【開幕】特別展「アール・ヌーヴォーのガラス ガレとドームの自然賛歌」九州国立博物館で6月11日まで

特別展「アール・ヌーヴォーのガラス ガレとドームの自然賛歌」
会場:九州国立博物館
会期:令和5年4月18日(火)~6月11日(日)
開館日時:日曜日・火曜日〜木曜日 9時30分〜17時00分(入館は16時30分まで)
【夜間開館】金曜日・土曜日 9時30分〜20時00分(入館は19時30分まで)
*夜間開館の実施については変更になることがあります
休館日:月曜日 ※ただし5月1日(月)は開館
一般1,700円、高大生1,000円、小中生600円
詳しくは、公式サイトへ。

九州国立博物館(福岡県太宰府市)にて、特別展「アール・ヌーヴォーのガラス ─ガレとドームの自然賛歌─」が開幕しました。同館でのヨーロッパ工芸の特別展は、開館以来はじめてです。

「アール・ヌーヴォー」とは、1890年代~1910年代にフランスを中心に流行した「新しい芸術」のこと。『芸術の日本』を刊行した美術商ビングの店「アール・ヌーヴォー」に由来します。花や昆虫など、自然の造形に見出した装飾モチーフが特徴で、当時最新の素材や技術を用いて表現し、絵画、工芸、家具、建築など様々な分野で展開されました。人々を大いに魅了した、この革新的な芸術運動のなかでも、ガラス工芸分野で牽引した人物がフランス東部のナンシーを拠点に活躍したエミール・ガレとドーム兄弟です。
古代、中世、イスラーム世界、日本をはじめとするアジアなど世界のさまざまな地域・時代の様式からの影響を受けた「アール・ヌーヴォー」。

伊万里風縁飾蓋物 エミール・ガレ 1884-1889年 北澤美術館

本展は、下記の3章構成です。

プロローグ ガラス工芸の歴史
1. ガレのガラス
2. ドームのガラス

古代より続くガラス工芸の歴史を概観しつつ、その黄金期となったアール・ヌーヴォーの美しき名品の数々を世界屈指のコレクションを誇る北澤美術館(長野県諏訪市)所蔵品を中心に堪能できる内容です。

プロローグ:ガラス工芸の歴史

コアガラス脚杯 エジプト 前14世紀 MIHO MUSEUM

ガラス工芸の歴史をたどるプロローグ。世界最古のガラス容器生産である古代エジプトの《コアガラス脚杯》から始まります。コアガラス技法は、紀元前16世紀ごろ、メソポタミアにはじまった最古のガラス器製作技法のひとつです。

コアガラス両手付尖底壺 東地中海地域 前2-前1世紀 MIHO MUSEUM

ローマ帝国時代に作られたローマングラスは、吹きガラスという新技法で、古代におけるガラスの低価格化をもたらしました。そして、イスラームガラスへと続き、カットガラスなど19世紀の近代ヨーロッパのガラス産業を紹介します。

1.ガレのガラス

菊にカマキリ文月光色鉢 エミール・ガレ 1884-1889年 北澤美術館

アール・ヌーヴォ―を代表するガラス器、家具制作の第一人者であるエミール・ガレ(1846〜1904年)。自然の造形を追い求め信念や思想を作品に込めました。彼の初期作品から、19世紀後半にヨーロッパでブームになったジャポニズムの影響を受けた作品、ガレ様式が確立されたとされる1889年パリ万国博覧会の出展作品、栄光の頂点である1900年パリ万国博覧会の出展モデル、そして、海洋に関心を持った晩年の作品まで、その作風の変遷をたどります。

蘭文八角扁壺(カトレア) エミール・ガレ 1900年頃 北澤美術館
魚文高脚杯 エミール・ガレ 1895-1904年 北澤美術館

2.ドームのガラス

アネモネ文花瓶 ドーム兄弟 1900年 北澤美術館

ガラス工芸家でガラス工芸メーカーのオーナー一族でもある兄オーギュスト(1853~1909年)と弟アントナン(1864~1930年)の2人によるドーム兄弟。繊細な写実主義と親しみやすさを追求した作品を生み出しました。

花瓶《蜘蛛に刺草》ドーム兄弟 1910年頃 北澤美術館

1900年パリ万国博覧会に出展したドーム家旧蔵品《アネモネ文花瓶》や1913年ヘント万国博覧会出品作でドーム家旧蔵品である花瓶《蜘蛛に刺草いらくさ》などの名作が並びます。

シクラメン文小水差と杯 ドーム兄弟 1901年頃 北澤美術館

古代から受け継がれてきたガラス工芸の到達点としてのアール・ヌーヴォーと高度な装飾技法の数々を総計133件(北澤美術館からは101件)の作品を通じて、徹底紹介する展覧会です。