【街のアート】絹谷幸二さん《ジュラシックえちぜん》福井の魅力を色彩豊かに大胆に

来春、北陸新幹線の金沢ー敦賀間が新たに開業し、恐竜博物館や東尋坊などの観光スポットにより光が当たりそうな福井県。

これら魅力的な観光地を繋ぐ「えちぜん鉄道」の起点となる福井駅に、日本を代表する画家の絹谷幸二さんが原画を描いた巨大ステンドグラスの《ジュラシックえちぜん》(縦約2㍍80、横約7㍍10)が完成し、3月12日に披露除幕式が行われました。
オリジナル原画は、絹谷さんが県内の観光スポットなどを歩いて取材し、約2か月かけて描き下ろしました。それをクレアーレ熱海ゆがわら工房で、1327枚のガラスピースに変換し、約半年かけてステンドグラスとして完成させました。大胆で色鮮やかな原画の雰囲気が、171色のガラスで見事に表現されています。
1972年から全国の駅や空港に陶板レリーフやステンドグラスなどを設置してきた公益財団法人日本交通文化協会が企画し、一般財団法人日本宝くじ協会の「社会貢献広報事業」の助成を受けています。日本交通文化協会が企画・制作するパブリックアートは、これで555作品目となるそうです。みなさんも知らないうちに交通機関を利用する際に、きっと目にしていることでしょう。

この作品で、なんと言っても目を引くのは、鮮やかな青空をバックに画面を悠々と闊歩する恐竜たちです。福井県は国内一の恐竜化石の産出地で、日本で最初に学名が付けられた「フクイティタン」などが、中央付近で生き生きと躍動しています。画面右下は、禅の修行道場の「大本山永平寺」です。
絹谷さんは恐竜を描くのは初めてでしたが、お孫さんから模型を渡してもらい、参考にしたそうです。除幕式では作品の影のプロデューサーとして紹介され、描かれた恐竜の名前や特徴をスラスラと説明してくれました。
恐竜に関する日本最大級のミュージアムとして人気の「福井県立恐竜博物館」はえちぜん鉄道勝山駅からバスで約15分。今は休館中ですが、今年夏にリニューアルオープンします。

JR福井駅西口駅前広場には、全長10㍍のフクイティタンの実物大モニュメントなどもありますので、訪れの際はお見逃しなく。

中央下にあるのは、国指定名勝の東尋坊。日本海の荒波が打ち寄せる断崖です。海面の変化が絹谷さんらしい色彩で細かいガラスピースで表現されています。

画面右側を見ると、福井県のマスコットキャラクター「はぴりゅう」が手を差し伸べています。木の枝には、日本のメガネフレームのシェア9割以上を占める鯖江市特産品のメガネもかかっています。

左側に目を移すと、えちぜん鉄道と、来年は福井県まで延びる北陸新幹線が疾走しています。また、高齢者の乗降のサポートや列車の接続案内アナウンスなどを行う、全国的に有名なえちぜん鉄道のアテンダントも観光客たちを温かく迎えてくれています。
絹谷さんは、「帰った後も、福井の印象を脳裏に焼き付け、来た方にはこういうところだと指し示すように描きました」と、この1枚の作品に福井の見どころ、良いところをすべて詰め込みました。
来春、新幹線が開通すれば、もっと多くの人々が全国はもちろん海外からも訪れ、このステンドグラスを見ることで、素敵な思い出をさらに深く心に刻み、これから名所に向かう人々の胸をワクワクさせてくれることでしょう。(読売新聞美術展ナビ編集班・若水浩)
◆絹谷幸二さんのインタビューはこちら。《ジュラシックえちぜん》以外にも、美術教育や野球についても語ってくれています。