【レビュー】「美の祈り Universal Symphony」展 MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)で6月11日まで

滋賀県甲賀市信楽。焼物の里としても有名な信楽の山中に突如現れる美術館「MIHO MUSEUM」。世界的な建築家I・M・ペイ氏が設計を手がけたこともあり、海外にもその名が知られています。また3000件にも上る世界中の美術品を所蔵している美術館としても有名です。現在は春季特別展「美の祈り Universal Symphony」が開催中です。
春季特別展「美の祈り Universal Symphony」 |
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会場:MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300) |
会期:2023年3月18日(土)~6月11日(日) |
開館時間:10:00~17:00(最終入館は16:00まで) |
入館料:大人1300円/高・大学生1000円/小・中学生無料 |
休館日:春季・夏季・秋季、各開館期間中の月曜日(祝日の場合は各翌平日) 展示替え期間、冬季期間 |
詳しくは、館の公式サイト |
桃源郷をコンセプトにしたアプローチ
到着したらまずレセプション棟でチケットを買い、トンネルを通って本館に向かいます。MIHO MUSEUMの代名詞ともいえるトンネルです。このトンネルまでのアプローチには100本もの桜の木が植えられていて見頃の時期になると息を呑むほどの美しさです。まさに「桃源郷」という言葉がぴったりの風景。
それもそのはず、このトンネルは東晋の詩人であった陶淵明が『桃花源記』に書いた「花が両端に咲く道に洞穴があり、その先には理想郷がある」という一節をコンセプトとして造られたのです。銀色のトンネルは桜の季節には美しいピンク色を映し出し、新緑の季節にはその緑を、春分や秋分の夕刻には夕陽を映し出し黄金色になることもあるのだとか。
しかも、トンネルは真っ直ぐではなく微妙にカーブしているので、その先がすぐには見えず、近づくにつれて明らかになっていくのも楽しい演出です。
トンネルを抜けた先に現れるのが本館です。建物のなかに入ると広々としたロビーには本物の木もあり自然と一体化したようなつくりになっています。美術館は、北館と南館に分かれていて、北館は特別展、南館は常設展が行われています。
特別展「美の祈り Universal Symphony」
3月18日から6月11日まで開かれている特別展「美の祈り Universal Symphony」では、洋の東西にかかわらず、人間の営みとして太古より綿々と行われ受け継がれてきたのが「祈り」という行為をテーマに、数多くの所蔵品のなかから選び抜いた作品を見ることができます。

会場でまず目に入ったのはリュトンと呼ばれる水を注ぐ器です。古代ペルシアやギリシャなどで使われていました。リュトンを通った水やワインは神聖な力が宿ると信じられていたようです。ものが多く展示されています。下に鹿やライオンなど聖獣と呼ばれる動物のモチーフがあしらわれています。

こちらは中国の明の時代の絹の布地に刺繍で三本足の鳥があしらわれています。古代中国では太陽の黒点を鳥と見たようで、その鳥には三本の足があったと伝えられてきました。日本神話に登場し、神武天皇を案内したとされる八咫烏も三本足だったので共通点を感じます。

こちらは、近年「奇想」の絵師として人気の高い曾我蕭白の屏風絵です。屏風絵としては珍しく虹が描かれています。富士山は古来より聖なる山で、何人もの絵師がこの山を描いてきました。中世の時代より虹は天界と俗界を結ぶものでそこから神や精霊が降りてくると考えられていたそうです。自然への畏敬の念が伝わってくるような絵です。
歴史の旅へ誘う常設展

常設展では、エジプト、ギリシャ、ローマ、中国など、文明の生まれた地域ごとに展示室が分かれていて、まるで世界史を旅しているようです。歴史的な作品も複数展示されていますので、常設展にも足を運んでみてください。
特別展と常設展をあわせてじっくり見ると、2時間はゆうに越えるボリュームです。ミュージアムショップではグッズや書籍、雑貨や文具が並んでいます。さらにはカフェやレストランもありました。自然のなかで思う存分アートを楽しむことができました。(ライター・若林佐恵里)