【プレビュー】「芸術家たちの南仏」3月11日(土)から、千葉・DIC川村記念美術館で

アンリ・マティス 《ミモザ》1949年 切り紙絵(コラージュ)151.3×93cm 公益財団法人池田20世紀美術館

20世紀に芸術が展開された地域としての南フランスに注目する「芸術家たちの南仏」が3月11日(土)から、千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館で開かれます。

南仏は、かつて芸術家が景勝地や巨匠たちの作品を求めてパリからイタリアへ旅行したり、留学したりする際などの中継地とみなされていました。しかし19世紀末以降、アンリ・マティスが愛したヴァンスやニース、マルセイユをはじめ、多くの芸術家たちがその地を制作の場として選びました。

地中海や山々に囲まれた豊かな自然、そしてまばゆい陽光は芸術家たちを惹きつけました。また、陶芸などその地に根差す伝統的な技法が創作意欲を刺激することもありました。終焉の地として根を下ろした者たちが、壁画や礼拝堂など集大成ともいえる大仕事を手がけたことも知られています。一方で、戦中には敵性外国人として収容された者たちや、他国への亡命者が作品を生み出した場であったことも忘れてはなりません。

南仏という地で広がりをみせた芸術家同士の交流や、表現あるいは技法について、国内の美術館などが所蔵する約30作家の作品と関連資料およそ150点を通して改めてたどります。

1.パリから1,000km、南仏への列車旅に思いを馳せるプロローグ

フランスでは19世紀に鉄道網が発達し、ヨーロッパ北部の人々が冬の寒さをさけるため地中海沿岸地域へ旅行するようになりました。会場入り口では、初期映画の生みの親であるリュミエール兄弟が南仏で撮影した『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)を上映します。

キスリング《風景、パリーニース間の汽車》1926年 油彩、カンヴァス 80.7×100.2 cm ポーラ美術館
アンリ・マティス《待つ》1921–22年 油彩、カンヴァス 61×50 cm 愛知県美術館

また、第一室に展示される、キスリングの《風景、パリ―ニース間の汽車》(1926年)には豪華列車「ブルー・トレイン(トラン・ブル)」が描かれています。映像と油彩の列車に誘われ、南仏への旅が始まります。

2.南仏に行かざるを得なかった芸術家たち

第二次世界大戦中の南仏には、「敵性外国人」として収容されたドイツ人の芸術家たちや、フランスのドイツ降伏を受けて他国への亡命をめざし、ビザ発給を待っていたシュルレアリストたちが、否応なく集いました。本展では、そうした状況で生まれた作品を展示することで、南仏としばしば結びつけられる光あふれるイメージとは異なる作品も展示されます。

ソニア・ドローネー《色彩のリズム》1953年 油彩、カンヴァス 100×220 cm ふくやま美術館 DR

3.南仏で育まれたモダン・アートの多様性を俯瞰できる、国内初の展覧会

20世紀フランスにおいて、南仏は制作の場、芸術家間の交流の場、あるいはその地域の職人と芸術家との協働の場として重要性を高めていきました。そこで生まれた作品は写実的な風景画にとどまらず、セザンヌに影響を受けた若い芸術家たちが展開したフォーヴィスムやキュビスムなど実験的な油彩画をはじめ、版画、彫刻、陶芸、映画、そして切り紙やタピスリーと実に多種多様でした。
また、晩年に南仏を拠点とした芸術家たちは礼拝堂装飾や壁画など集大成ともいえるモニュメンタルな仕事も手がけました。本展は、このように多様性に富んだ作品群を俯瞰する貴重な機会となります。

ポール・セザンヌ《マルセイユ湾、レスタック近郊のサンタンリ村を望む》1877–79年 油彩、カンヴァス 64.5×80.2 cm 吉野石膏コレクション(山形美術館に寄託)
フェルナン・レジェ《コンポジション》 1952年 陶板レリーフ 44.4×34 cm 公益財団法人大川美術館
「芸術家たちの南仏」
会場:DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
会期:2023年3月11日(土)~6月18日(日)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜
入館料:一般1,800円、学生・65歳以上1,600円、高校生以下無料
詳しくは、同館HP