【プレビュー】特別展「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造 」兵庫県立美術館で3月4日から 上野の森美術館で5月31日から

19 世紀の恐竜“発見”以降、人々が化石などの痕跡から想像をふくらませ、太古の世界の住人たちの姿を創造し描いた「パレオアート」の世界に着目する異色の展覧会、特別展 「恐竜図鑑ー失われた世界の想像/創造」 が兵庫県立美術館で3月4日から 5月14日まで、上野の森美術館で5月31日から7月22日まで、それぞれ開催されます。
パレオアート黎明期の奇妙な復元図から、恐竜画の2大巨匠らによる記念碑的な作品 、さらには漫画や玩具、現代恐竜画アーティストの作品など、世界各国から集められた約150の作品を通して、人々が抱いてきた古代生物に対するイメージの歴史をたどります。
特別展「恐竜図鑑 ー 失われた世界の想像/創造 」 |
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兵庫展:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1) |
会期:2023年3月4日(土)~5月14日(日) |
開館時間:午前10時~午後6時 ※入場は閉館の30分前まで |
休館日:月曜日 |
観覧料:(当日券)一般2,000円、大学生1,500円、高校生以下無料 ほか |
東京展:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2) |
会期:5月31日(水)~7月22日(土) |
観覧料:未定 |
詳しくは 展覧会公式サイト:https://kyoryu-zukan.jp/ 展覧会公式Twitter:@kyoryu_zukan |
パレオアートの2大巨匠、夢の競演
本展では、恐竜イメージの普及に大きな影響を与えた「パレオアート」の2大巨匠の作品を紹介します。かつて恐竜図鑑で見たことがあると思い出す人も多い、恐竜画のオリジナルを間近に見ることが出来ます。
2大巨匠の一人目は、19 世紀末から 20 世紀前半にアメリカで活躍したチャールズ・R・ナイト。もともと野生動物の画家だったナイトは、生物学的な知見に基づき、 恐竜をいきいきとした姿で描き、現代に蘇らせました。


ティラノサウルスとトリケラトプスの対決を描いた《白亜紀―モンタナ》や、恐竜を躍動感あふれる姿でとらえた《 ドリプトサウルス( 飛び跳ねるラエラプス )》は、恐竜画における記念碑的イメージともいえる作品です。彼の作品は 、アメリカ自然史博物館やフィールド博物館で使用されたほか、映画「 ロスト・ワールド 」(1925 年)や「キング ・ コング」(1933 年)などにも影響を与えました。もう一人は、20世紀中盤から後半にかけて活動したズデニェク・ブリアン。彼は当時の化石発掘の中心地であったアメリカから遠く離れたチェコで活動しました。ヨーロッパ美術のリアリズムの伝統を踏まえて描かれた彼の作品は、強い説得力を持つものとして国際的に高く評価されました。


初期の奇妙な復元画の豊かなイマジネーションを楽しむ

地質学者ヘンリー・デ・ラ・ビーチの原画による《ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》は、英国の女性化石採集者メアリー・アニングの功績をたたえるために制作されたもので、古生物の生態を復元した史上初の絵画のひとつと言われています。パレオアート黎明期の画家たちは、限られた情報のもと、想像をはばたかせて太古の世界を描き出しました。本作では、魚食のイクチオサウルスが巨大な首長竜を食べる様子が描かれているなど、現代の恐竜の知識から考えると奇妙に映りますが、その奇妙さもまたパレオアートの魅力と言えるでしょう。

イグアノドンの歯の化石を発掘し、“恐竜を発見した男” として知られるギデオン・マンテルの依頼により、人気画家ジョン・マーティンが描いた 《イグアノドンの国》は、聖書や神話を題材とした作品で人気を博した画家らしく、イグアノドンを取り巻く風景もロマンティックに描いています。
現代の恐竜画の旗手たちが集結
1960年代から70年代にかけて、世の中の恐竜像は「鈍重な生き物」から「活発に動く恒温動物」へと変化していきました。「恐竜ルネッサンス」ともよばれるその変革は恐竜画の世界にも影響を与え、新しい表現のアーティストが次々と登場することとなります。

インディアナポリス子供博物館や福井県立恐竜博物館のコレクションから、ファンタジーアートの領域でも人気のあるアメリカのイラストレーター、 ウィリアム・スタウトや、パステルを駆使して太古の世界の光と影を精緻に表現するダグラス・ヘンダーソンなど、現代の恐竜画の旗手たちのバラエティ豊かな作品たちが展示されます。
また、現代日本を代表するパレオアーティスト、小田隆の作品も特集。 C G を用いずに圧倒的な迫真性を生み出す肉筆画は必見です。

恐竜の展示といえば化石の展示が多く、今まで展覧会では注目されることが少なかった「パレオアート」の世界。絵の中に広がる失われた世界に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)