月岡芳年や鏑木清方はどんな媒体に挿絵を描いたのか? 企画展「口絵・挿絵でたどる演芸速記本」国立演芸場演芸資料展示室で8月20日まで入場無料

「美術展ナビの読者にぜひ知ってほしい」と連絡を受けて訪れたのが、国立演芸場内にある演芸資料展示室です。入場無料のこぢんまりとしたスペースで企画展「口絵・挿絵でたどる演芸速記本」が8月20日まで開かれています。タイトルにある「演芸速記本」を知らなくても、美術ファンにはなじみのある月岡芳年や鏑木清方の名前が登場します。
落語や講談の口演を速記術を用いて記した明治・大正期の「演芸速記本」と、そこに描かれた口絵や挿絵に着目します。口絵・挿絵は、落語や講談で語られる登場人物や物語の場面を画像化するだけではありませんでした。現代の雑誌のグラビア写真のように、本文とは無関係な美人画が描かれるなどして、本自体に華やかさを添える役割を持っていたと、担当した国立劇場調査資料課の中澤麻衣さんは説明します。
三菱一号館美術館で先月まで開催されていた「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」や、東京国立近代美術館と京都国立近代美術館で昨年開かれた「没後50年 鏑木清方展」でも、月岡芳年や鏑木清方が挿絵画家だったとの説明はありました。しかし、記者は「挿絵が載ったのはどんな媒体だったか?」までは考えが至っていませんでした。
明治11年生まれの鏑木清方(月岡芳年門下の水野年方に入門)の日本画は重要文化財にも指定されています。一方で、同世代の挿絵画家の鰭崎英朋(月岡芳年門下の右田年英に入門)は、同じく美人画を得意としましたが、戦後も挿絵画家であり続け、美術の世界では清方ほどの知名度はありません。

しかし、並んで展示されている両者の挿絵(口絵)を見比べてみると、鰭崎英朋が鏑木清方に匹敵する画力を持っていたことが分かりました。
芳幾・芳年展、鏑木清方展、重要文化財の秘密展を見た方は、特に気付きがありそうです。国立演芸場(国立劇場の敷地内)の入り口で、企画展を見に来たと言えば入場無料ですので近くに立ち寄った際はぜひ足を運んでみてください。
(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班 岡本公樹)
企画展「口絵・挿絵でたどる演芸速記本」 |
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場所:国立演芸場 1階・演芸資料展示室(東京都千代田区隼町4−1) |
会期:2023年4月1日(土)~8月20日(日) |
開館時間:午前10時から午後5時 |
休室日:5月22~25日・29~31日、6月21・23・25~30日、7月1・21・24~26・28・31日 |
入場料:無料 |
詳しくは、国立劇場の公式サイト |