【プレビュー】「没後190年 木米」サントリー美術館で2月8日から 京都の「文人」の創造性

江戸時代後期の京都を代表する陶工にして画家である文人・木米(1767~1833年)の生涯と芸術の全貌に触れる展覧会「没後190年 木米」がサントリー美術館で2月8日から3月26日まで開催されます。
没後190年 木米 |
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会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階) |
会期:2月8日(水)~3月26日(日) |
休館日:火曜日(ただし3月21日は18時まで開館) |
開館時間:10時~18時 ※金・土および2月22日(水)、3月20日(月)は20時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで |
入館料:一般1,500円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 |
詳しくは(https://www.suntory.co.jp/sma/)へ。 |
文人・木米、やきものに遊ぶ
木米は、京都祇園の茶屋「木屋」に生まれ、俗称を「八十八」と言い、木屋あるいは氏の青木の「木」と、八十八を縮めた「米」にちなんで「木米」と名乗りました。
30代で中国の陶磁専門書『陶説』に出会い、これを翻刻しながら本格的に陶業に打ち込みました。
煎茶器から茶陶まで、強い個性を持つ木米の作品は、中国や朝鮮など国内外の古陶磁から形や文様の一部分を抜き出しつつ、独自の視点によって再構成された芸術品です。


文人・木米、煎茶を愛す
江戸時代には、中国の学問や芸術に精通し楽しむ「文人文化」や「煎茶文化」が京都、大坂を中心に身分の違いに関わらず広がりを見せました。中国陶磁の豊富な知識を身につけ、煎茶を愛する木米は、煎茶器の制作において文人としての「遊び」を遺憾なく発揮しました。


文人・木米と愉快な仲間たち
木米の親友で画家の田能村竹田(1777~1835年)は「木米の話は諧謔を交え、笑ったかと思えば諭す、真実かと思えば嘘というように、奥底が計り知れない」(『竹田荘師友画録』)と、木米の人柄を伝えています。
また、竹田に「これまでに集めた各地の陶土をこね合わせ、その中に私の亡骸を入れて窯で焼き、山中に埋めて欲しい。長い年月の後、私を理解してくれる者が、それを掘り起こしてくれるのを待つ」(田能村竹田『竹田荘師友画録』)と、壮大な遺言を語ったとも伝えられています。
展覧会では、木米が気の置けない友人たちへ宛てた書状や、「古器觀」とも号した木米ならではの旧蔵品、木米が陶工として名を馳せる前に薫陶を受けた文人らに関する資料などが展示され、「交友」という視点から、その人物像に迫ります。


文人・木米、絵にも遊ぶ
木米は50代後半になると、精力的に山水図の制作に取り組むようになります。清らかで自由奔放な作風が魅力的な作品たちの多くは「為書」、つまり友人への贈り物でした。いわば私信ともいえる「為書」を読み解くことによって、木米の人柄に思いを馳せることが出来るでしょう。
現存作例の中でも最初期の山水図や、茶の聖地・宇治の実景に基づく悠大な山水図から、花卉図や仏画などの名品を通じて、多くの文人たちに愛された魅力的な木米画を紹介します。



個性を放つ木米の作品を鑑賞することで、江戸時代の人たちが憧れた「文人」の世界を思い描くことができるでしょう。
(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)