アムステルダムに行かなくても見られるフェルメール? 新国立劇場のオペラ『ファルスタッフ』 2月10日から再演

ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》1665年 マウリッツハイス美術館蔵
この絵画の世界をオペラの舞台で再現したのが新国の『ファルスタッフ』

今年のアート界の世界的話題といえば、アムステルダム国立美術館で2月10日から始まるフェルメール展でしょう。「史上最大規模」というキャッチフレーズで、おなじみの《牛乳を注ぐ女》《真珠の耳飾りの少女》などが展示されます。

ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》1660年頃 アムステルダム国立美術館蔵

日本から足を運ばれる方も少なくないでしょうけれど、そう気楽に海外旅行には行けませんよね。そこで、あのフェルメールの世界観をそっくり舞台に移したオペラはいかがでしょう。

それが新国立劇場(東京・初台)で、奇しくもこちらも2月10日から再演されるヴェルディの『ファルスタッフ』です。シェイクスピアの「ヘンリー四世」、「ウインザーの陽気な女房たち」に基づく、太鼓腹の愉快な老騎士、ファルスタッフを描いたヴェルディ最後のオペラ作品です。1893年にミラノのスカラ座で初演され、大成功を収めました。以来、今日に至るまで各地のオペラハウスの主要な演目として定着しています。

新国立劇場「ファルスタッフ」2018年公演より 撮影:寺司正彦

2004年に新国立劇場で初演された今回のプロダクションを手掛けたのは、イギリスの名演出家ジョナサン・ミラーです。制作にあたり、ミラーはシェイクスピア(1564~1616)時代の家屋を詳細に描写したものはオランダ絵画しかない、と考え、フェルメールなど17世紀オランダ絵画の世界観による『ファルスタッフ』の舞台をつくりあげました。改めてフェルメール作品と舞台写真を比べてみてください。

ヨハネス・フェルメール《恋文》 1669~70年頃 アムステルダム国立美術館蔵
新国立劇場「ファルスタッフ」2018年公演より 撮影:寺司正彦

いかがでしょう。実に雰囲気がよく似ていますよね。まるでフェルメールの世界に入り込んだようです。次の絵画と舞台写真はいかがでしょう。床に注目してください。

ピーテル・デ・ホーホ《玄関で女性に手紙を渡す男性》 1670年 アムステルダム国立美術館蔵
新国立劇場「ファルスタッフ」2018年公演より 撮影:寺司正彦
新国立劇場「ファルスタッフ」2018年公演より 撮影:寺司正彦

ピーテル・デ・ホーホ(1629~1684)はフェルメールと同時代に活躍したオランダの画家。オランダ絵画の特徴のひとつに遠近法を使った床の表現があります。『ファルスタッフ』の舞台の床も、オランダ絵画らしい幾何学模様で描かれており、かつ、遠近法を用いてデザインしているので、四角い模様はひとつずつ角度がつき、少しずつサイズが異なっています。非常に精緻な手作業で作られていることが分かります。

またフェルメール作品といえば、室内に絵が掛かっていることが多く、何といっても“窓”が特徴ですが、このあたりも舞台では忠実に再現されています。ヴェルディが晩年に到達した至高の音楽とあわせて、オランダ絵画の世界も味わってみてはいかがでしょう。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)

新国立劇場 2022/2023 シーズンオペラ
ジュゼッペ・ヴェルディ
『ファルスタッフ』
Falstaff / Giuseppe Verdi
全 3 幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
会場:新国立劇場 オペラパレス(東京・初台、京王新線「初台」駅直結)
公演日程:2023 年2月10日(金)19:00/12日(日)14:00/15日(水)14:00/18日(土)14:00
チケット料金: S:24,200 円 ・ A:19,800 円 ・ B:13,200 円 ・ C:7,700 円 ・ D:4,400 円・ Z:1,650 円
詳しくは新国立劇場WEBサイト:https://www.nntt.jac.go.jp/