【プレビュー】開館1周年記念特別展「佐伯祐三 ー 自画像としての風景」大阪中之島美術館 4月15日から

開館1周年記念特別展「佐伯祐三 ー 自画像としての風景」 |
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大阪中之島美術館 5階展示室 |
会期:2023年4月15日(土)~6月25日(日) |
開場時間:10時~17時(入場は16時30分まで) |
休館日:月曜日(5月1日を除く) |
観覧料:一般1800円(前売・団体 1600円)、高大生1500円(前売・団体 1300円)、小中生500円(前売・団体 300円) ※前売券販売期間は 4月14日(金)まで |
詳しくは、公式サイト(https://saeki2023.jp/) |
約100年前に大阪で生まれ育ち、東京、パリの3つの街に生きた画家・佐伯祐三(1898 – 1928)。2023年の今年は、生誕125年のメモリアルイヤーでもあります。30歳の若さで短くも鮮烈な生涯を終えた彼の大回顧展「佐伯祐三 ー 自画像としての風景」が東京ステーションギャラリーで閉幕。4月15日からは、故郷にある大阪中之島美術館に巡回します。
国内最大級の佐伯祐三コレクションを有する大阪中之島美術館。本展は、開館1周年記念の特別展でもあるため、厳選された代表作約140点が一堂に集結し、初出品となる作品も出展されるので注目です。
佐伯は、短い画業の中で何度か画風を変化させていますが、多くの場合、モチーフとなる風景の発見と結びついていました。佐伯が描いた3つの街に焦点を当て、風景画だけでなく、人物画や静物画も含めた佐伯独自の芸術がどのように形成されたのかを辿ります。
プロローグ 自画像

東京美術学校西洋画科の画学生時代など、初期に多くの自画像を描いた佐伯。
ペンや鉛筆によるスケッチ、東京美術学校卒業制作のほか、1924年の劇的な画風の転換を示す≪立てる自画像≫が展示されます。顔が削り取られ、特異な風貌の同作は、パリで作品を見せたフォーヴィスム(野獣派)の巨匠モーリス・ド・ヴラマンクから「このアカデミック!」と怒声を浴びせられたことがきっかけで描かれました。
第1章 大阪、東京

佐伯は、1924年に初めてパリに渡り、2年間の滞在を経て、1926年3月に日本に戻ります。それから約1年半の一時帰国時代、集中的に取り組んだ画題が東京の≪下落合風景≫と大阪の≪滞船≫でした。パリとは異なる風景に向き合い、「絵にならない」とこぼした佐伯でしたが、電柱や帆柱など、中空に伸びる線を見出していきます。パリ時代の作品に比べて没後も長い間評価の得られなかった一時帰国時代の作品は、今世紀に入り再検証と再評価がおこなわれています。充実した点数で紹介し、佐伯が日本の風景の何を切り取り、どう描いたか独自の視点と表現に迫ります。

第2章 パリ
<壁のパリ>

1924年にヴラマンクから「このアカデミック!」と怒声を浴びせられた出来事以降、自らの作風の模索を続けた佐伯。1925年のサロン・ドートンヌで入選を果たし、パリの下町の店先を題材に重厚な石壁の質感を厚塗りの絵具で表現する独自の作風に到達しました。
この時期の代表作≪壁≫≪コルドヌリ(靴屋)≫などに見える圧倒的な存在感を放つ壁面に注目です。
<文字と線のパリ>

1924年に初めてパリに渡った佐伯の本格的画業はわずか4年余り。特に一時帰国後の2回目の滞仏期に到達した広告の文字と画面を跳躍する線描によるパリ風景は、佐伯の代名詞です。この文字と線による独自の様式は、2回目の渡仏直後の1927年秋から初冬に展開されました。

落葉樹の枝を描いた繊細な線、連なるリズムとなって画面を埋め尽くすポスターの文字、さらには縦に引き伸ばされた人物や自らのサイン。線描でパリの街角を描き出す佐伯芸術の到達点として知られる代表作≪ガス灯と広告≫やカフェ・レストランの連作などから、その比類ない個性をたどります。
第3章 ヴィリエ=シュル=モラン

1928年2月、荻須高徳や山口長男らとパリ近郊のヴィリエ=シュル=モラン村へ写生旅行に訪れ、新たな造形を模索しました。村の中心である教会堂をはじめ、至るところが題材となり、画面に力強く太い線と構築的な構図が復活します。この珠玉の作品群が佐伯の最後のまとまった制作となりました。

エピローグ
1928年3月頃、パリへ戻ってから体調が悪化。8月16日、パリ郊外の精神病院で30歳の若さで亡くなりました。わずかに体力が回復した時に戸外へ出かけて描いた≪郵便配達夫≫と、ロシアの亡命貴族の娘をモデルとした室内での人物画に加え、2つの扉の絵が佐伯の絶筆とされています。
描かれた街並みの中に、画家の内面や深い精神性を感じ取ることができることから、佐伯作品は、画家自身を映した自画像に例えられます。大阪では、15年ぶりの大回顧展で、佐伯芸術の魅力を再発見してみてください。