【開幕】「椿椿山展 軽妙淡麗な色彩と筆あと」板橋区立美術館で4月16日まで

渡辺崋山に師事し、みずみずしい色彩による花鳥画で人気を博した江戸時代後期の文人画家、椿椿山(つばき・ちんざん)の展覧会が、板橋区立美術館で4月16日(日)まで開催されています。開幕前日の内覧会に伺いました。
椿椿山展 軽妙淡麗な色彩と筆あと |
---|
会場:板橋区立美術館 |
会期:2023年3月18日(土)~4月16日(日) 前期:3月18日(土)~4月2日(日) 後期:4月4日(火)~4月16日(日) ※前後期で大幅な展示替えあり。 |
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日:月曜日 |
アクセス:都営三田線西高島平駅から徒歩約14分 |
入館料:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円 ※土曜日は小中高校生は無料で観覧できます。 |
詳しくは(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/)へ。 |
師・渡辺崋山との絆
椿山を語るにあたり、師・渡辺崋山の存在は欠かすことが出来ません。蛮社の獄により、敬愛する師を失った椿山。「渡辺崋山像」は、崋山の一周忌に向け完成させる予定でしたが、悲しみのあまり制作することが出来ませんでした。

何年にも渡り師の姿を繰り返し描き、完成したのは十三回忌の年でした。細部までこだわりぬき、試行錯誤する制作の過程からは、敬愛していた師への追悼の念が強く感じられます。

蛮社の獄により蟄居となった崋山を救済するため、椿山が奔走する様子が事細かに記された資料も展示されています。隣には、崋山が椿山に宛てた自筆の遺書もならび、当時の不穏な世の中の空気が伝わってきます。
人々に必要とされた穏やかな風景
みずみずしい色づかい、華やかながらも、柔らかな雰囲気が漂う椿山の花鳥画は、全国各地から求められるほど人気を博し、椿山の代名詞となりました。画業初期には、山水画も描いており、豊かな自然、そして自然とともに暮らす人々への優しいまなざしが描かれています。
不穏な時代に生きた人々は、椿山が描く心落ち着く風景を必要としていたのかもしれません。また、肖像画も得意とした椿山は、高野長英の肖像画など、多くの肖像画を描いています。



フリーランス画家・椿椿山
椿山の元にきた絵の注文の詳細は、手控え帖に残されており、そこには画題、縮図、月日、形状材質、員数、法量、依頼者、紹介者などが事細かに記されています。これらの記録を見ていくと、椿山は全国各地から注文を受けていることがわかります。大きな流派に所属しなかった椿山の活動は、広い交友関係により支えられていました。
門人録には、椿山が24~53歳までの間に入門した延べ373名の名前が記されています。弟子の中には、書簡による通信教育で学ぶ者もいたそうです。
写生に学ぶ
椿山は気になる絵を見つけると、手控え帖に縮図を描きとめました。この手控え帖は現在確認されてるだけでも五十冊にも及び、当時どのような絵画が実在していたのかを確認できる資料としても大変貴重なものです。


「縮図は見るものごとに何でも数多く写すことがよろしい」
「写生は生物の定理を理解するためである」
「写意の用を引き出すのが写生である」と語った椿山。写生に学び、描きとめられた絵は、椿山により再構成され描かれました。

椿山ってこんな人!
崋山とのエピソードや、作品、資料などからもわかるように、椿山はまじめで努力家、そして温和な人柄であったといいます。俳諧や煎茶も熱心に学ぶなど、好奇心旺盛な人柄がうかがえます。

椿山の展覧会としては約30年ぶり、関東では初めての開催となります。師である渡辺崋山に隠れ、あまり注目されることがなかった椿椿山ですが、作品や資料からは、師・渡辺崋山との強い絆、そして、椿山の実直な人柄を感じることが出来るでしょう。
(美術展ナビ編集班スタッフ・彩)