【インタビュー】「他の作家の視点を通して物事を見ることで、刺激を受けることができました」――練馬区立美術館で「平子雄一×練馬区立美術館コレクション」展に臨んでいる平子雄一さん㊤

今回の企画展について話す平子雄一さん(撮影・青山謙太郎)

現在開催中の「平子雄一×練馬区立美術館コレクション inheritance, metamorphosis, rebirth [遺産、変形、再生]」展は、練馬区に在住するアーティストの平子雄一さんが同美術館収蔵作品の中から10点の作品を選び出し、それらの作品にインスパイアされた新作を発表するという趣向。新進気鋭の作家がどんな作品を選び、そこからどんな刺激を受けたのか。企画に臨んだ平子さんに聞いた。(聞き手は事業局専門委員 田中聡)

平子雄一さん(撮影・青山謙太郎)

――平子さんが練馬区立美術館とコラボした今回の企画、どのような形で成立したのでしょうか。

平子 話をいただいたのは今年の春、5月くらいですかね。収蔵作品を見せてもらい、まず15作品を選んでそこからさらに10作品に絞って、習作を作り始めたのが8月ぐらいだったでしょうか。最初はあまり乗り気ではなかったんですよ、実は。最近はあまり、他の作家さんの作品を見ないようにしていましたから。外部から影響を受けないために、あえて自分を(他人の作品とは切り離す)「ガラパゴス状態」にしておくことも必要ではないか。この企画から自分にとって得るものはあるのか。そんなことも思っていたんです。

――そういう思いがあったのに、企画を受けられたのはどうしてでしょうか。

平子 「他の作家の視点を通して物事を見る」という作業をしばらくしていないな、と思ったんですね。ロンドンでの学生時代では、毎週のように大英博物館やテート・ギャラリーなどに行っていろいろな作品を見ていたんですけどね。収蔵作家の人たちと同じような年代になって、そこで改めて作品に触れた時に、自分が何を考えるのか。そういうことにも興味がありました。

平子雄一さんは1982年、岡山県生まれ。高校を中退して渡英し、2006年にウィンブルドン・カレッジ・オブ・アート絵画学科を卒業。現代社会における自然と人間の関係性について考える作品を発表し続けている。絵画のほか、彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど幅広いジャンルで活動。日本のほか、台湾、オランダ、デンマークなどで個展を開催している。

新道繁《松》1960年 練馬区立美術館蔵

――企画に臨んだ結果、「自分にとって得るもの」は見つかったのでしょうか。練馬区立美術館のコレクションの中から、最終的には10作品を選んだわけですが、特に印象に残っている作家・作品を教えていただけますか。

平子 やはり刺激は受けましたね。収蔵作品を描いた作家の人たちは、それぞれその時代で何とか前の世代を乗り越えようと努力してきた。技術的、理論的には今の方が当然進んでいるんですが、そういう思いは今も昔もあまり変わらない、と実感しました。だからこそ、僕たちも前の時代の作家さんたちよりも先に行く作品を残さなければいけない、と改めて思いましたね。10作品選んだ中で一番印象に残っているのは、新道繁さんの《松》です。この作品には、「現代の作家の作品」といっても通用する感覚がある。どこの時代で描かれたのか、どこの地域で描かれたのか、そんなものを超越している力がある。感銘を受けました。もうひとり、印象に残った作家は、《鶏頭》を描いた小林猶治郎さんです。

 新道繁さん(1907~81)は福井県出身。日展常務理事や光風会理事長などを歴任。昭和30年代以降、「松」を描き続けたことで知られている。小林猶治郎さん(1897~1990)は静岡県出身。高校の美術講師を務めながら、作品を描き続けた。孫娘は現代美術家の富田有紀子さん。

小林猶治郎《鶏頭》(1932年、練馬区立美術館蔵)を前に、企画意図を話す平子さん

――小林さんの作品のどういうところが印象に残っているのですか。

平子 小林さんは様々なタッチで多彩な作品を残している。とても器用で、技術が高い人です。ただ、それは逆に言えば、「あなたの核はこれだ」と指摘してくれる「理解者」、サポートしてくれる人がいなかったのではないか、とも思ってしまう。自分が描いているものが果たして「正解」なのかどうか、作っている人間はえてして分からなくなってしまうんですね。アーティストにとって、「よき理解者」と巡り会うことはとても重要なことなんです。……まあ、本当に小林さんがそうだったのかどうかはよく知らないのですが、自分のこれまでを振り返りながら、そんなことを考えながら作品を見ました。(㊦に続く)

平子さんの構成による練馬区立美術館コレクション作品展示風景
「平子雄一×練馬区立美術館コレクション」展
会場:練馬区立美術館(東京都練馬区貫井1-36-16)
会期:2022年11月18日(金)~2023年2月12日(日)
休館日:月曜休館、ただし1月9日は開館し、10日が休館。12月29日~1月3日は休館
アクセス:西武池袋線(東京メトロ有楽町線・副都心線直通)中村橋駅から徒歩3分
観覧料:一般300円、高校生・大学生及び65~74歳200円、中学生以下及び75歳以上無料など
※料金の詳細や最新情報は、公式HP(https://www.neribun.or.jp/museum.html)で確認を