【レビュー】「博物館に初もうで」(東京国立博物館)の5つの見どころを紹介!新年を祝うおめでたい作品が一堂に

正月企画「博物館に初もうで」 |
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会期:2023年1月2日(月・休)~1月29 日(日) |
会場:東京国立博物館 (東京都台東区上野公園13-9) |
開館時間:9時30分~17時(入館は閉館30分前まで) |
観覧料:一般1000円/大学生500円 |
休館日:月曜 |
アクセス:JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分 |
詳しくは東京国立博物館の公式HPへ。 |
アートファンにとって見逃せない年始恒例の展示が、東京国立博物館で毎年お正月に開催される正月企画「博物館に初もうで」です。2023年は、東京国立博物館で「博物館に初もうで」がスタートしてからちょうど20年目となります。
本展では、新年を祝うおめでたい作品が各展示室に並び、2023年の干支「兎」にちなんだ特集展示も登場。新年の東京国立博物館の見どころを、5つの注目ポイントに絞ってレポートします。
1 新年恒例!一番人気の国宝「松林図屏風」(本館7室)※1/15まで展示

まずチェックしたいのが、東京国立博物館で屈指の人気を誇る六曲一双の水墨画《松林図屏風》です。長谷川等伯の代表作として名高い本作は、戦後初めて同館で購入された作品のひとつです。
松林が叙情性豊かに描かれ、絵の前でたたずんでいると、永遠の静寂の世界にどっぷりと浸れます。一方で、ぐっと近づいてみると、離れて立ったときの印象とは裏腹に、画家の感情がほとばしるような激しい筆致に驚かされます。ぜひ、いろいろな角度・距離から鑑賞してみてください。

ご覧の通り、《松林図屏風》は大人気。毎年、本作のために足を運ぶ熱心なファンも多いそうです。専用の展示スペースとなっている本館7室は、閉館間際まで熱心なアートファンで混雑していました。

本館7室での展示は1月15日(日)まで。1月17日(火)以降は、「日本美術のとびら 四季」(※)で展示されている高精細複製品で引き続き楽しめます。こちらではプロジェクションマッピングによるドラマチックな演出も加わり、より深く《松林図屏風》の世界へと没入できるでしょう。
※本館1階 体験型展示スペース 特別3室で3月12日(日)まで開催
2 特集「兎にも角にもうさぎ年」(平成館企画展示室)

2023年の干支「兎」にちなんだ作品を集めた特集展示「兎にも角にもうさぎ年」も見逃せません。仏画、中国絵画、装飾品、漆工芸、陶磁器、浮世絵、着物など、多彩なジャンルにまたがる収蔵品を誇る東京国立博物館ならではの、バラエティに富んだ展示は見どころ満載。
ウサギの愛くるしい姿をクローズアップしたかわいい作品から、意外な場所にさりげなくワンポイントで使われている作品まで、様々なウサギを楽しむことができます。一部の作品を除いて、ほぼすべての作品が撮影OKなのも嬉しいところ。お気に入りのウサギを思い出に持ち帰ってみてください。







3 「吉祥文様」を散りばめた日本美術を堪能(本館展示室)
本館の各展示室では、新春を祝うような「吉祥文様」をあしらった作品が数多く揃います。特にチェックしたい絵柄は、松・竹・梅・龍・七福神・富士山・鶴・亀・鷹など。広大な本館展示室をめぐって、筆者が特に印象に残った作品をいくつかピックアップします。


【中】《寿文字入蓬莱柄鏡》銘「天下一藤原政重」 江戸時代・18世紀 銅製 鋳造
【右】《田子浦富士柄鏡》銘「藤原光長」江戸時代・18世紀 銅製 鋳造 徳川頼貞氏寄贈 江戸時代の手鏡。展覧会では文様が彫られた「裏側」を鑑賞します。


4 奈良時代の古仏がお出迎え!特別企画「大安寺の仏像」
本館を入ってすぐ右にある彫刻の展示室(11室)では、特別企画「大安寺の仏像」(3月19日(日)まで)がスタート。大安寺は、日本ではじめて国家によって建てられた「大官大寺」を前身とし、古都・奈良でかつて広大な敷地を誇った古刹です。弘法大師空海をはじめとする名高い僧侶たちもここで学びました。
今回の特別企画では、奈良時代の仏像や瓦など15件が展示されています。

特に見ておきたいのが、重要文化財に指定されている7件の奈良時代の仏像です。
どの仏像も一本の巨木から彫りだされ、どっしりとした重厚感がありながら、ほんのりと異国情緒も漂わせています。平安時代、鎌倉時代とはひと味違う、古代ロマンを感じさせるオリエンタルな魅力をぜひ間近で感じてみてください。すべて写真撮影可能です(個人利用に限ります)。

5 伊藤若冲のモノクロームの版画作品《玄圃瑤華》(本館2室)
最後にオススメしたいのが、東京国立博物館が「未来の国宝」として推す、伊藤若冲の版画作品《玄圃瑤華(げんぽようか)》です。同館所蔵の28枚の中から、6枚を選りすぐって展示しています。展示期間は、国宝室(本館2室)で1月29日まで。
《玄圃瑤華》は、若冲が下絵を描き、自ら版木を彫った自画自刻の版画作品。代表作《動植綵絵》シリーズ同様、花や野菜、昆虫などが作家独自の感性でいきいきと表現されています。若冲と言えば、精緻な描きこみが特徴的な肉筆画をイメージする方が多いかもしれませんが、版画では思い切ったデフォルメが施されており、白と黒の強いコントラストが鑑賞者に鮮烈な印象を残します。

本作は、「拓版画」という技法で制作されています。絵柄となる部分を彫り込み、そこに湿らせた紙を押し付けて表面に凹凸をつけてから、凹んだ部分以外に墨を塗って仕上げる技法です。つまり拓版画は、彫り残した部分が絵として摺られる浮世絵などの木版画とは違い、彫り込んだ部分が絵柄となるわけです。

新年の美術館めぐりは、おめでたい作品が揃った東京国立博物館から始めてみてはいかがでしょうか?幅広い展示作品の中から、自分だけのお気に入りが見つかれば、幸先良い1年になりそうですね!
(ライター・齋藤久嗣)