【BOOKS】福村国春『西洋絵画の見方がわかる世界史入門』 西洋絵画の「なぜ」をわかりやすく解説

アートファンになって約10年。美術館に足を運ぶたび、いまだにしみじみと思うことがあります。それは、「なぜ西洋絵画は、時代によってこれほどにも違いがあるのだろうか」ということです。この西洋絵画史の「なぜ」に対して、「世界史」に手がかりを求め、わかりやすく解説してくれる入門書が福村国春『西洋絵画の見方がわかる世界史入門』です。

本書では、ルネサンスから20世紀後半までの西洋絵画の歴史を全9章に区切り、各章でそれぞれの時代を代表する作家や作品を解説していきます。あわせて、その時代の政治や経済、文化といった様々な切り口から、作品が成立した歴史的な背景を丁寧に探っていきます。要所で解説内容を図式化したまとめも掲載され、現役予備校講師である著者ならではの工夫が凝らされていました。

pp.108-109 ※許可を得て撮影

この本のわかりやすさを支えているのが、西洋絵画史の「なぜ」を徹底的に追究している点です。絵の描き方や様式を専門的に掘り下げるのではなく、「なぜ、その時代にこの絵が描かれたのか」という背景や理由を、ヨーロッパの歴史と紐づけて解説しています。「なぜ、中世では一見稚拙そうに見える絵が描かれたのか?」「なぜ、近代以降に絵が平面化していくのか?」「なぜ、フェルメールの絵は革新的だと言えるのか?」。このように、素朴かつ難解な疑問への解答を、歴史の流れに絡めて鮮やかに導き出してくれます。美術の専門的な知識よりも、美術史に通底するダイナミズムをつかむことに要点が置かれているのです。単に美術史だけを追っているだけでは、なかなか見えづらいポイントを押さえているので、中級者以上でも読んでいてハッとするポイントが見つかりそうです。

美術史と世界史の両方に精通した著者ならではの、わかりやすい言葉で磨き抜かれた考察がたっぶり詰まった良書。予備校の名物講師の紙上実況中継を読んでいるような気分も味わえます。

定価は1,980円。購入は書店やベレ出版の公式サイトから、各オンライン書店にて。

(ライター・齋藤久嗣)