【プレビュー】「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」サントリー美術館で4月22日から

吹きガラスならではの表現を生み出した作り手の〈技〉に注目する展覧会、「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」がサントリー美術館で、4月22日から6月25日まで開催されます。
吹きガラスとは、ドロドロに熔けた熱いガラスに息を吹き込み、風船のように膨らませて器を作る技法のこと。直接手で触れることなく、ガラスの温度や状態を見定めながらスピーディに器を形づくるその技法は、ガラス容器の生産・流通に影響を与えただけでなく、ガラスならではの〈かたち〉を開花させることとなりました。
古今東西の特色ある吹きガラス作品、現代のガラス作家の作品、さらには本展にあわせて実施された技法研究の成果をもとに、かつての名もなき吹きガラス職人たちの技、そして職人たちの創意工夫に迫ります。
吹きガラス 妙なるかたち、技の妙 |
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会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4東京ミッドタウン ガレリア3階) |
会期:2023年4月22日(土)~6月25日(日) |
休館日:火曜日(5月2日は20時まで、6月20日は18時まで開館) |
開館時間:10時~18時 ※金・土および5月2日(火)~4日(木・祝)は20時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで |
入館料:当日一般1,500円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 |
詳しくは美術館公式サイト(https://www.suntory.co.jp/sma/)へ。 |
第Ⅰ章:自然な曲線美 ――古代ローマの吹きガラス
本章では、ローマ時代に作られたさまざまな吹きガラス作品が紹介されます。ローマ時代初期の作品は、石や金属の器を思わせる色づかいやシャープな形が特徴でしたが、次第に、重力や遠心力を活かした自然な曲線美や、それを彩る大らかでのびのびとした装飾がみられるようになります。

吹きガラスは紀元前1世紀中頃、ローマ帝国下の東地中海沿岸域に始まると考えられています。この時代のガラス製品は、よく見ると制作にかかわる痕跡を見出すことができます。
また、「二連瓶」や「四連瓶」と呼ばれる独特な形態をもつ作品群にも注目し、最新の研究成果をもとに、その技の秘密に迫ります。

第Ⅱ章:ホットワークの魔法 ――ヨーロッパの吹きガラス
15~17世紀頃のイタリア・ヴェネチアの吹きガラスは、ホットワーク(熔解炉で熔かした熱いガラスを成形・加工すること)による表現がひとつの頂点に達しました。美しく澄んだ素材、洗練された優美な形、そしてホットワークによる複雑かつ繊細で立体的な装飾を持つ逸品として、ヨーロッパのガラス市場を独占しました。

特に16世紀に発展したレース・ガラスは、ホットワークを極めたヴェネチアの職人の発想力と創造力の賜物です。
本章では、16~19世紀にかけてヴェネチアおよび周辺地域で作られた吹きガラスの名品を展示。また、ヴェネチアの技を独自の表現に昇華し、現代にもその技を引き継ぐ4名の現代ガラス作家の作品もあわせて紹介します。

第Ⅲ章:制約がもたらす情趣 ――東アジアの吹きガラス
本章では、おおよそ12~19世紀までの東アジアで作られた吹きガラスを紹介。東アジアの吹きガラスは、小さく、薄手で装飾も少なく、素朴なつくりが特徴です。

近代以前の東アジアにおける吹きガラス制作は、西洋の道具や、本格的な設備がなかったこともあり、表現に制約がありました。しかし、これらの制約のもとで作られた吹きガラスは、素朴で愛らしく、儚げな美しさといった、西洋の吹きガラスとは異なる魅力を持っています。
また、同美術館が所蔵する《藍色ちろり》の技法研究の成果をもとに、江戸時代の吹きガラス職人の技に迫ります。


第Ⅳ章:今に連なる手仕事 ――近代日本の吹きガラス
明治時代に入ると、ヨーロッパから招いた技術者の指導のもと、西洋式の道具や製法、大規模な熔解炉を用いた複数名の流れ作業による製作スタイルが導入され、日本においても近代的なガラス産業の道が拓かれていきました。
本章で紹介されるのは、明治時代以降の吹きガラス。特に、明治時代末頃から昭和時代初期にかけて作られた氷コップ(かき氷入れ)にみられる多様な装飾技法は、西洋から伝えられた技術が国内において習熟したことを物語っています。

また、現在も手吹きによる生産を続けている企業3社から、産業としての吹きガラスの未来を感じさせる各社の製品が紹介されます。

第Ⅴ章:広がる可能性 ――現代アートとしての吹きガラス
産業としての吹きガラスの流れと並行して、20世紀以降には芸術表現の手法としても吹きガラスが用いられるようになりました。
本章では、伝統的な技法や方法に捉われることのない、新進気鋭の若手作家4名の作品が紹介されます。新しい造形表現への挑戦は、吹きガラスのさらなる可能性を感じることが出来るでしょう。

(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)