ドキュメンタリー映画 『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全 14 部』が完成 6月に沖縄で先行上映、順次全国公開へ

丸木位里、丸木俊の畢竟の大作、《沖縄戦の図》を多角的に紹介するドキュメンタリー映画、『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全 14 部』(河邑厚徳監督)が完成しました。6月に沖縄で先行上映され、その後全国各地で公開されます。
《沖縄戦の図》は、《原爆の図》や《南京大虐殺》で知られる丸木位里(1901‐1995)、丸木俊(1912‐2000)の夫妻が晩年、6年がかりで取り組んだ作品。1983年から87年の間に制作され、〈久米島の虐殺1〉〈久米島の虐殺2〉〈亀甲墓〉〈自然壕(ガマ)〉〈喜屋武岬〉〈集団自決〉〈暁の実弾射撃〉〈ひめゆりの塔〉〈沖縄戦の図〉〈沖縄戦-きゃん岬〉〈沖縄戦-自然壕〉〈チビチリガマ〉〈シムクガマ〉〈残波大獅子〉の14部からなります。

制作にあたって、丸木夫妻は沖縄県内各地を訪ねて丹念に証言を集め、また現場を知る人たちにモデルになってもらうなどし、地上戦や集団自決などの凄惨な場面をリアルに描きました。一番大きな〈沖縄戦の図〉は4㍍×8・5㍍という大作。いずれも沖縄県宜野湾市の佐喜眞美術館に収蔵、常設展示されており、修学旅行のコースとしても知られています。

映画は《沖縄戦の図》全 14 部をのこらず紹介する初めての試み。「空爆」や「空襲」とは全く違う様相を見せた地上戦の真実、戦争に対する告発、最後には未来への祈りを現わしています。また全作品をまとめて展示する機会は少ないので、映像資料的な意味でも貴重なものになったと言えるでしょう。さらに大きなテーマである戦争体験を風化させず、世代を超えて伝えていくという思い込めて、若い唄者、新垣成世が沖縄民謡でウチナーンチュの心を唄います。
4月1日に佐喜眞美術館で行われた映画完成記者発表で、制作にあたった佐喜眞道夫館長は「こういう戦争を二度と起こしてくれるな、という沖縄の人たちの気持ちが込められている作品。より多くの人に知ってほしいと思い、河邑監督に映画を作ってもらった」と話しました。また河邑監督は「作品を映像で見て、またこの美術館を訪れて作品を見て、という往復運動が始まるのが理想です」と映画に込めた思いを語りました。
6月に那覇・桜坂劇場で先行上映、夏には東京でも
今作は4 月 15 日(土)に沖縄国際映画祭で上映されます。そして沖縄先行上映として那覇市の桜坂劇場で6 月 17 日(土)から公開。東京ではポレポレ東中野で今夏の公開が予定されており、沖縄県内・全国で順次公開されます。また関連企画として佐喜眞美術館では「沖縄戦の図 全 14 部展」が6月1日から2024年1月29日まで開催されます。
佐喜眞美術館HP:https://sakima.jp/
映画『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』公式Twitter:https://twitter.com/OKNWsen14movie
【作品概要】
映画『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全 14 部』
2023 年/88 分/ 16:9 /カラー/ドキュメンタリー
【スタッフ】
製作 佐喜眞道夫▽監督・撮影 河邑厚徳▽音楽監督 尾上政幸▽編集 荊尾明子▽作曲 川田俊介▽助監督 佐喜眞淳▽資料リサーチ 上間かな恵▽CG制作 中村照雄▽ナレーター ジョン・カビラ▽朗読 山根基世
【出演者】
※出演順
新垣 成世(民謡歌手 あらかき・なりせ)
石川 文洋(証言・写真家 いしかわ・ぶんよう)
島袋由美子(証言・久米島の虐殺 しまぶくろ・ゆみこ)
平良 修(証言・牧師 たいら・おさむ)
平良 悦美(証言 たいら・えつみ)
山城 博明(証言・写真家 やましろ・ひろあき)
吉川 嘉勝(証言・渡嘉敷での集団自決 よしかわ・よしかつ)
真喜志好一(証言・建築家 まきし・よしかず)
佐喜眞道夫(証言・佐喜眞美術館館長 さきま・みちお)
丸木ひさ子(証言・丸木俊の姪、絵本作家 まるき・ひさこ)
本橋 成一(証言・写真家 もとはし・せいいち)
平仲 稚菜(証言・教育ファシリテーター ひらなか・わかな)
岡村 幸宣(証言・原爆の図丸木美術館 おかむら・ゆきのり)
知花 昌一(証言・僧侶 ちばな・しょういち)
金城 実(証言・彫刻家 きんじょう・みのる)
山内 徳信(証言・元読谷村村長・国会議員 やまうち・とくしん)
(美術展ナビ編集班 岡部匡志)
◇下記の記事は、2021年から22年にかけて佐喜眞美術館で開催された「命どぅ宝 沖縄戦の図 全14部展」のルポ