 カルフラ/イッタラ・ガラス製作所 ※写真はすべてコレクション・カッコネン所蔵、撮影:Rauno Träskelin

1917年にロシアから独立したフィンランドは、ナショナリズムが高まるなか、新しい国づくりと国民のアイデンティティを取り戻すために様々な側面でモダニズムが推進されました。その動向はガラスの分野にも及び、1930年代にミラノ・トリエンナーレや万国博覧会などの国際展示会、それらに向けた国内コンペティションが数多く開催されるうちに、よりモダンなデザイン性が求められるようになりました。デザイナーが手がけた芸術的志向の高いプロダクト「アートグラス」において、フィンランドらしさが芽生えていったのもこの頃でした。

グンネル・ニューマン《ストリーマー》1947年 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所
グンネル・ニューマン《カラー》1946年 リーヒマキ・ガラス製作所
グンネル・ニューマン《白樺の森》1946年 リーヒマキ・ガラス製作所

この台頭期を代表し、世界のモダンデザイン界に「フィンランド・グラスアート」の名を刻んだパイオニアとも言うべき、アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、グンネル・ニューマンの作品をまずは取り上げます。

第2章 黄金期の巨匠たち

カイ・フランク《アートグラス、ユニークピース》1966年 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所

第二次世界大戦後、フィンランドを取り巻く状況は困窮を極めましたが、その逆境はフィンランド人としてのアイデンティティの確立を促し、高品質かつデザイン性溢れる製品が国際社会において母国を立て直す原動力となりました。
1950年代以降、国際的な認知と外貨を、ともに獲得できる高級志向の強いガラス製品である「アートグラス」や「ユニークピース」の国際展示会への出品が増えました。その結果、デザイン大国・フィンランドとしての評価は確固たるものになりました。

カイ・フランク《ヨーロッパブナ》1953年 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所
カイ・フランク《アートグラス、ユニークピース》1970年代前半 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所
ティモ・サルパネヴァ《アーキペラゴ》1978年 イッタラ・ガラス製作所
ティモ・サルパネヴァ《カヤック》1954年 イッタラ・ガラス製作所
ティモ・サルパネヴァ《蘭》1953年 イッタラ・ガラス製作所

黄金期と呼ばれる1950年代以降、生涯を通してフィンランド・グラスアートを支えたカイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラ、ティモ・サルパネヴァ、オイヴァ・トイッカの4デザイナーを取り上げます。彼らが職人と協働で生み出した数々の優品はシンプルな美しさに目を惹かれます。

第3章 フィンランド・グラスアートの今

マルック・サロ《アートグラス、ユニークピース》2017年 ラシコンッパニア

各ガラス製作所とデザイナー、職人との信頼関係の中で数々の名品が誕生してきたフィンランドのグラスアートですが、グローバル化が進む現代社会において、制作のシステムが変わりました。製作所はデザイナーを外部から招聘するスタイルに切り替えるなど、その状況は変化しつつあります。

マルック・サロ《アートグラス、ユニークピース》2017年 ラシコンッパニア
ヨーナス・ラークソ《ジグザグ》2014-2017年 ラシスミ

現在精力的に活動している作家の中から、伝統技術に学びながらも独自のアプローチで、新たな芸術性を生み出しているマルック・サロとヨーナス・ラークソの作品が紹介されます。

「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展
会場:東京都庭園美術館(東京都港区白金台5-21-9)
会期:2023年6月24日(土)–9月3日(日)
休館日:毎週月曜日。ただし7月17日(月・祝)は開館、7月18日(火)は休館
開館時間:10時~18時(入館は閉館の30分前まで)
入館料:一般1,400円、大学生(専修・各種専門学校含む)1,120円、
中・高校生、65歳以上700円 ※日時指定の事前予約制です。
詳しくは、同館HP

◆巡回情報
2023年3月18日(土)-6月11日(日) 茨城県陶芸美術館
2023年9月16日(土)-12月3日(日) 山口県立萩美術館・浦上記念館
2023年12月16日(土)-2024年3月3日(日) 岐阜県現代陶芸美術館
2024年3月16日(土)-5月26日(日) 兵庫陶芸美術館