【プレビュー】「谷川俊太郎 絵本★百貨展」 言葉の魔術師の絵本世界をクリエイター陣が新たな装いで PLAY! MUSEUMで4月12日開幕

「谷川俊太郎 絵本★百貨展」 |
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会場:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 棟 2F) |
会期:2023年4月12日(水)~7月9日(日) |
アクセス:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分 |
開館時間:10:00~18:00(最終入場は17:30まで) |
入場料(税込):一般 1,800 円 、大学生 1,200 円、高校生 1,000 円、中・小学生 600 円、未就学児無料 〇割引制度あり(立川市在住・在学者、障害者など) |
※会期中無休 ※当日券で入場できます。休日および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)がおすすめです。詳細はhttps://play2020.jp/へ。 |
戦後の長きにわたり、最も優れた日本語の使い手のひとりとして今も幅広い領域で活躍する詩人、谷川俊太郎さん(1931ー)。今展では谷川さんの絵本作品に焦点を当てて、多彩なクリエイター陣が絵本の原画、絵や言葉が動き出す映像、朗読や音、巨大な絵巻や書き下ろしのインスタレーションなど様々な形の作品として展示します。絵本の世界から飛び出した、子どもから大人まで誰もが楽しめる内容です。

約20冊をピックアップ、その世界を紹介
谷川さんは1960年代から現在に至るまで、数多くの画家やイラストレーター、写真家らと200冊にも及ぶ絵本を作っています。ことばあそびやナンセンスのたくらみもあれば、生きることそのものへの問いかけ、死や戦争などテーマは幅広くかつ深いです。これまでに共作したクリエイターも和田誠、堀内誠一、長新太、元永定正、タイガー立石、大竹伸朗、皆川明、松本大洋、tupera tupera、Noritake、junaidaなどジャンルを問わず、同時代の優れた才能が並びます。展覧会ではこのうち約 20冊の絵本を取り上げます。

「世界が一挙に広がる絵本の世界。最も自分に向いている」
今回の展覧会にあたり、谷川さんは以下のコメントを寄せています。
「詩だけ書いてるんじゃつまらない、という気持ちがぼくには初めからありました。もっと他のジャンルも試みてみたいと思っていて、ラジオドラマの台本や記録映画の脚本、歌の作詞など依頼があれば、詩だけでは食えないという現実的事情もあって、出来そうなジャンルには進んで手を出してきました。その中で最も自分に向いてると思ったのが絵本でした。
言葉だけの詩と違って絵や写真が伴うと世界が一挙に広がるし、具体的になる、そこに魅力を感じて絵は描けないけれど、まず何をどう扱うかという絵本のコンセプトを考えて、限られたページ数の中で各場面をどういうイメージで組み合わせるか、また言葉と絵や写真が一緒になることでどんな新しい世界が生まれるかなど、詩を発想するのとは次元の違う興奮がありました。
またぼくの場合絵本は独りでは創れない、常に他のアーティストとの共作になりますから、そこも思いがけない自分を発見するきっかけになりました。」

古今の名作がずらり
今展で注目する作品は以下の通りです。多くの方が「手にしたことある!」というラインナップ。初めて見る、という作品でも、展示を通じてその豊かな世界に触れ、魅了されることでしょう。
『絵本』写真・谷川俊太郎 的場書房 1956 (2010復刊 澪標)
『まるのおうさま』絵・粟津潔 福音館書店 1971
『こっぷ』写真・今村昌昭 福音館書店 1972
『ぴよぴよ』絵・堀内誠一 ひかりのくに 1972 (2009 復刊 くもん出版)
『ことばあそびうた』絵・瀬川康男 福音館書店 1973
『とき』絵・太田大八 福音館書店 1973
『もこ もこもこ』絵・元永定正 文研出版 1977
『えをかく』絵・長新太 新進 1973 (1979 復刊 講談社)
『せんそうごっこ』絵・三輪滋 ばるん舎 1982 (2015 復刊 いそっぷ社)
『なおみ』写真・沢渡朔 福音館書店 1982
『うつくしい!』写真・塚原琢哉 日本ブリタニカ 1983
『ままです すきです すてきです』絵・タイガー立石 福音館書店 1986
『おならうた』絵・飯野和好 絵本館 2006
『かないくん』絵・松本大洋 ほぼ日 2014
『これはすいへいせん』絵・tupera tupera 金の星社 2016
『へいわとせんそう』絵・Noritake ブロンズ新社 2019
『オサム』絵・あべ弘士 童話屋 2021
『ぼく』絵・合田里美 岩崎書店 2022
『ここはおうち』絵・junaida ブルーシープ 2023
和田誠との絵本あれこれ

多彩なクリエイターとの化学反応
展示にはアートディレクター、映像作家、建築家ら多才なクリエイターが参加し、原画、朗読、アニメーション、インスタレーションなどさまざまな表現で展示します。そのほか会場では、車やトンネルなど「谷川さんがすきなもの」に唐突に遭遇する新作『すきのあいうえお』も発表されます。
参加クリエイターは以下の通り。谷川ワールドと、どんな化学反応が起きるか楽しみです。
◇キュレーション・解説:林綾野(キュレーター)
◇アートディレクション:有山達也(アートディレクター)
◇空間構成:手塚貴晴(建築家)
◇柿木原政広(アートディレクター)、坂井治(映像作家)、minna(アートディレクター/デザイナー)、新井風愉(映像作家)、神田京子(講談師)、立花文穂(アーティスト)、張替那麻(建築家)、岡本香音(映像作家)、田附勝(写真家)

「言葉」にこだわったファン垂涎のグッズ、トイレットペーパーも
PLAY! SHOPのオリジナルグッズも楽しみです。展覧会のタイトルをもじり、ショップは今回「絵本★百貨店」に様変わりします。「言葉をもちかえる」をテーマに、「言葉をつかう」ステーショナリー、「言葉を着る」アパレル、「言葉をたべる」食品、「言葉を飾る」インテリアのほか、ワタナベケンイチさんが描き下ろしたイラストをベースにした特製ショッピングバッグも用意。

また展覧会にあわせて図録『谷川俊太郎 絵本★百貨典』(ブルーシープ刊)を出版します。500ページを超す1冊には、『絵本』から最新作『ここはおうち』まで約180冊の絵本を選び、書影や内容、そして谷川さんの絵本作りを紐解く膨大なインタビューや本展キュレーターによるエッセイを収録します。
そしてPLAY! MUSEUM恒例の来場者へのおみやげは、谷川さんの言葉入りトイレットペーパーです。トイレットペーパーは、これまで実現が叶わなかった谷川さん念願のグッズです。

谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)

詩人。1931 年東京生まれ。1952 年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962 年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詩賞、1975 年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982 年『日々の地図』で第三十四回読売文学賞、1993 年『世間知ラズ』で第一回萩原朔太郎賞など受賞・著書多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表している。
(美術展ナビ編集班 岡部匡志)