【BOOKS】12世紀のドイツの聖女の神秘体験が及ぼした影響を追う『ヒルデガルト・フォン・ビンゲン――幻視の世界、写本の挿絵』鈴木桂子著 (中央公論美術出版)

ヨーロッパ中世のドイツでマルチな活躍をした聖女ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098~1179年)。あるいは薬草学の始祖としても、あるいは女性作曲家のさきがけとしても知られる高名な修道女は、今から800年以上前の神聖ローマ帝国での出来事とは信じられないほどの多面的な業績を残しており、カトリック史上4人目の女性教会博士として今世紀に列聖されたほどの存在です。

現代の西洋文化にも影響を与えた「幻視」の世界

なかでもその幻視体験は、当時から現在まで西欧を中心に非常に大きな影響を及ぼしています。ヒルデガルトは、なかなか理解されにくい幻視が、夢想などではなく「神の御業」を見たということを著作にして残しました。

2022年11月に刊行された鈴木桂子著『ヒルデガルト・フォン・ビンゲン――幻視の世界、写本の挿絵』(中央公論美術出版刊)は、美しい挿絵が施されたヒルデガルトの著作写本を丁寧に紹介して、美術史の側から神秘の扉を開いていきます。

著者の鈴木さんは、長年ドイツで研究を行ない、ドイツ語でヒルデガルトについての著作を刊行したこともある専門研究者です。美術作品でありながら、展覧会で見ることがめったにできない画像探索を、重厚感のある書籍でじっくり行なってみませんか。ヒルデガルトの、これまで日本ではほとんど知られてこなかった重要な一面が見えてきます。

定価19,800円、本文648ページ・口絵8ページ。購入は書店で注文か、中央公論美術出版のホームページで。

(読売新聞デジタルコンテンツ部)