明兆、畢生の大作「白衣観音図」が登場 高さ3㍍を超える圧倒的迫力と比類なき完成度 特別展「東福寺」

東京国立博物館で開催中の特別展「東福寺」は、2か月の会期の折り返しを迎えて、4月11日から目玉作品のひとつ、重要文化財「白衣観音図」が登場しました。前日に行われたプレス向けの説明会で取材しました(許可を得て撮影)。雪舟とともに「画聖」と呼ばれた吉山明兆(1352‐1431)が最晩年の70歳代に描いたとされる作品で、縦3㍍26㌢、横2㍍81㌢という圧倒的なスケールを誇ります。そして凄いのはもちろん、大きさだけではありません。

白衣観音が洞窟の中、打ち寄せる荒波をものともせず、座禅を組んでいる情景を描いています。平静そのものの観音とは対照的に、力強く洞窟や波濤を表現した筆の勢いに目を奪われますし、観音と龍、善財童子が形作る二等辺三角形の計算され尽くした構図も見事です。この作品は『華厳経』というお経に出てくる有名な場面を描いており、明兆の劇的なセンスにも感服します。


東京国立博物館の高橋真作研究員によると、この観音図は東福寺法堂や仏殿の「仏後壁」と呼ばれる、本尊の後ろ側にある壁に掲出されていた可能性があるといいます。「ダイナミックな筆致といい、完成された構図といい、明兆の代表作と呼ぶに相応しいと思います」と高橋研究員。70歳代にしてこれほどのエネルギーに満ちた大作を完成させたことにも驚かされます。ぜひ多くの方に、間近でこの迫力を感じてほしいものです。
この時期、室町幕府第4代将軍・足利義持(1395‐1423)が熱心に白衣観音を信仰していたこともあり、明兆が義持の関与のもとで制作した重要文化財《三十三観音図》も今展では見られます。《白衣観音図》が義持の指示で作られたかどうかは分かりませんが、《三十三観音図》も見事な作品で、こちらも合わせてぜひ見ておきたいです。

この他にも会期後半には、のちに東福寺を開いた円爾(聖一国師、1202‐80)に、師の無準師範が与えた修行大成の証明書である国宝《円爾宛印可状》など価値の高い寺宝が新たに登場しています。すでに観覧した方もリピートする価値は十分あるでしょう。

なお《白衣観音図》については、鮫島圭代さんの好評連載「この名画を見に、ミュージアムへ!」でも詳しく取り上げています↓。ぜひ読んでみてください。
(美術展ナビ編集班 岡部匡志)
特別展「東福寺」 |
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東京会場:東京国立博物館 平成館 |
会期:2023年3月7日(火)~5月7日(日) |
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで |
休館日:月曜日 ※ただし、5月1日(月)は開館 |
観覧料:一般2,100円 大学生1,300円 高校生900円 中学生以下無料 予約不要、美術展ナビチケットアプリ(当日購入可)でも販売 |
アクセス:JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分 |
問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)へ |
京都会場:京都国立博物館 平成知新館 |
会期:2023年10月7日(土)~12月3日(日) |
開館時間:未定 |
観覧料:未定 |
詳しくは、展覧会の公式サイト https://tofukuji2023.jp/ |