芸術新潮5月号は「追悼 総力特集 坂本龍一」

芸術新潮2023年5月号が4月25日(火)に刊行されました。発売前から大きな話題となっている特集は、坂本龍一さんです。
担当した編集部の大久保信久さんは、次のように話しています。
「私は、リアルタイムでYMOと出会った世代になります。中学校では掃除の時間に『ライディーン』が放送され、友だちの家に行っては一緒に『増殖』というアルバムを聴いて楽しむ、みたいな感じです。『戦場のメリークリスマス』の公開は高校時代で、学園祭のテーマ曲になったものだから、それが学校中に1日中流れているなんていうこともありました。
その後も坂本龍一の音楽はずっと聴き続けていましたが、衝撃的だったのは2017年、坂本さんが65歳の時に発表した『async』です。何十年も聴き続けたミュージシャンが、その年齢になって、かつて全く聴いたことのない音楽を生み出した、これは驚きでした。
それ以来、どこかのタイミングで坂本龍一特集を組みたいと思っていたのですが、2021年1月、坂本さんは2度目のがんとの闘病に入ったことを公表します。翌年6月、「新潮」誌で「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」の連載が始まるのですが、それを読んで呆然としました。病状が、なんとなく想像していたよりもずっと厳しいものであることがわかったからです。
私はまず、坂本さんのこれまでのソロアルバムはもちろん、映画サントラやコラボ作品等も含めて、1枚ずつこつこつ聴き直しました。
その上で特集企画書を書き上げました。
それに対して、昨年10月、坂本さんからのOKが出て、本特集はスタートします。
特集の内容についてのこちらからの提案のひとつひとつに、坂本さんは真摯に向き合ってくださいました。
坂本さんの訃報が報じられた4月2日は、編集作業も大詰め、入稿の直前というタイミングでした。
いつかこの日が来ると覚悟はしていたものの、やはりショックは大きく、1週間ほどは眠りの浅い日が続きました。
今はご冥福をお祈りしながら、この特集を、天上の坂本さんに捧げたいと思っています」
特集は、「聴く」「見る」「読む」の3部構成。
第1章「聴く」では、盟友・浅田彰さんが、坂本さんが『async』で達した地平をシャープに解析しています。
晩年の坂本さんの音楽制作に大きなインスピレーションを与えた美術家の李禹煥氏も登場し、坂本さんとの交流を振り返ります。
第2章「見る」のテーマは、坂本さんが近年旺盛に手がけてきたインスタレーション・アート。
多くの作品でコラボレートした高谷史郎さんの責任編集で、この方面における坂本さんの仕事を総覧します。
第3章「読む」では、アートジャーナリストの小崎哲哉氏が、社会に対して、坂本さんがどのような発言及び行動をしてきたのかを紹介します。
最後に表紙のことにもふれておきますと、これは画家の大竹伸朗さんが、この特集のために描きおろしてくださったもの。
描きおろしといっても、主には指による「千切り絵」の手法でイメージを表したもので、強い思いのこもった渾身作です
唯一無二の表現者であった坂本龍一さんの活動を、しっかり受け止める特集をお届けします。
定価1500円。購入は、書店や芸術新潮のサイトから各インターネット書店で。
(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)