【プレビュー】「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」国立西洋美術館で3月18日から フランスの最果ての地、ブルターニュの知られざる美術史を旅する

クロード・モネ 《ポール=ドモワの洞窟》 1886年 油彩/カンヴァス 茨城県近代美術館

フランスの内なる「異郷」ブルターニュ

断崖の連なる海岸線に岩々が覆う荒々しく雄大な自然、先史時代の巨石遺構や独特な宗教的モニュメント、ケルト系言語を話す人々の素朴で信心深い生活様式 ――。フランス北西部、大西洋に突き出た半島を核としたブルターニュ地方は、古来より特異な文化圏を形成していました。

そんなブルターニュに魅せられた画家たちの作品、関連資料が一堂に会する初めての展覧会「憧憬の地 ブルターニュ」が、国立西洋美術館(東京・上野)で3月18日から6月11日まで開催されます。

19 世紀後半から20 世紀にかけて、新たな画題をもとめる画家たちは、フランスの内なる「異郷」ブルターニュを訪れ、この地を主題とした作品を描きとめました。

流派や国籍を問わず多様な画家たちを受け入れたブルターニュは、ゴーガン率いるポン=タヴェン派やナビ派結成のきっかけになるなど、美術史上重要な画家グループの”誕生”も促します。日本から渡仏した黒田清輝や藤田嗣治もブルターニュを訪れ、この地を主題とした作品を残しています。

国立西洋美術館の「松方コレクション」やパリ・オルセー美術館など国内外の美術館、個人コレクションからブルターニュを表した選りすぐりの約160点が一堂に会します。
ブルターニュに「野生的なもの、原始的なもの」を求めて繰り返し滞在したゴーガンの作品が10点以上が集まり、
ゴーガンの変遷する造形様式を見出すことができます。また、ブーダン、モネ、シニャック、ルドン、ミュシャ、黒田、藤田らが描いた多種多彩の作品を通じて、「憧憬の地」ブルターニュへの心の旅を楽しむことができるでしょう。

憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
会期:2023年3月18日(土)~6月11日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(毎週金・土曜日は午後8時まで)
*入館は閉館の30分前まで
*5月1日~4日は午後8時まで開館
観覧料金:一般2,100円/大学生1,500円/高校生1.100円/中学生以下無料
公式サイトは(https://bretagne2023.jp)へ。
公式ツイッター(@bretagne2023

第1章 見出されたブルターニュ:異郷への旅

ブルターニュを訪れた画家たちはこの地に何を求め、何を見出したのでしょうか。ミュシャ、ターナー、モネなど、19世紀初めの「ピクチャレスク・ツアー(絵になる風景を地方に探す旅)」を背景に生まれた作品たちから展覧会は始まります。

アルフォンス・ミュシャ 《岸壁のエリカの花》 (左)《砂丘のあざみ》(右)いずれも1902年 カラー・リトグラフ OGATAコレクション
ウィリアム・ターナー 《ナント》 1829年 水彩 ブルターニュ大公城・ナント歴史博物館
クロード・モネ 《嵐のベリール》 1886年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)ⒸRMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF

第2章 風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神

1886年、パリでの生活苦から逃れるようにポン=タヴェンへ赴いたゴーガンはこの地を気に入り、1894年までブルターニュ滞在を繰り返して制作に取り組みました。この地で、画家仲間と交流や共同制作するなかで、ゴーガンは自らが芸術に求める「野性的なもの、原始的なもの」への思索を深めていきます。

ポール・ゴーガン 《海辺に立つブルターニュの少女たち》 1889年 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション
ポール・ゴーガン 《ブルターニュの農婦たち》 1894年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ) ⒸRMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ゴーガンと彼をとりまくポン=タヴェン派の画家たちは、単純化したフォルムと色彩を用いて現実の世界と内面的なイメージとを画面上で統合させる「綜合主義」を展開。1880年代末にパリで「ナビ派」が結成される引き金にもなりました。

エミール・ベルナール 《ポン=タヴェンの市場》 1888年 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館
ポール・セリュジエ 《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》 1922年 油彩/カンヴァス ヤマザキマザック美術館 展示期間:3月18日~5月7日

第3章 土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち

ブルターニュを「第二の故郷」とし、絶え間なく、この地を着想の源とした画家たちもいました。19世紀末のジャポニスムを牽引した版画家アンリ・リヴィエールが描く牧歌的な風景には、彼が夢見たであろうもうひとつの「異郷」である日本のイメージが投影されているかのようです。

アンリ・リヴィエール  連作「ブルターニュ風景」より:《ロネイ湾(ロギヴィ)》 1891年 多色刷り木版 国立西洋美術館
モーリス・ドニ 《花飾りの船》 1921年 油彩/カンヴァス 愛知県美術館
シャルル・コッテ 《悲嘆、海の犠牲者》 1908-09年 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション
リュシアン・シモン 《ブルターニュの祭り》1919年頃 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション

第4章 日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし

ブルターニュが西洋絵画の主題として定着した19世紀末から20世紀初めは、日本では明治後期から大正期にあたります。この頃、芸術先進都市パリに留学していた、黒田清輝や藤田嗣治ら日本人もブルターニュへと赴き、風景や風俗をテーマにした作品を制作していました。

黒田清輝 《ブレハの少女》 1891年 油彩/カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館
山本鼎 《ブルトンヌ》 1920年 多色木版 東京国立近代美術館 展示期間:3月18日~5月7日
岡鹿之助 《信号台》 1926年 油彩/カンヴァス 目黒区美術館

(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)