【開幕レビュー】「生誕100年 柚木沙弥郎展」東京・日本民藝館で4月2日(日)まで

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型染二曲屏風《犬猫》1990年頃

シンプルで清々しいデザインと、澄んだ色彩が特徴の染色家、柚木沙弥郎ゆのきさみろうさん(1922~)の生誕100年を記念した展覧会が、東京の日本民藝館で開かれています。柚木さんは、昨年10月に100歳を迎えましたが、いまだ創作意欲は衰えていません。

玄関付近から2階を見上げた展示風景

柚木さんは染色のほか、版画やガラス絵、絵本など幅広いジャンルに挑戦していますが、本展は染色が中心で、民藝関係の型染ポスターなどが加わります。制作年代などにはこだわらず、「お互いが美しく見えることだけを考えて展示をしました」と、同館の月森俊文さん。和風を基調としながら、洋風も取り入れている同館とも、見事に調和しています。

柚木さんは、日本民藝館を創設した柳宗悦やなぎむねよし(1889~1961)の思想と、同館同人で人間国宝の染色家、芹沢銈介せりざわけいすけ(1895~1984)の作品に影響を受け、同館を「自分の原点」と語ります。

《紅型風型染布》木綿 1948年

制作活動は70年以上に及びますが、《紅型風型染布》は師の芹沢に勧められた静岡の正雪紺屋での修行を終え、初めて制作した染物です。柳の評を求めるため、作品を持って上京したところ、蒐集では妥協を許さなかった柳にすぐに買い取られました。初作ながら才能を発揮した柚木さんと、その才能を見逃さなかった柳の眼力を物語るエピソードです。

展示風景

本展の中心となるのは、2016年以降に柚木さんから同館に寄贈された約60点の染色作品。これらは作者自身が長年手元に置いてきた代表作と言えます。

2階大展示室の風景

圧巻は2階の大展示室です。同館が所蔵するアフリカやインドなどのプリミティブな造形作品などと、柚木さんの染色作品が見事にコラボレートしています。

2階大展示室の風景
2階大展示室の風景

同館では、2018年に特別展「柚木沙弥郎の染色 もようと色彩」を開催し、過去の入館者数記録を大きく塗り替えました。同館で現存作家として特別展を行うのは43年ぶりだったそうで、バーナード・リーチ(1887~1979)、河井寛次郎(1890~1966)、濱田庄司(1894~1978)、棟方志功(1903~75)に続いて5人目でした。それから5年での再びの特別展開催ということで、人気の程が分かります。今回のコラボは前回見た人にとっても新鮮に映るでしょう。

《注染水玉文布》木綿 1950年代(左)と、マリのドゴン族儀式用仮面

こちらの巨大なフォークのような形をしたものはマリの儀式用の仮面です。月森さんは「アフリカやインドのプリミティブな収蔵品を横に並べると、ほかの作家の作品なら負けてしまうものばかりでしょう。しかし、今回のコラボでは、どちらからも今の私たちには失われてしまった原始的な強い息吹きが感じられます。並べても違和感がなく、地域や時代を超えた共鳴を楽しんでいただければ」と話します。

展示風景

柚木さんは2010年代からは、鑑賞用の一点物の作品を手がけるようになりましたが、それまでは生地など実用的なものばかり作ってきました。テーブルクロスなどとして使うと、西洋のアンティーク家具にも馴染むのが分かります。

日本民藝館外観

日本民藝館は、渋谷から京王井の頭線で2駅の駒場東大前駅西口から、歩いて7分の場所にありますが、周囲は緑も多く落ち着いた雰囲気です。都心の喧騒を忘れさせる静かな館内で、柚木さんの生命力にあふれた作品に触れると、いつのまにか元気が湧いてきているのを感じました。(読売新聞美術展ナビ編集班・若水浩)

「生誕100年 柚木沙弥郎展」
会場:日本民藝館(東京都目黒区駒場4-3-33)
会期:2023年1月13日(金)~4月2日(日)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館
開館時間:10:00–17:00(最終入館は16:30まで)
入場料:一般 1,200円、大高生 700円、中小生 200円
詳しくは、同館HP