「マリー・ローランサンとモード」音声ガイドの浦井健治さんに聞く 「刺激あふれる芸術空間 ぜひ何度も足を運んで」

浦井 健治さん 撮影:松本理加

「マリー・ローランサンとモード」がBunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)で4月9日(日)まで開催されています。(京都市京セラ美術館に4月16日(日)から6月11日(日)まで巡回。)本展の音声ガイドを務めるのは、俳優の浦井健治さん。国内外問わず、美術館を訪れることが好きな浦井さんに、本展の見どころやアート鑑賞の魅力を聞きました。

(聞き手・読売新聞美術展ナビ編集班 美間実沙)

二人の生き様に魅せられて

――内覧会で浦井さんの音声ガイドを聞きました。優しく、軽やかな語り口が印象的でした。

これまでナレーションのお仕事をさせていただいたことはありましたが、展覧会の音声ガイドを担当するのは初めてです。

美術館は、時を超えて作者や作品と向きあい、自分とも向きあえる場所だと思います。ですから収録では、「鑑賞の邪魔にならないこと」を念頭に置きました。優しく包むイメージで、一緒に街を歩いているような雰囲気を出せたらいいなと思いながら録りました。

――マリー・ローランサンとココ・シャネルについて、どんなイメージを抱きましたか?

収録するなかで、二人の生き様に自分も魅せられていきました。常識や風潮に抗い、自分の意思をしっかりと持って、やりたいことを勝ち取っていくさまが、まるで騎士のように思えます。

浦井 健治さん 撮影:松本理加

――展覧会を見た感想は?

ローランサンの作品は、淡い色合いが素敵でした。友人をモデルにした作品には、ローランサンが大切にしていた絆や、人との結びつきが優しく描かれていて、印象的でした。

僕は役者としてさまざまな衣装を着させていただくので、衣装の展示も興味深かったです。「役者の動きに合わせたデザインを」「この衣装はここの素材に凝っていて」などと、今まで衣装担当の方から聞いてきた言葉が、展示作品にリンクしていました。

――もしタイムスリップして、ローランサンやシャネルと話す機会があったなら、何を聞いてみたいですか?

「何に一番重きを置いて創作活動したんですか?」、そして、「何を一番提示するのに苦労しましたか?」と聞いてみたいですね。芸術やファッションは、演劇に近い部分もあると思うんです。そういう意味で、二人がどんなことを思って、どんなことに気を遣っていたのか、興味があります。

アート鑑賞は「学びの連続」

浦井 健治さん 撮影:松本理加

――美術館めぐりがお好きだそうですね。

これまで、国内だけではなく、ロンドンやニューヨークなどの美術館にも行きました。一部屋を埋め尽くすほど大きなモネの作品に圧倒されたり、逆に、有名な作品を見て「あれ? こんなに小さい作品だったんだ」と驚いたり。でも、大きさを問わず、作品の前に立つと感覚が研ぎ澄まされて、インスピレーションが湧いてきます。本物ってすごいんだなと改めて思いましたね。

――アート鑑賞が仕事に活きることはありますか?

僕は歴史にまつわる人物を演じさせていただくことが多く、そんなときは現地に足を運べたらいいのですが、難しいときはその国の美術品や装飾品を見ます。知識を得るだけではなく、「見る」ことも大切だと思っています。見ることで、たとえば教会のなかの雰囲気や、人間同士の距離感など、当時のことを疑似体験できるんですよね。演じるというのは、その場で生きて反応していくことだと思うので、そういった経験は助けになります。

渋谷の街中の贅沢な空間 何度も足を運んで

浦井 健治さん 撮影:松本理加

――最後に、読者にメッセージをお願いいたします。
ローランサンとシャネルの心意気や志、強さに触れられる展覧会です。老若男女問わず、どんな方が見ても楽しめるような、刺激あふれる芸術空間になっていますし、作品から学べることも多いはず。何度見ても発見があると思います。渋谷の街中にある、この贅沢な空間をぜひとも体感していただきたいです。カフェに来るような感覚で、気軽に足を運んで、心に潤いを与えてみてはいかがでしょう。

浦井 健治さん
2000年『仮面ライダークウガ』敵の首領役で俳優デビュー。その後 、2004年にはミュージカル「エリザベート」ルドルフ皇太子役へ抜擢され、以降、ミュージカル、ストレートプレイ、映像と数多くの作品に出演。
ミュージカル「デスノート The Musical」や「王家の紋章」と話題作で活躍し、第22回読売演劇大賞最優秀男優賞など数々の演劇賞を受賞。4月、5月でミュージカル「アルジャーノンに花束を」への出演を控え、更には3rdア ルバム「VARIOUS」のリリースと56月にはコンサートツアーも予定している。

マリー・ローランサンとモード
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2023年2月14日(火)~4月9日(日)
休館日:3月7日(火)
入館料:当日一般 1,900円、大学・高校生 1,000円、中学・小学生 700円
問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)
詳しくは展覧会HPへ。