【プレビュー】「TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」東京都写真美術館で4月7日から

「偶然と才気によって、予期しない発見をすること」という意味を持つ「セレンディピティ」をテーマにした展覧会「TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」が東京都写真美術館で4月7日から 7月9日まで開催されます。約3万7000点の収蔵品から、「セレンディピティ」をキーワードに選ばれた作品を見ることで、ありふれた何げない一瞬にある日常の豊かさや写真家たちのささやかな心の機微を感じ取ることができるでしょう。
TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見 |
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会場:東京都写真美術館 3F展示室(恵比寿ガーデンプレイス内) |
会期:2023年4月7日 (金)~ 2023年7月9日 (日) |
休館日:毎週月曜日 (ただし5/1は開館) |
開館時間:10:00-18:00(木・金は 20:00まで) 入館は閉館 30分前まで |
観覧料:一般 700円 、大学・専門学校生 560円、中高生・ 65歳以上 350円 |
※オンラインによる日時指定予約推奨 詳しくは(http://www.topmuseum.jp/)へ。 |
しずかな視線、満たされる時間
それまでとは全く違った「日常」を送ることを余儀なくされたこの数年。しかし、日常というありふれた世界も、ちょっと視点を変えてみれば、様々な気づきにあふれています。
こちらは吉野英理香がコロナ禍の外出自粛中に、飼っているインコのジョビンをインスタントカメラ「チェキ」で撮影したシリーズなど、作家たちが日常の中のささやかな発見を捉えた作品です。



日常の中でこうした瞬間を写真というメディアで切り取った作家たちが、”発見”によって幸せや満ち足りた気持ちを抱いたことも感じられるでしょう。

窓外の風景、またはただそこにあるものを写すということ
「最古の現存写真」とされるニセフォール・ニエプスの《ル・グラの窓からの眺め》は、暗い箱のなかに映る像を何かの形で定着させて記録しようと実験していたニエプスが、実験室の窓から外の風景を写したものです。ニエプスにとっては「ただ写すという行為」自体が目的だったと言える景色ですが、それを鑑賞する現代の私たちは、その風景の中に何かを発見し続けています。
このセクションでは、作家たちが「ただ、そこにあるものを写しとる」という行為によって得られたイメージが、それを鑑賞する人におこすセレンディピティについて考えます。作品に写るイメージを、ただそのまま見るという見方もあれば、イメージから記憶や想像を解きほぐし自分だけの「なにか」に出会ったり、気づいたりすることもあるかもしれません。


ふたつの写真を編みなおす
写真家たちの心の中で起きるささやかな衝動により、そのときどきにシャッターが押され、世界が切りとられていきます。その結果、膨大な数となった写真のなかで、撮影した場所や時間を越えて2つの写真が、彼らが全く予期していなかった何かの関係性によって結ばれることがあります。それはまさしくセレンディピティの「ちから」。
奈良美智のディプティック(フランス語で二連の絵のこと)作品が所蔵後初公開されるほか、2つが並ぶことで意味を帯び、豊かさを増した作品が紹介されます。





作品にまつわるセレンディピティ
優れた作品を生み出す作家たちも、私たちと同じように日々を生き、毎日を暮らしています。そんな日常のなかでセレンディピティが訪れ、作品制作のきっかけになることもあります。
写真を学んでいる学生時代、たまたま大判カメラを手に取ってみたらしっくりなじむ感覚を感じ、現在の作品のような表現方法に出会った本城直季や「いま生きているということ」を実感するため世界中に冒険に出るようになった石川直樹など、その感覚は人ぞれぞれ異なり、予期せずにやってきます。


楽しみ方は幾通りも 探していなかったものが見つかる展覧会
展覧会を見るという行為自体も、予期しない出来事との出会いにあふれた、セレンディピティな体験のひとつ。その思いがけず心を豊かにする発見や気づきは、鑑賞者ひとりひとりによって異なり、正解はありません。展覧会を通して自分自身のセレンディピティについて考え、日常を少し豊かにするきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)