「山口蓬春・新興大和絵会の時代」展 多様な画風の礎を形成 山口蓬春記念館(葉山)で4月2日まで

山口蓬春・新興大和絵会の時代 |
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会場:山口蓬春記念館(神奈川県三浦郡葉山町一色2320) |
会期:2023年2月4日(土)~4月2日(日) 【前期】2月4日(土)~3月5日(日) 【後期】3月7日(火)~4月2日(日) ※会期中に一部展示替えを予定 |
観覧料:一般600円(高校生以下は無料) |
開館時間:午前9:30~午後3:30(入館は午後3時まで) |
休館日:毎週月曜日 |
主催:山口蓬春記念館・公益財団法人 JR東海生涯学習財団 |
アクセス:JR横須賀線・湘南逗子ライン「逗子駅」より京浜急行バス3番乗場、または京浜急行線「逗子・葉山駅」南口2番乗場より「海岸回り葉山行(逗12)」か「海岸回り葉山福祉文化会館行(逗11)」にて約20分「三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前」下車徒歩2分 |
詳しくは公式サイト https://www.hoshun.jp/ |
大正後期から昭和時代にかけて活躍した日本画家、山口蓬春(1893-1971)が、そのキャリアの前半で作風を形成するにあたり、重要な役割を担った「新興大和絵会」での活動ぶりを紹介します。
蓬春は10代半ばから油絵を学び、大正4年(1915)に東京美術学校西洋画科に入学。指導教官の助言などにより大正7年(1918)に西洋画科を退学し、同校日本画科を受験し再入学します。
蓬春は、当時やまと絵の第一人者であった松岡映丘(1881-1938)の指導のもと、伝統的な日本画技法を学び、その才能を開花させます。大正10年(1921)には、やまと絵の近代化に努めていた映丘を顧問として門下生たちが新興大和絵会を結成。蓬春も大正12年(1923)に日本画科を首席で卒業すると同会に加わり研鑽を積みます。
この時期、新興大和絵会の特徴とされた岩絵具の群青や緑青などによる色鮮やかな濃彩で描かれた作品が流行するなど、近代日本画史上においてこの新興大和絵の活動は重要な出来事の一つとなっています。
新興大和絵会は昭和6年(1931)に解散しますが、蓬春は新たな美術団体・六潮会(りくちょうかい)の結成に参加するなど、さらに新しい日本画表現を模索していきます。本展では、蓬春を画壇の第一線に押し上げ、モダニスト・山口蓬春を生み出す契機となった新興大和絵会時代の作品を中心に紹介します。
山口蓬春記念館主屋と画室が国登録有形文化財に

旧山口蓬春邸である山口蓬春記念館(神奈川県葉山町)の主屋と画室が、国有形文化財に登録されることが決まりました。建物は葉山一色海岸北の丘陵に位置し、建築家・吉田五十八の見立てで蓬春が1948(昭和23年)に購入しました。寄棟造(よせむねづくり)桟瓦葺(さんかわらぶき)の平屋建てで、南東隅は2階建て。南と東に張り出す茶の間・風呂は吉田の設計により増築した近代和風建築です。
画室は多くの著名な画家の画室設計を手がけた吉田の人生最後の近代数寄屋建築。庭に面した大きな窓からは四季折々の草花や木々を愛でることができます。山口は多くの作品をここで制作し、1965(昭和40)年に文化勲章をうけたほか、皇居新宮殿杉戸絵の「楓」に代表される数々の名作を残しました。
1990(平成2)年、山口家より土地、建物および所蔵作品の寄贈を受けたJR東海生涯学習財団(現・公益財団法人JR東海生涯学習財団)では、その偉業を長く後世に伝えていくことを目的とし、1991(平成3)年10月15日に山口蓬春記念館として開館しました。
(美術展ナビ編集班 岡部匡志)