【開幕】「不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選」泉屋博古館東京(六本木)で2月26日(日)まで 世界屈指の中国青銅器コレクションが一堂に 青銅器の世界をあらゆる角度で学べる絶好の機会

不変/普遍の造形―住友コレクション中国青銅器名品選― |
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会場:泉屋博古館東京(東京都港区六本木1-5-1) |
会期:2023年1月14日(土)~2月26日(日) |
休館日:月曜日 |
アクセス:東京メトロ南北線の六本木一丁目駅北改札正面 泉ガーデン1F出口から徒歩3分、日比谷線の神谷町駅4b出口から徒歩10分、銀座線・南北線の溜池山王駅13番出口から徒歩10分 |
観覧料:一般1000円、高校生・大学生600円、中学生以下無料 |
※問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)へ。 ※詳細情報はホームページ(https://sen-oku.or.jp/tokyo/)で確認を。 |
1月14日(土)から2月26日(日)まで泉屋博古館東京で「不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選」が開催されます。昨年から開催されてきたリニューアルオープン記念展の第4弾で、フィナーレとなる本展では、世界屈指の住友コレクションの中国青銅器を一堂に展示。4章構成で中国青銅器の魅力を掘り下げます。開幕前の内覧会を取材しました。
造形美と機能性を両立
「Ⅰ 神々の宴へようこそ」では、約3000年前、殷周時代(縄文時代の終わり頃)につくられた青銅器が勢ぞろい。これらは祖先の神々をもてなす「まつり」で使われた特別な器で、食器・酒器・水器などと用途が明確です。

こちらは《虎卣》。酒などを入れる器です。器を埋め尽くす虎、鹿、蛇――。中央にいる、今にも虎にのみこまれそうな人間は、守られているのでしょうか……?
ちなみに、上部の鹿は「つまみ」の役割を果たし、蓋が開くしかけになっています。さらに、把手は一定の角度以上に倒れないように設計されているそうです。
圧倒的な造形美、緻密な文様はもちろん、機能性も追求していたことに驚嘆。もはや超絶技巧の世界です。



文様モチーフの秘密に迫る

展覧会などで青銅器を鑑賞するとき、独特の文様やモチーフに見とれる方も多いでしょう。「Ⅱ 文様モチーフの謎」では、文様・モチーフをじっくりと見つめながら、その背景や意図についても知ることができます。


たとえば、殷代に多く用いられた文様モチーフが、フクロウ・ミミズク類を指す鴟鴞でした。一見すると可愛らしいですが、実は古代中国では、鴟鴞は不吉とみなされていたそうです。だからこそ邪霊を払う力を期待する、「毒をもって毒を制す」発想の表れであるという解説に納得しました。
金文を読み解く
「Ⅲ 古代からのメッセージ―金文―」では、器に施された「金文」(漢字の祖先)に着目。解説パネルの現代語訳を読むと、器をつくるきっかけとなった出来事や、器を「子々孫々永く宝」としてほしいという願いなど、様々な情報が器に残されていたことがわかります。器が人々の手で意思をもってつくられたことがリアルに伝わり、さらに、当時の人々の個性も垣間見られる興味深い展示です。

青銅器と煎茶
そもそも、コレクターたちはどんな目的で中国青銅器を収集し、どのように鑑賞していたのでしょうか。その答えのひとつが、「Ⅳ 中国青銅器鑑賞の歴史」で提示されています。展示を見ると、中国青銅器が煎茶の世界で愛されていたことがわかります。

ちなみに、住友コレクションの中国青銅器は、ほとんどが第15代当主の住友春翠(1864年〜1926年)によって収集されたもの。煎茶を好んだ春翠は、茶会の床飾りのために中国青銅器を購入したことをきっかけに、熱心な収集活動を始めたそうです。
青銅器ブームが到来!
「最近、青銅器ブームがきています!」と同館学芸員の山本堯さんは話しています。同じ港区内の根津美術館では「遊びの美」の同時開催展 「古代中国の青銅器」、松岡美術館では「松岡コレクション めぐりあうものたちVol.3」特別展示「中国青銅器 金文」と、両館でも青銅器にまつわる展覧会を鑑賞できます。「港区内3館をめぐる 中国古代青銅器デジタルスタンプラリー」に参加すると、「おでかけしきょうそん」(※)がもらえます。(2月5日(日)まで)
※本展で展示されている鴟鴞尊の3D ARフォトフレーム

「不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選」は泉屋博古館東京(六本木)で1月14日(土)から2月26日(日)まで。中国青銅器について用途や文様、金文など様々な角度でひも解く本展は、「青銅器の入門編」としてもおすすめです。本展はもちろんのこと、今後、他の展覧会で青銅器を鑑賞する際の「視点」が増え、より多くの発見や驚きと出会えることでしょう。
(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)