【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第23回 ヴィジェ・ルブラン

ヴィジェ・ルブラン
ヴェルサイユ宮殿に行ってから、マリー・アントワネットの肖像などを手がけたヴィジェ・ルブランという画家について改めて関心を持っています。
ルブランの作品は、高校生のころに三菱一号館美術館で開催されていた展覧会を通して見たことがあるのですが、今の私の見方を綴ってみたいなと思い、今回はヴェジェ・ルブランの《ルイ16世の妹 エリザベート王女》という作品を選んでみました。
エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 《ルイ16世の妹 エリザベート王女》 1782年 油彩、カンヴァス 76.5×61.0cm 東京富士美術館蔵
タイトルの通り、ルイ16世の妹のエリザベート王女を描いた肖像画です。
本作に描き出された王女のナチュラルな雰囲気が素敵だと感じました。権力者の肖像と聞くと、高貴で威厳のある姿が描き出されている画面を想像します。それが実際の姿だったかいなかはさておき、肖像画にはときどき王侯貴族たちの「見せたい姿」が描かれることもあったのでしょう。
個人的には、肖像画を見ているときは「見せたい姿」が何かを考えてしまうことが多いかも。
そんな私からすると、本作では王侯貴族たちの「見せたい姿」があまり見えてこない肖像画だと感じました。エリザベートは、絵画製作のためにポーズをとっているというよりも、もっと肩の力が抜けた場面を想像させられます。
画家を前にナチュラルでいたエリザベートの姿か、ナチュラルに描き出した画家ルブランの姿であるかはわからないけれど、後世に残る可能性の高い絵画の製作時に気を張らないでいられる二人の空気感がきっと事実で、何よりも素敵なのだと思います。
それから、エリザベートが着用している麦わら帽子は、貴族たちの間で流行した田舎趣味だそうです。
少し個人的な話になってしまいますが、アイドル、女性として自分よりも立場が上とされる人に世界観や、らしさを投影されることの多かった私の立場からすると、流行やファッションを楽しめるのはいつも隣で肩を並べてくれる仲間たちだったことを思い出します。流行やファッションの楽しみは「らしさ」を決める側には持てないものなのだと思います。
そんなこともあって、画中のエリザベートが身に着ける麦わら帽子のかわいさ、すてきさでさえ、画家ルブランとの間で共有されていそうな空気を感じずにはいられなかったりするのです。
<ココで会える>
エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン《ルイ16世の妹 エリザベート王女》所蔵先の東京富士美術館は、現在設備改修工事のため全館休館中(~2023年7月上旬予定)。休館中は、過去の展覧会の様子が楽しめる「オンライン展覧会」や収蔵品のオンライン情報を発信中。同館は、様々なジャンルの作品約30,000点を収蔵しており、「世界を語る美術館」として国際的な展覧会などを多く開催しています。
美術館公式サイト
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
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