【開幕】「幕末土佐の天才絵師 絵金」あべのハルカス美術館(大阪)で6月18日まで

4月22日に大阪・あべのハルカス美術館で開幕する「幕末土佐の天才絵師 絵金」の内覧会に伺いました。
土佐に生まれた絵金は、幕末から明治初期にかけて、数多くの芝居絵屏風などを残し、「絵金さん」の愛称で、地元高知で長く親しまれてきました。独特のおどろおどろしくも、美しい画風で描かれた屏風絵は、今も高知県内各所の夏祭りの数日間、神社の境内や商店街の軒下に飾られています。提灯やろうそくの揺らめく火で浮かびあがる絵は、見るものに強烈な印象を残します。

今回は半世紀以上ぶりに高知県外で行われる大規模な絵金の展覧会です。なんと言っても見どころは、高知の夏祭りを再現した展示でしょう。
高知の神社では参道に「絵馬台」というやぐらを組んで、芝居屏風を飾ります。参拝者はその下をくぐっていきます。夜になって提灯が点いたり、明るくなって提灯が消える様子が、見事に再現され、土佐の夏祭りに来たような感覚が味わえます。

こちらは香美市の八王子宮の夏祭りを飾る拝殿風の「手長足長絵馬台」です。地元の宮大工の入念な装飾が、絵金の屏風をより引き立てています。
絵馬台は祭りの1~2日のために、その都度組まれますが、最近は高齢化の影響で、その機会も減っていると言います。素晴らしい装飾を、まるで高知に来たような雰囲気のなかで、じっくりと見られる貴重な機会です。

神社の参道を照らしながら、歌舞伎の物語を紹介するのが「絵馬提灯」です。《釜淵双級巴》は、石川五右衛門が生まれてから、釜茹でにされた後までを26枚の絵で描いています。
そのほか、掛け軸などは表現が繊細で、残酷で刺激の強い芝居絵とは別の面を知ることができます。また絵馬には狩野派の影響も見られ、ここでも多彩な面を発見できるでしょう。

屏風絵は代表作の多くが展示されています。《木下蔭狭間合戦 石川五右衛門》は、絵金の特徴である赤が目立つ作品です。しかし、よく見ると全体的な面積は実は広くありません。左下に赤を多く使っていますが、ほかはバランよく散らして効果的に印象付ける技巧が光ります。
歌舞伎に詳しい人は、屏風絵に描かれたシーンを選んだ絵金の胸の内に思いをはせるのも興味深いでしょう。また歌舞伎にあまり触れたことがない人も、詳しい解説がついているので安心です。


グッズも地元・高知県の食品メーカーとコラボしたものをはじめ、絵をあしらったものなどが豊富にありますのでお見逃しなく。
大阪にいながら高知の夏祭りの雰囲気に浸れる貴重な機会となっていますので、ぜひお見逃しなく。(美術展ナビ編集班・若水浩)
幕末土佐の天才絵師 絵金 |
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会場:あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階) |
会期:2023年4月22日(土)~6月18日(日) |
休館日:4月24日、5月8日、5月22日 |
アクセス:近鉄「大阪阿部野橋」駅西改札、JR「天王寺」駅 中央改札、地下鉄御堂筋線「天王寺」駅 西改札、地下鉄谷町線「天王寺」駅 南西/南東改札、阪堺上町線「天王寺駅前」駅からすぐ |
入館料:一般1,600円、大学生・高校生1,200円、小・中学生500円 |
※詳細、最新情報は、美術館公式サイト(https://www.aham.jp/)、展覧会公式サイト(https://www.ktv.jp/event/ekin/)で確認を。 ※前期(~5月21日)、後期(5月23日~)で一部展示替えあり |
◆音声ガイド担当の歌舞伎俳優・中村七之助さんのインタビューはこちら