【BOOKS】『もっと知りたいローランサン』初心者向け入門書の決定版! 「マリー・ローランサンとモード」の鑑賞のお供にも

『マリー・ローランサンとモード』がBunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)で4月9日(日)まで開催されています。(京都市京セラ美術館に4月16日(日)から6月11日(日)まで巡回。)そこで、鑑賞のお供としてぴったりのガイドブックを紹介します。
吉澤公寿『もっと知りたいローランサン』(東京美術)には、本展出品作が多数掲載されています。さらに、他の『もっと知りたい』シリーズ同様、画家の人生を時系列にまとめながら、各時代に描かれた代表的な作品をオールカラーで掲載。同時代で影響力のあった文化人の詩人ギョーム・アポリネールとの大恋愛や、第一次世界大戦で亡命生活を強いられたり、第二次世界大戦で財産没収を余儀なくされたりと、波乱に満ちた人生のハイライトが紹介されています。

画業の変遷もわかりやすく整理されています。初期から晩年までの代表作を見比べながら、古典絵画に忠実だった学生時代から、ピカソやブラックに感化されてキュビスムの影響を受けた1910年代、自らのスタイルを確立した1920年代、色彩がより華やかになった1930年代と、時間をかけて徐々に画風を変化させてきた経緯を学ぶことができました。

驚いたのは、本書で掲載されている図像の多くが、日本のマリー・ローランサン美術館が所蔵する作品であることです。収集したのは、同館の館長を務め、本書を著した吉澤公寿さんの父・高野将弘さん。数十年をかけて世界中から作品や資料などをコツコツ収集し、現時点で世界最大のマリー・ローランサンコレクションを築き上げたのです。

ということは、本書に掲載されたローランサンの名作は、今後も日本国内のさまざまな美術展で鑑賞できるかもしれません。しかも、日本語で書かれた書籍では、現時点で唯一となるローランサンの初心者向け入門書です。今後も末永く鑑賞ガイドとして役に立つことでしょう。
ローランサンのファンはもちろん、近代西洋美術が好きな方にも幅広くオススメです。定価は2,200円。購入は書店や東京美術のHPから各オンライン書店で。試し読みも東京美術のHPからできます。
(ライター・齋藤久嗣)