【プレビュー】「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」3月24日(金)から、群馬・原美術館ARCで

群馬県渋川市の「原美術館 ARC」では、「青空は、太陽の反対側にある」と題して、現代美術の「原美術館コレクション」と、東洋古美術の「原六郎コレクション」を今年3月から来年1月にかけて、春夏季と秋冬季の 2期に分けて展示します。
原美術館ARCとは
原美術館ARCは、現代美術の専門館である原美術館(東京・品川、 1979-2021)と、別館ハラ ミュージアム アーク(群馬・渋川、1988年開館)を、 2021年4月に集約した美術館です。横尾忠則『戦後』 1985年 セラミックにシルクスクリーン 240.0 x 240.0cm © Tadanori Yokoo ※第1期展示
「原美術館コレクション」は、運営母体である公益財団法人アルカンシエール美術財団理事長の原俊夫が蒐集した 1950年代以降の世界の現代美術の数々です。抽象表現主義やポップアートなど、 横尾忠則ら20世紀美術を彩った巨匠の絵画や彫刻から現在のアートシーンで活躍する作家の写真や映像作品まで、多種多様な表現を網羅しています。『 青磁下蕪花瓶 』 南宋時代 磁器 撮影:上野則宏 ※第 1期 前期展示( 2023年 3月 24日から 4月 26日)
一方の「原六郎コレクション」は、明治の 実業家・原六郎(1842−1933)が収集した 近世日本絵画、工芸、中国美術 などを所蔵しています。なかでも中国陶磁の真髄を伝える国宝「青磁下蕪花瓶」や浮世絵美人図の先駆けとなる重要文化財「縄暖簾図屏風」、円山応挙の大作画巻「淀川両岸図巻」、永徳ほか狩野一門による「三井寺旧日光院客殿障壁画」が代表作です。
現代美術の優品

本展では「 青空は、太陽の反対側にある 」 がキーフレーズです。輝く太陽の周りは少し白っぽく、太陽から離れるにつれて青さが増していきます。思い描く理想の青い空は太陽の反対側にあることから、自身の理想を求めて当時の美術的・社会的動向に背を向けた荒川修作や久保田成子 、 ギルバート&ジョージ や ヨーゼフ ボイスなど、国内外の作家の表現を振り返ります。
まず、現代美術ギャラリーA、 B、 Cでは、 常識や慣習、既存の価値観に抗うことで、または視点を変える ことで独自の地平を切り開く作家や、声高ではなくても 社会や美術の潮流に疑問を投げかけた作家、そして自身の心に深く潜ることで新たな表現を浮上させる作家の作品が紹介されています。
◆出品作品(予定)



【通期】アニッシュ カプーア『虚空』、草間彌生『ミラールーム(かぼちゃ)』、宮島達男『時の連鎖』、森村泰昌『輪舞(双子)』、奈良美智『My Drawing Room』、束芋『真夜中の海』、鈴木康広『日本列島のベンチ』など

【第1期】艾未未 、 安藤正子 、イェルク・インメンドルフ、 河原温、リー・キット、 ギルバート&ジョージ、スラシ・クソンウォン 、佐藤時啓、 須田悦弘、 ルフィーノ・タマヨ、 ジャン・デュビュッフェ、 奈良美智、 ゲオルク・バゼリッツ、 A. R. ペンク、 ヨーゼフ・ボイス、 張洹 、やなぎみわ 、ジム・ランビー、ロイ・リキテンシュタイン、ジャン=ピエール・レイノーなど


【第2期】カレル・アペル、荒川修作、アルマン、アルマンド、アンディ・ウォーホル、クレス・オルデンバーグ、工藤哲巳、久保田成子、クリスト、ヴィレム・デ・クーニング、篠原有司男、セザール、アントニ・タピエス、蜷川実花、エルネスト・ネト、森村泰昌、ロバート・メイプルソープ、マーク・ロスコなど
国宝や明治以来の一般公開作品も


一方、特別展示室観海庵には、鎖国の江戸期に西洋絵画や科学に傾倒した司馬江漢や、「朦朧体」と揶揄されながらも墨線を否定し、独自の表現を切り開いた横山大観の作品を展示します。
また、通常は東京国立博物館に寄託している原六郎コレクション、『 青磁下蕪花瓶 』 (国宝) と 『 青磁袴腰香炉 』 がお里帰りします(展示期間: 3月 24日~4月 26日)。どちらも爽やかな 青空色 が美しい名品です。
さらに、「光悦本」 と呼ばれる希少な古活字本である『 謡本 』 を帖を替えながら 通年展示。 記録に残る限りでは『 青磁袴腰香炉 』 は 、明治45(1912)年に東京帝室博物館(現・東京国立博物館)開催の特別展覧会 「 和漢青磁器 」 展以来の一般公開 、 『 謡本 』 は初公開 となるそうです。
◆出品作品(予定)狩野派『花鳥図屏風』(右隻)桃山~江戸時代 紙本墨画 六曲一 双 163.3 x 383.4cm(三井寺旧日光院客殿障壁画 ※第1期 前期 展示 (2023年 3月 24日から 6月中旬)


【第1期】『青磁下蕪花瓶』(国宝)、『青磁袴腰香炉』、『青磁水注花入』、『 光悦 謡本』 、狩野派『花鳥図屏風』、『紫陽花蒔絵重箱』 、 本阿弥光悦『蝶下絵和歌巻 (古今和歌集春歌上 )』 など

【第2期】司馬江漢『冨嶽図』、横山大観『海辺曙色図』、 『 光悦 謡本』 、本阿弥光悦『蝶下絵和歌巻 (古今和歌集春歌上 )』
など
建物は昨年末にお亡くなりになった「建築界のノーベル賞」と称されるプリツカー賞を受賞した磯崎新が手がけました。榛名山の峰々と呼応するピラミッド型の屋根が印象的なギャラリー Aと、前庭に向かって両翼を広げるギャラリー B、 Cは、現代美術作品が映える端正な空間です。
一方、滋賀県・三井寺(園城寺)の旧日光院客殿の書院造に想を得た「觀海庵」は、内部のいたるところに名工の技が光る落ち着いた和風空間。 広々とした庭 ではアンディ・ウォーホルやオラファー・エリアソンなど、国内外のアーティストによる屋外作品を鑑賞しながら散策も楽しめます。
現代美術の優品とともに近代日本絵画、中国美術の至宝にも触れられる貴重な機会です。館や周囲の自然とともに、開幕の春が待ち遠しくなります。(美術展ナビ編集班・若水浩)
「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」 |
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会場:原美術館ARC(群馬県渋川市金井2855‐1) |
会期:第1期 2023年3月24日(金)~9月3日(日) 第2期 2023年9月9日(土)~2024年1月8日(月・祝) |
休館日:木曜日(12月28日、1月4日、祝日を除く)、1月1日。※8月は無休 |
開館時間:9:30–16:30(入館は16:00まで) |
入場料:一般 1,800円、大高生 1,000円、小中生 800円 |
詳しくは、同館HP |