オンライン販売開始!【東福寺展図録開封の儀】392ページのずっしりとしたスケール感!特別展「東福寺」図録の4つの読みどころ

5月7日まで東京国立博物館で開催された特別展「東福寺」の図録が美術展ナビオンラインストアで購入できるようになりました。「京都禅寺最後の大物」の全容が1冊に盛り込まれた、ボリュームとスケール感のある図録を”体感”できる図録開封記事を再掲します。(初出4月16日)

禅宗寺院として屈指の規模を誇る京都・東福寺とうふくじ。その貴重な寺宝の数々を初めて大規模に展観する特別展「東福寺」が東京国立博物館平成館で5月7日まで開催されています。展示物の全てをおさめた図録の資料的価値は唯一無二です。東福寺展の図録をこれから購入する方に向けて、注目してほしい4つのポイントを紹介します。

ずっしりヘビー級!広大な伽藍配置をみるような分厚さ

充実した解説が盛り込まれ、ページ数は圧巻の392ページ。手に持つとずっしりと重たく感じます。禅寺として国内最大級の伽藍を誇る東福寺にふさわしいヘビー級の貫禄です。

2021年~22年に東博と九州国立博物館、京都国立博物館で行われた特別展「最澄と天台宗のすべて」の図録もかなりの厚さでしたが、本展の図録はそれに全く引けをとらないスケール感です。これほど重厚な図録は、ぜひ手元に置いてじっくり時間をかけて味読したいものです。

展覧会のための論考・コラムが満載

分厚さの理由のひとつは、巻頭の石川登志雄・東福寺資料研究所長による総論を筆頭に、東博や京博の研究員ならびに東福寺の学芸員や宝物殿管理室長などが手がけた、6本の解説コラム、「各論」と題した5本の小論考の存在です。これらはもちろんすべて本展と図録のために書き下ろされたもの。東福寺の歴史や仏教美術の理解を一段と深めてくれます。

各論 日種真子「室町幕府と『五山』東福寺―扁額資料に注目して―」(P282~283)

筆者は、東福寺展の開催にあたり予習をかねて東福寺関連の書籍を探したのですが、東福寺のみにフォーカスした一般向けの本はたった1冊しか見つけることができませんでした。(ほかに見つけることができたのは、カジュアルな雑誌の特集や京都の観光案内でした)
つまり本図録は、東福寺とその寺宝について知る情報源としても、非常に貴重と言えます。

五百羅漢図を総覧する見開きページの威力

今回の展覧会で特筆すべき目玉の展示品が、伝説の絵仏師・吉山明兆みんちょうの重要文化財《五百羅漢図》です。補作も含め全50幅で1幅につき10人、計500人の羅漢(仏の弟子たち)が細かく描かれています。こうした連作の場合、複数の作画を比べて、相違点を発見するのも楽しみですが、本展では3期にわけて展示されているので、50幅を一体のものとして鑑賞するには、かなりの記憶力を要するでしょう。

4ページ分の五百羅漢図の見開き部分。これでも24幅と一部です (P119〜122)

その点、図録では、五百羅漢図を見開きで一覧できます。高いレベルの印刷技術もあってディテールまでしっかりと視認できます。

日本最大級の禅寺の歴史もバッチリ

法系図(P360~361)

この図録の価値は、数々の美しい寺宝の紹介にとどまりません。開山の円爾えんにに連なる法脈を示した「法系図」、伽藍面がらんづらと称され、現代でも広すぎてグーグルマップでは把握しきれない東福寺全体の「境内図」、830年間におよぶ歴史を概観する「年表」、そして観光ガイドとしても便利な25箇所の「塔頭たっちゅう紹介」など、東福寺を構成するエッセンスがもれなく掲載されています。

塔頭紹介(P364)

展覧会や図録を読んだあとは、京都に足を運んで東福寺にお参りしたくなることでしょう。伽藍面の広い境内を歩き、美しい新緑や庭を眺め、しばし瞑想にふけるとき、これまで以上に自分だけの気づきを得られるはずです。

図録の価格は3000円(税込み)で、会場内特設ショップや美術展ナビオンラインストアで購入できます。

(ライター・佐藤拓夫)

◇さとう・たくお=1972年生まれ、宇都宮市在住のライター。美術好きで図録コレクターだった亡父の影響で、“図録道”の沼にはまる。展覧会会場では必ず図録を購入し、これまでに2000冊以上を読破。購入した図録を眺めては悦に入る時間をこよなく愛する、自称「超図録おたく」。

特別展「東福寺」
閉幕東京会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)
会期:2023年3月7日(火)~5月7日(日)
京都会場:京都国立博物館 平成知新館
会期:2023年10月7日(土)~12月3日(日)
開館時間:未定
観覧料:未定
詳しくは、展覧会の公式サイト https://tofukuji2023.jp/