【開幕】「Viva! Agri-Culture!… えだまめとラディッシュ」5月21日まで東京・渋谷の(PLACE) by methodで

「美術展ナビ」で内外の話題を幅広く紹介しているキュレーターの嘉納礼奈さんが手掛けた本田正さん(1979-)の初個展「Viva! Agri-Culture!… えだまめとラディッシュ」が、東京・渋谷の(PLACE) by methodで5月12日開幕しました。

福島県須賀川市生まれの本田さんは、17 歳でサーフィン、26 歳で絵画に目覚め、以後はサーフィン、アート、生業の農業の3つをライフワークとする作家です。今回は、代表的なおつまみとして親しまれている枝豆とラディッシュをテーマに、すべて新作が展示されています。

メインは《えだまめとラディッシュ》と題された四曲一双の屏風です。右2枚は春をテーマにラディッシュやウサギ、太陽の1日の移り変わりを描き、左2枚は夏に仕事で携わるシードルの泡や趣味のサーフィンで乗る波、枝豆やその花などが組み合わさっています。
この屏風を作るために、本田さんは都内の美術館や表具店に足を運んだそうです。屏風の形を波や枝豆などの形に合わせて加工する自由な発想を発揮する一方、屏風をろうそくの光で鑑賞してきたことから、下からライティングして大きな影を作るなど、伝統も取り入れました。

こちらは右2枚が夕焼けや赤とんぼなど秋をテーマにし、左2枚は白鳥や羽毛などの冬を描きながら、展覧会に協力してくれた人たちにまつわる景勝地も交えました。

もう一つの作品は、作家が全国5か所(宮城、福島、東京、奈良、福岡)の知人にラディッシュや枝豆を育ててもらった記録写真を見せるインスタレーションです。種から芽を出して、収穫して食べるまでを数枚の写真で振り返ります。その土地、育てる人、時期によって、同じ種からでも全く違った作物ができることに改めて気づかされます。

作物を育ててもらった人とのコミュニケーションから触発された大型絵画も作られました。中央の《うにまめ》は、枝豆を育ててくれた、いとこの奥さんへの感謝の気持ちから生まれました。海女で漁をするウニや、出産したばかりだったのでミルクや赤ちゃんを題材にしています。
本田さんは、2011 年の東日本大震災の際、津波後の黒い海を見たショックで鬱病となり、病院では発達障害と診断されました。10 代から20 代にかけては仕事が長続きせず、社会に適応できない生きづらさと悩みを抱えながら生きていましたが、農業を始めてからは、気がつくと野菜や果物の絵を描いていたと言います。
今回の絵はどれも、眩いばかりにカラフルです。本田さんは「最初は無意識でしたが、黒い海を元の姿に戻したいと、明るい絵を描いてみようという願望がありました」と振り返ります。本田さんの心を癒してくれた明るい色は、見る人の心をも照らしてくれます。(美術展ナビ編集班・若水浩)
Viva! Agri-Culture!… えだまめとラディッシュ |
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会場:(PLACE) by method(東京都渋谷区東1-3-1 カミニート #14) |
会期:2023年5月12日(金)〜5月21日(日) |
休館日:会期中無休 |
入場無料 |
詳しくは、https://soup.ableart.org/news/6520/ |
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