【BOOKS】『世界を変えた書物』(小学館) 歴史的発見が詰まった稀覯書を解説付きで堪能!当時の人々の知的興奮を追体験

2012年に始まり、約10年かけて東京、大阪などで6回にわたって開催され、大きな反響を呼んだ[世界を変えた書物]展。金沢工業大学ライブラリーセンターが所蔵する科学や工学についての稀覯書きこうしょ(※)を集めたコレクション「工学のあけぼの文庫」から、数学・物理学・天文学・化学・生物学など自然科学分野を中心に、偉人たちによって著された著名な書物の「初版本」を集めた展覧会でした。

※古書や限定版など、稀にしか見られない書物。

[世界を変えた書物]展 上野の森美術館の展示風景(提供:小学館)

筆者も2018年に上野の森美術館で開催された東京展を訪れましたが、人類の歴史を作ってきた書物が放つ独特のオーラに圧倒された覚えがあります。

pp.32-33 ※許可を得て撮影

本書は、[世界を変えた書物]展の図録。展示作品のなかから90冊を選りすぐり、それぞれの書籍でハイライトとなるページを解説付きで紹介しています。ケプラー、ニュートン、エジソン、アインシュタイン……など、科学や工学の歴史に名を刻んできた偉人の書籍がズラリ。歴史的発見が詰まった「初版本」を手にした当時の人々が感じていたであろう知的興奮を追体験できます。

pp.72-73 ※許可を得て撮影

また、薄茶色に焼けた紙、手描きの挿絵、中世の装飾写本のような手彩色のイラストなどをじっと見ていくと、古美術品のような味わい深さも感じられ、稀覯書きこうしょの世界へグイグイと引き込まれていきます。

本書では、科学・工学の知見がわかりやすく紐解かれ、テキストの端々から書物への愛情も感じられます。著者は山本貴光さん、編集者は橋本麻里さん。無類の本好きとして知られ、図書館のような自宅で数万冊の蔵書に囲まれて暮らす生活スタイルは、愛書家の羨望を集めています。

読み進めるにつれ、書籍同士のつながりも徐々に見えてきました。私たちの文明社会は、偉人たちの発見や発明が互いに繋がり、積み重なった「知の連鎖」によって成り立っていることがジワジワと伝わってきます。ページをめくるだけでも何故かワクワクしてしまうのは、このうえなく貴重で、素晴らしいものと向き合っているという実感が得られるからでしょうか。ぜひ古美術を愛でるような感覚でページをめくり、知の競演を堪能してみてください。

定価は2,750円。購入は書店や小学館のHPから各オンライン書店にて。

(ライター・齋藤久嗣)