【プレビュー】特別展「明治美術狂想曲」静嘉堂@丸の内で4月8日から 江戸時代の余韻と新たな時代の躍動を感じる

特別展「明治美術狂想曲」 |
---|
会場:静嘉堂@丸の内(東京都千代田区丸の内2-1-1明治生命館1階) |
会期:2023年4月8日(土)~6月4日(日) 前期:4月8日(土)~5月7日(日)後期:5月10日(水)~6月4日(日) |
開館時間:10:00~17:00(金曜は18:00閉館。入館は閉館時間の30分前まで) |
休館日:月曜日、5月9日 |
観覧料:一般 1,500円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 *日時指定予約優先(当日券もあり) |
アクセス:地下鉄千代田線二重橋前〈丸の内〉駅 3番出口直結、JR東京駅丸の内南口より徒歩5分 |
詳しくはホームページで https://www.seikado.or.jp/ |
明治時代は「美術」が産声をあげた時代でもありました。江戸時代の余韻と新たな時代の幕開けを感じさせる絵画など、現代でも色あせない明治美術の魅力を、静嘉堂文庫美術館所蔵のコレクションを通じて紹介します。
西洋文化を新たなモチーフに
幕末の日本は、欧米からの様々な文化が流入し、社会を揺るがす事件も多く起きました。世間の人たちの関心を集めたそれらは画家たちの創作意欲も刺激し、伝統的な木版技法を用いながら新しいモチーフを描き加えた「錦絵」が多く作られました。

初公開となる落合芳幾の大判錦絵「末広五十三次 程ヶ谷」は、第2次長州征伐に伴う14代将軍徳川家茂の上洛を主題とした東海道シリーズのひとつです。現在の横浜市内の「程ヶ谷」には西洋人も描かれています。

歌川派・狩野派に学んだ「画狂」河鍋暁斎(1831~89年)がパトロンの娘の追善供養に描いたのが「地獄極楽めぐり図」です。そのうち「極楽行きの汽車」では、当時珍しかった汽車がさっそく描かれています。
「超絶技巧」の明治工芸

欧米でのジャポニスムブームもあり、欧米人に好まれるデザインの工芸品が作られ、輸出されました。本展では、近年、「超絶技巧」と称される精緻を極めた技術と共に、古美術にも学ぶ明治工芸が紹介されます。

こちらの絵皿は、伝統的な日本画の表現を陶器に応用すべく、ゴットフリード・ワグネル(1831~92年)が創始した吾妻焼(後に旭焼と改称)です。

帝室技工員にも選ばれた鈴木長吉(1848~1919年)のリアルな鷹からは、明治の「超絶技巧」を目の当たりにできます。

こちらもまさに超絶技巧。花鳥画を得意とした画家・渡辺省亭(1852~1918年)の原画をもとに、濤川惣助(1847~1910年)が「無線七宝」で作った瓶です。この2人は迎賓館赤坂離宮の室内を飾る額も製作しました。
岩﨑彌之助と明治美術の接点


静嘉堂を創設した三菱第2代社長の岩﨑彌之助(1851~1908年)と明治美術の接点には、明治28年(1895年)に京都で開催された第4回内国勧業博覧会や岩﨑家の邸宅を飾る室内装飾がありました。
とくに第4回内国勧業博覧会では、当時を代表する日本画家の橋本雅邦(1835~1908年)らに屏風絵を依頼。マスコミを賑わす博覧会の目玉企画となりました。

また、岩﨑家の高輪邸の撞球(ビリヤード)室に飾られた画家・黒田清輝(1866~1924年)の 「裸体婦人像」は、「裸体画論争」を巻き起こしました。男性の社交の場であった撞球室にふさわしい作品と考えられたとみられています。
国宝「曜変天目(稲葉天目)」も引き続き展示![]()

国宝「曜変天目(稲葉天目)」も、明治時代の「美」と切り離せません。明治13年(1880年)に行われ、古美術再評価のきっかけとなった第1回観古美術会は「曜変天目」が展示された初めての展覧会で、明治時代の人々も曜変天目を観賞していたのです。
(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班 岡本公樹)