【開幕】「マリー・ローランサンとモード」Bunkamura ザ・ミュージアムで4月9日(日)まで 1920年代パリの軽やかな空気、ローランサンとシャネルが刻んだ足跡を体感

2月14日(火)から4月9日(日)まで「マリー・ローランサンとモード」がBunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)が開催されています。独特の色彩で瞬く間に人気画家となったローランサンと、革新的なファッションをとおして新たな女性像を提示したシャネル。ともに1883年に生まれたふたりは、1920年代のパリで独自のスタイルを貫き、時代を象徴する存在となりました。本展では、オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館などが所蔵する約90点を展示。ふたりの活躍を中心に、ポール・ポワレ、ジャン・コクトー、マン・レイなどその周囲を彩った人々との関係にも触れながら、1920年代パリ芸術界を俯瞰します。
対照的な「美」の概念

ローランサンならではの夢見るようなパステルカラーが、展示室を彩ります。見ているだけで、幸せな気持ちに。


一方で、シンプルで洗練されたシャネルのドレスにもハッとさせられます。二人が目指した「美」の違いが、明確に表れていました。
唯一の接点が…?

ふたりの接点が、写真右のシャネルの肖像画です。当時のパリの社交界では、ローランサンに肖像画を描いてもらうことが流行りの一つでした。そこでシャネルも、自身の成功の証に、ローランサンに肖像画を依頼したのです。ところが、シャネルは肖像画の出来上がりに満足せず、描きなおしを要求。ローランサンも譲歩せず、結局、シャネルが肖像画を受け取ることはありませんでした。ともに女性の美を追求しながら、その方向性は相容れなかったのでしょう。

肖像画の一件で、シャネルとの関係はギクシャクしてしまいましたが、ローランサンはファッションに興味を持ち続け、シャネルの服を愛用しました。作品からも、ファッションをこだわって描いたことが伝わってきます。さまざまなデザインの帽子をかぶった女性像が並ぶ様子に、ワクワクします。
美術や音楽 多ジャンルが越境
ふたつの大戦にはさまれた1920年代のパリ。人々は、つかの間の平和のなかで、戦争で失ったものを取り返すかのように自由を謳歌しました。
熱気あふれるパリには、スペインからピカソ、ロシアからシャガール、日本から藤田嗣治と、様々な人が国境を超えて集結。さらに、美術、ファッション、音楽などさまざまなジャンルが交わり、新たな表現が生まれました。シャネルもローランサンも、バレエ団の舞台美術や衣装などを手がけることで、表現の幅を広げたそう。舞踏や舞台美術をテーマにしたローランサンの油彩画なども見どころです。

世界恐慌(1929年)をきっかけにパリの熱気に陰りが見え始め、30年代になると経済不況、ファシズムの台頭など、不安定な社会に呼応するように女性のファッションが保守化。ローランサンの色調も、次第に強くはっきりとしたものへと変わっていきました。

限りある時のなかでさまざまな才能が開花するという、奇跡を生み出したのが1920年代のパリ。展示会場で、軽やかさで熱気あふれる当時の空気を味わいつつ、ローランサンとシャネルが刻んだ足跡をたどってみてはいかがでしょう。
(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)
マリー・ローランサンとモード |
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会場:Bunkamura ザ・ミュージアム |
会期:2023年2月14日(火)~4月9日(日) |
休館日:3月7日(火) |
入館料:当日一般 1,900円、大学・高校生 1,000円、中学・小学生 700円 |
問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)へ |
詳しくは展覧会HPへ。 |