大阪で制作された独自の「濃い」浮世絵 「上方浮世絵展」国立劇場伝統芸能情報館で4月9日まで 入場無料

国立劇場の伝統芸能情報館(東京・半蔵門)で4月9日まで「国立劇場所蔵 上方浮世絵展」が開かれています。「上方かみがた」とは京都・大坂(大阪)のこと。「上方浮世絵」は、江戸の浮世絵から約1世紀遅れた江戸時代後半(18世紀末)から、主に大坂で独自の画風や技法を用いて制作された浮世絵です。
その特徴は「江戸のいきですっきりとした画風とは異なり、粘り強く、まったりとした筆致」(監修者の北川博子氏の図録での解説)が特徴。江戸では使用が禁じられた金銀の絵の具を使ったり、楽屋で化粧をする姿など舞台外のことを描いたりと、江戸の浮世絵とは異なる「上方浮世絵」の世界を、「濃いめ」「推し」などの現代的なキーワードから読み解いていきます。本展担当の国立劇場調査資料課の中澤麻衣さんは「歌舞伎ファンだけでなく、浮世絵ファンにとっても、”発見”の多い展覧会です」と話しています。

江戸とは異なる表現

浮世絵では、版木を何度も使うため、初刷りか、すり減った後の版か、で作品の優越に差があることが知られています。一方、それとは別に、上方浮世絵が制作された大坂では、江戸では禁止された金銀の絵の具を使い、空摺りやぼかしの技法を多用する上質の「上摺じょうずり」と、安価な絵の具で摺りも普通の「並摺」の2種類の浮世絵が販売されていました。国立劇場が所蔵するものは、「上摺」が多く、絵の具の鮮やかな色が残ります。

画帖『画帖 全』 寛永(1848~54)末頃 国立劇場蔵
初代貞信「二代目中村富十郎の娘おたき、二代目片岡我重の鮒屋源五良」天保10年(1839)1月上演 国立劇場蔵
芳滝「中村宗十郎の毛谷村六助、四代目嵐璃寛のおその」 明治3年(1870)5月上演 国立劇場蔵

江戸では、憧れの役者をすらりと格好良く描くのがスタンダードでしたが、大坂では、ありのままに描くことが好まれました。その関心は「推し」の役者の舞台外にも広がり、化粧をしている場面や、住んでいる場所や給金までもが、描かれるモチーフになりました。

二代貞信「俳優楽屋影評判 二代目坂東寿三郎」明治17年(1884) 国立劇場蔵

海外では、上方浮世絵に特化した収集家や愛好家がいるといいますが、国内での知名度はまだ高くありません。今年は、近代大阪の日本画が勢ぞろいする史上初の大規模展「大阪の日本画」が1月21日から大阪中之島美術館で、4月15日から東京ステーションギャラリーで開かれるなど、大阪発の絵画に注目が集まっています。「上方浮世絵展」は入場無料で、会場は撮影可。展覧会の図録(1900円)も刊行されています。

国立劇場所蔵 上方浮世絵展
会場:国立劇場 伝統芸能情報館(東京都千代田区隼町4-1)
会期:2022年11月2日(水)~2023年4月9日(日)
*前期11月2日~1月28日、後期2月4日~4月9日
休室日:1月29日~2月3日
開館時間:10:00~18:00
入場料:無料
詳しくは国立劇場伝統芸能情報館のホームページで:https://www.ntj.jac.go.jp/tradition/event/kamigataukiyo-e.html

(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班 岡本公樹)