【毒展プレビュー】特別展「毒」大阪市立自然史博物館で3月18日から

特別展「毒」
大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
大阪市東住吉区長居公園1-23
会期:2023年3月18日(土)〜5月28日(日)
開館時間:9時30分〜17時(入場は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし、3月27日、4月3日、5月1日は除く)
入館料:大人1,800円 高大生1,500円 小中生700円
詳しくは、(公式サイト)

2022年に東京の国立科学博物館で注目を集めた特別展「毒」が2023年3月18日から大阪市立自然史博物館ネイチャーホールへ巡回します。

総展示“毒”数約250点、全5章にわたって多角的に「毒」について学べる同展。動物、植物、菌類、鉱物、人工毒など、自然界のあらゆるところに存在する毒について、動物学、植物学、地学、人類学、理工学の各研究分野のスペシャリストが徹底的に掘り下げ、それぞれの視点で解説し、秘密を探っていく内容です。

さまざまな害虫 (写真提供:国立科学博物館)

また、大人気小説『薬屋のひとりごと』(著:日向夏 イラスト:しのとうこ 主婦の友インフォス刊)とのコラボや東大発の知識集団QuizKnock(クイズノック)から出題される様々な毒クイズに挑戦できるなど、多彩なクリエイターが同展を応援。自然界や人間社会に存在する様々な毒に関わる生物との関係を知り、現代社会を生きる上での一助になるような展示構成になっています。

【第1章】毒の世界へようこそ

第1章では、毒とは何かの概念から始まり、毒が人間を含む生物にどのように作用するのかについて知ことができます。

「毒」は、基本的にヒトを含む生物に害を与える物質として理解されていますが、なかには単なる毒だけにとどまらず、薬効を持つものもあります。私達は、天然に存在する「生物に何らかの作用を与える物質」のうち、人間にプラスに働くものを薬、マイナスに働くものを毒と呼んでいます。人体に有用なものでも取りすぎると毒になることがあり、さらにアレルギー反応にみられるように、感受性の高低によっても毒性は異なります。毒とは、多様で複雑な自然界を理解し、利用するために人間が作り出した概念とも言えるのです。

【第2章】色々な毒・毒・毒・・・・・毒の博物館

ベニテングタケ (写真提供:国立科学博物館)

生物(動物・植物・菌類)が持つ毒の多くは、主に狩り(捕食)など「攻めるため」と「身を守るため」にあります。第2章では、私たちのまわりにある様々な毒と毒をもった生物を迫力の拡大模型、剥製、標本などで紹介します。

<植物の毒>

オクトリカブト(写真提供:門田裕一)

日本3大有毒植物のオクトリカブト、ドクウツギ、ドクゼリ。いずれも強い毒性があり、循環器系や神経系に強く作用し、時には死に至ります。ドクゼリは身近な水辺にも生育しており、誤食しないよう注意が必要です。

<菌類の毒>

アスペルギルス・フラブス (写真提供:国立科学博物館)

推定10万種以上いるとされる地球上に存在するキノコのうち、大半は食毒不明なのだとか!誤って食べると痙攣、腹痛・下痢、幻覚症状、細胞破壊など、様々な中毒症状を引き起こします。また、カビはマイコトキシンとよばれる300種類以上の様々な毒を生産します。

<有毒爬虫類><有毒両生類>

コモドオオトカゲ ©Cezary Stanislawski/Shutterstock.com

超強いコモドオオトカゲは、唾液に血液凝固阻害(血液毒)や血圧低下を引き起こす成分を含み、水牛のような自分よりも大きな獲物も咬み傷からの失血によって徐々に弱らせて捕食します。

ブルーノイシアタマガエル ©2012 Mauro Teixeira Jr

爬虫類のように自身が分泌する毒液を相手に注入するタイプの毒をもつカエルは、南米産のブルーノイシアタマガエルとドクイシアタマガエルの2種しか知られていません。

<海洋の有毒動物>

アカクラゲ 写真提供:村井貴史

海洋には様々な有毒動物がみられ、少なくとも3万種前後の有毒動物が知られています。
例えば、クラゲやサンゴ、イソギンチャクなどの刺胞動物(しほうどうぶつ)は、すべての種が刺胞と呼ばれる毒の注入装置をもっています。

その他、鉱物など無生物に含まれる「自然界の毒」や、人間が作り出した新たな毒にも迫ります。

<毒の原料となる鉱物・硫砒鉄鉱>

砒素鉄鉱 (写真提供:国立科学博物館)

砒素(ひそ)は、代表的な鉱物由来の毒です。かつて万能薬とされた時代もありましたが、権力者の暗殺にも用いられてきました。

<人間が作った毒>
新たなる脅威の毒として注目なのは、自然界では分解されない数mm程度のプラスチックの小さな粒(マイクロプラスチック)です。

クジラの体内から見つかったマイクロプラスチック (写真提供:国立科学博物館)

【第3章】毒と進化

生物どうしの関係を大きく変えるきっかけにもなった毒の存在。第3章では、「毒」が進化の原動力になった多数の例を紹介します。例えば、ユーカリには、タンニンやテルペン、青酸配糖体、フェノール化合物などの毒性をもつ化学物質が多く含まれていますが、ユーカリを食べるコアラは毒に対抗する特徴を発達させた生物です。

コアラとユーカリ ©Janelle Lugge/Shutterstock.com *コアラの画像はイメージです。生体展示はありません

<警告色> 毒のある生物への擬態
警告色には自身が有毒動物であることを周囲に伝え、その動物と外敵の双方にとって無用な争いを避ける効果があります。

腹面の警告色を見せ防御姿勢をとるアカハライモリ (写真提供:国立科学博物館)

<盗用>
自分で毒を作れない有毒生物のムカデミノウミウシは、他の生物の有毒器官(刺胞)を食べて、その毒を自身の防御のために盗用します。

【第4章】毒と人間

パラケルスス彫像 Paracelsus Monument in Salzburg, Kurgarten, Austria

太古から近現代にわたる毒と人間の関わりを考える第4章。スイスの医学者(同時に化学者・錬金術師) パラケルスス(1493〜1541)は、「あらゆる物質は毒である。毒になるかクスリになるかは、用量によるのだ」という言葉を残しています。
毒は、狩猟、戦、処刑、暗殺に使われましたが、一方で、毒を研究することにより薬を生み出してきました。毒と向き合い、その正体や本質に迫りながら、私たち人間の歴史において、毒とはどのような存在だったのかに迫ります。

左)蚊取り線香の原料となるシロバナムシヨケギク  右)蚊取り線香の第1号。棒状で持続時間が短かった (写真提供:大日本除虫菊)

シロバナムシヨケギクを原料とした蚊取り線香は、代表的な植物が昆虫などの食害から身を守るために合成している毒性物質を利用した忌避(きひ)剤です。その成分はピレトリンで、昆虫や両生・爬虫(はちゅう)類に対する神経毒です。

【第5章】毒とはうまくつきあおう

マイクロプラスチックのように、私たち人間の活動が新たな毒を生み出しています。そして、その活動が招いた温暖化などの気候変動や物流は、新たな環境へ毒性物の分布を広げる一因となっています。毒から逃れることは決してできない私たちが、未来に向けて考える展覧会です。

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