【学芸員に聞く・前編】「ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉」SOMPO美術館で3月25日から 見どころやおすすめの作品は?

SOMPO美術館で、3月25日(土)から6月11日(日)まで「ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉」が開催されます。本展を担当した岡坂桜子学芸員に、見どころやおすすめの作品を聞きました。
(ライター・齋藤久嗣)
バラエティ豊かな作品でブルターニュを知る機会に
――まずは、本展の見どころを教えてください。
本展では、1850年から1940年代にかけて、フランスのブルターニュ地方をテーマに描いた作品を紹介します。実は、一世紀に満たないこの期間に、近代絵画のスタイルが目まぐるしく変化していて、驚くほど幅広い絵画様式が生まれました。本展では、アカデミスムの考えに沿った古典的なスタイルで描かれた作品から、平面的で色鮮やかなポスト印象派やナビ派まで、バリエーションに富んだ絵画を楽しめます。

また本展は、様々なスタイルで描かれたブルターニュの自然や風俗を通して、ディープなフランスを知っていただく機会にもなります。ぜひ会場で、ブルターニュにはどんな風景が広がり、どんな文化や歴史があるのか、確かめていただきたいです。

――特に見てほしい作品は?
1章で取り上げる、サロンを拠点に活動した画家たちの作品ですね。まず、物理的にサイズが大きくて迫力があります。写実的なスタイルで描いているので、初心者でも鑑賞しやすいと思います。

――なぜ、大きな作品が揃っているのでしょう。
19世紀のパリでは年に1回、サロンという官展が開催されていましたが、何千という作家が応募する大規模な展覧会でした。ですから、無数にある応募作品のなかで、いかに審査員や観衆の関心を引きつけるかがポイントになります。構図で目を引き、描写に説得力を持たせ、迫力を出すために、大きなカンヴァスを使って勝負をかけるわけです。
――サロンで注目されることが、画家の出世にもつながるのでしょうね。
そうです。サロンで評判を得て、さらに国に作品を買ってもらえれば、画家の地位や名声も上がっていきます。実は、第1章で紹介する作品の約半分が、いわば「政府お墨付きの優秀作品」としてフランス国家が購入した作品なんです。その時代に評価された作品が、本展に集結しています。

ゴーギャンだけではない ブルターニュに集った画家たち
――本展に出品される作品の多くが、フランス・カンペール美術館のコレクションです。カンペール美術館はどんな美術館なのですか?
カンペール美術館は、今から150年以上前の1872年に設立された歴史ある美術館です。ジャン=マリー・ド・シルギー伯爵というブルターニュ地方の貴族が一代で集めたコレクションがもとになっています。伯爵は、1842年から52年の10年間の間に一気に買い集め、絵画約1,200点、素描約2,000点をブルターニュに持ち帰りました。伯爵のコレクションはオールドマスター(18世紀以前に活動したヨーロッパの優れた画家の作品)を主としていたため、ブルターニュ主題の作品は含まれていませんが、伯爵の没後、同館では一貫して地元・ブルターニュ関連の絵画を収集する方針を貫いています。
――SOMPO美術館は、これまでもランス美術館展やノルマンディ―展など、パリ以外の地域を特集した展覧会を開催してきました。
はい。当館はフランス近代絵画の展覧会を一つの軸としており、フランスで評価されていても、日本ではまだまだ大々的に紹介されていない画家や作品などを積極的に取り上げています。
本展では、のべ45作家の69点を展示しますが、ゴーギャンなど一部の著名な画家を除いて、日本ではまだあまり知られていない作家も少なくありません。
ブルターニュといえば、ゴーギャンを思い出す人も多いと思いますが、それだけではないということをぜひ知っていただきたいです。

※後編に続く。後編では、ブルターニュの魅力や本展で注目したい作家を紹介します。
ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉 |
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会場:SOMPO美術館(東京・西新宿) |
会期:3月25日(土)~ 6月11日(日) |
開館時間:午前10時~午後6時(最終入館は午後5時30分まで) |
休館日:月曜日 |
観覧料:一般 1,600円、大学生1,100円、高校生以下無料 |
アクセス:新宿駅西口より徒歩5分 |
詳しくは、美術館のホームページへ 問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)へ |