【開幕】個展「大岩オスカール:My Ring」(東京・アートフロントギャラリー)「新しい扉を開き続ける」 5月28日まで

新作を語る大岩オスカールさん。展示会場で。

米ニューヨーク在住の日系人画家、大岩オスカールさんの個展「My Ring」が21日、東京都渋谷区のアートフロントギャラリーで開幕しました。

大岩さんは、光あふれる鮮やかな色彩で描くダイナミックな空間構成や、現代社会の断面を旺盛な批判精神とユーモアで描く作品で知られています。

今回展示の中心となる新作シリーズ「My Ring」は、大岩さんが環境問題や社会問題などをテーマに油彩画を始めた1995年ごろから描いている作品のモチーフを再構成したものです。

個展のために来日した大岩オスカールさんにお話を聞きました。

≪Ring2≫2023 キャンバスに油彩 130×194cm
≪Ring3≫2023 キャンバスに油彩 130×194cm

今回のテーマは「Ring」。大岩さんは、「今までの作品のひとつひとつは、個別であると同時に、自分の人生の中でつながっていると感じることがあり、過去の自分の作品をテーマに絵を描きたい」と思ったのが「Ring」を制作するきっかけだったと話します。

 今までも度々描いてきた都市の風景をコラージュした連作≪Ring≫は、画面中心を流れる漆黒の川が、ひとつひとつの作品をつなげ、異なる時間軸の様々な場所が一つの世界を立ち上げます。

≪Studio(Ring)≫2023,3Dプリント、木、絵具、20×30×30cm

同展では、この連作を3Dプリンターで立体化した新作≪StudioRing)≫も展示されています。

本作は、油彩画に光を透過させることにより、絵画の暗いところは厚く、明るいところは薄くなるという絵画の明暗と物質の厚みがリンクする仕掛けになっています。

大岩さんはこれまでも、油彩、インスタレーション、映像など、ひとつのカテゴリーに留まらず、様々な手法やメディアに挑戦してきました。

「油彩の作品が多いが、手法やツールにはこだわらない。何をやりたいか、何が出来るか、常に新しい可能性を探っていきたい」と意欲的です。

デジタル画像作品の前で、作品中の自身と同じポーズを取る大岩オスカールさん

コロナ禍で制作活動が制限されたこの数年は、タブレットを使ったデジタルドローイングで版画≪隔離生活≫シリーズに取り組みました。

今回は、作品の脇にあるQRコードにスマホをかざすと、NFTでそのまま購入できる作品もありました。

デジタル画像作品《Ring》の前で、作品の説明をする大岩オスカールさん

「今、現金でアイスを買ったり、電車に乗ったりするように、少し先の将来はみんなが普通にNFTで買い物をするようになっているかもしれない。作品そのものだけでなく、その周辺のストーリーも含め、新しいことを楽しみたい」と言います。

「挑戦は必ずしもうまくいくわけではないが、新しい扉を開かなければ、発見もない。うまくいかなくても、それは経験値として、次につながります」と過去の作品を統括した大岩さんの視線は、これから先の世界を見据えていました。

≪Ring5≫2023、キャンバスに油彩 130×130cm

展覧会では新作の油彩5点、立体と映像各1点のほか、川や光をテーマにした近作8点も展示されています。

≪Sumida River≫2015 キャンバスに油彩 111×227cm
≪Light Shop2≫2018 キャンバスに油彩 138×178cm

大岩オスカール:1965年、ブラジル・サンパウロ生まれ。東京、ニューヨークと活動の拠点を移しながら、生活者の視点と客観的で俯瞰する視点が共存する作品を精力的に発表している。

「大岩オスカール:My Ring」は5月28日(日)まで。月、火および5月10日(水)~12日(金)は休館です。

※作品画像は全て、(c)OSCAR OIWA STUDIO  写真提供:アートフロントギャラリー。

大岩オスカール:My Ring
会場:アートフロントギャラリー(東京都渋谷区猿楽町29‐18—A)
会期:2023年4月21日(金)~5月28日(日)
営業時間:水~金 12:00~19:00/土日祝 11:00~17:00
休館日:月、火、および5月10日(水)~12日(金)
観覧料金:無料
同ギャラリーサイト:https://www.artfrontgallery.com/
tel:03-3476-4868

(美術展ナビ編集班)