【開幕】「新指定国宝・重要文化財」展 東京国立博物館で2月19日まで

新たに指定・答申された国宝と重要文化財を紹介する「令和5年 新指定国宝・重要文化財」展が東京国立博物館で1月31日、始まりました。内覧会を取材しました。「日本最古の国宝」となる旧石器時代(約3万年〜1万5千年前)の北海道白滝遺跡群出土品(遠軽町埋蔵文化財センター)の黒曜石の大きさにびっくり。

36センチもある黒曜石の大型尖頭状石器は発見当初、「すわ、世界最大の槍か?」とも思われましたが、研究の結果、これを剥がすように砕いて、手頃なサイズの石器にする中間原材料で、金の延べ棒(インゴット)のような使い方だったそうです。
「鳥獣戯画」の断簡も

新指定の重要文化財には、なにやら見たことのあるようなカエルも。あの高山寺の国宝「鳥獣戯画」から分けられた「鳥獣人物戯画甲巻断簡」(MIHO MUSEUM)です。

また、東京国立博物館・奈良国立博物館の国宝「地獄草紙」や東博・京都国立博物館の国宝「餓鬼草紙」、奈良博の国宝「辟邪絵」などと、もともとは一緒の「六道絵」の一つだったとみられる重文「地獄草紙断簡(解身地獄)」(MIHO MUSEUM)も見ごたえがありました。
家康が秀吉にプレゼントをした
内覧会での文化庁の文化財調査官による説明を受けなければ見過ごしていたかもしれない重文が「嶋井家文書」(福岡市博物館)です。千利休が博多の商人嶋井宗室へ宛てた書状には「徳川」の文字があります。家康が秀吉に唐物の茶道具を贈ったというやり取りだそうです。「徳川」の文字は、2つある「一」で始まる文の左側の、右から3行目です。下の動画でご確認ください。
また、鎌倉時代の重文「地蔵十王像」(逸翁美術館)も、説明がなければ、通り過ぎていたかもしれません。

中世の日本には、次のような死生観があったそうです。
人が死ぬと10人の”裁判官”(十王)によって生前の罪を裁かれ、地獄、畜生道、修羅道などに魂が振り分けられます。(動画の補足:49日までは7日ごと=計7回、100日で8回目、1年で9回目、3回忌で10回目とのことです)
それぞれの世界でもやがてまた死にます。そして、また裁きを受けて、どこかの世界へ、を永遠に繰り返します。
この苦しみの「輪」から抜け出す方法は2つしかなく、一つはお釈迦さまのように自分が悟って解脱すること。もう一つは、地蔵菩薩に深く帰依することでお地蔵さまによって成仏してもらえることでした。
自分が悟るのはさすがに無理なので、中世の日本人たちはお地蔵さまが救ってくれることに強く憧れる死生観を持っていたそうです。
この永遠といえるほど長い時間軸を、一画面に表している鎌倉時代の絵画は、今回重文に指定されたものを含めて世界に2点しか残っていないそうです。
東京国立博物館平成館1階の企画展示室での開催なので総合文化展(常設)の観覧料のみで見ることができます。
国宝・重文の一つ一つが、それぞれ独自の歴史や価値を持っているので、刊行された図録『令和三~五年 新指定国宝・重要文化財』での予習復習をおすすめします。

図録には、パネル展示の国宝答申された宮内庁三の丸尚蔵館の「喪乱帖 原跡王義之」「更級日記 藤原定家筆」「万葉集巻第二、第四残巻(金沢本)」の写真と解説に加え、2021年に国宝指定された三の丸尚蔵館の「春日権現記絵 高階隆兼筆」「蒙古襲来絵詞」「唐獅子図 狩野永徳筆」「動植綵絵 伊藤若冲筆」「屛風土代 小野道風筆」の写真と解説も載っています。
特別企画「令和5年 新指定国宝・重要文化財」展は、東京国立博物館で2月19日まで(前期展示は2月12日まで)。