【開幕】「石黒亜矢子展 ばけものぞろぞろ ばけねこぞろぞろ」東京・世田谷文学館で9月3日(日)まで

展覧会の入口

化け猫や妖怪、想像上の生き物を、日本画のような、なめらかで美しい筆致で描く石黒亜矢子さん(1973年ー)の初めての大規模個展が4月29日から、東京・世田谷文学館で始まります。開幕前日に行われた内覧会にうかがいました。

提灯のぶら下がるやぐらの両脇に化け猫の絵が鎮座し、怪火と黒雲があやしく目配せするような暖簾をくぐる入口は、百鬼夜行の世界への期待と不安をかきたてます。

《地獄十王図》(部分)2022年©Ayako Ishiguro

入口突き当りにあるタイトルのビジュアルにも使われた《地獄十王図》は、今回の目玉のひとつです。猫の閻魔大王など10の王が描かれていますが、地獄に落ちた猫を苦しめる鬼なども、それぞれキャラクターが細かく設定されていて、大きな画面の隅から隅まで飽きずに眺めることができます。

『ねこまたごよみ』皐月、2021年©Ayako Ishiguro

石黒さんは数多くの絵本を手がけています。『ねこまたごよみ』は2021年に出版された最新作。何百年も生きる、しっぽが2本ある猫の妖怪「ねこまた」家族の1年間のイベントが、こと細かく描かれています。原画の下には、文字の入った絵本の版下も飾られているので、物語も楽しめます。

《猫又親子》2021年©Ayako Ishiguro

「ねこまた」を日本画のように描いた作品も目を引きました。

『どっせい! ねこまたずもう』の原画展示風景

無敵の大横綱、ねこまた部屋のにゃんこの山が、くじらのうみら、がまのぬまらの強敵を投げ倒す『どっせい! ねこまたずもう』は躍動感が溢れています。技が決まる時の独特の音も耳に残ります。

2点とも《獅子舞》2023年©Ayako Ishiguro

「百鬼夜行」コーナーには、香港のカンフー映画で見た獅子舞に着想を得たという新作の《獅子舞》が目に留まりました。

完成度の高い下絵©Ayako Ishiguro

下絵は鉛筆で描かれますが、その完成度の高さに驚かされます。

『九つの星』の原画展示風景

『九つの星』は、二人の子どもが九つの星のかけらを探し求める、大人も楽しめる作品です。原画の下には、それぞれ九つの鉱物が飾られていて、想像力が膨らみます。

展示風景
展示風景

最後はタイトルにもある「ばけものぞろぞろ ばけねこぞろぞろ」のコーナーです。多彩な化け猫や妖怪は、どれも色鮮やかで、ユーモラスでもありながら、時には不気味さも醸し出しています。

絵本原画や絵画約470点のほか、下絵約30点など、500点を優に超える作品が飾られています。どの作品も細かいところまでしっかりと描きこまれているので、ゴールデンウィークや夏休みに、ゆっくりと味わうと、化け猫や妖怪の世界に深く浸ることができるでしょう。(読売新聞美術展ナビ編集班・若水浩)

石黒亜矢子展 ばけものぞろぞろ ばけねこぞろぞろ
会場:世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1‐10‐10)
会期:2023年4月29日(土・祝)~9月3日(日)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は開館し、翌平日休館)
入館料:一般1,000円、65歳以上・大学・高校生600円、小・中学生300円ほか
詳しくは、同館HP