平澤賢治個展「If love is quantifiable,」 今の時代ならではの“肖像写真”と向き合う 北千住BUoYで12月18日まで

(奥)《Licht》2016 - 2022年

If love is quantifible, 平澤賢治個展
会場:北千住 BUoY(東京都足立区千住仲町49-11 2階)
会期:2022年12月8日(木)~12月18日(日)
開場時間:13時~19時
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
※詳しくはBUoyのホームページへ。

東京とロンドンを拠点に活動する写真家・現代アーティストの平澤賢治さん(1982年生まれ)の個展。サーモグラフィーカメラを使った独特のポートレイトの作品で知られます。

(左)《OCR (Flory)》1968 – 2017 – 2022年 、(右)《OCR (Sylvain)》 1968 – 2017 – 2022年

刻まれている数値は、被写体となった人物の体温です。ほとんど毎日、自分の体温を見せつけられるような暮らしとなった私たち。客観的なデータとしての乾いた数字に過ぎませんが、作品としてこれらの数字と改めて向き合うと、サーモグラフィー越しの人物から、よりリアルな「人」の気配、そして生命力を感じます。今の時代ならではの感覚でしょうか。

《Lullaby》2016 – 2022年

サーモグラフィ―によって写真の形で可視化された体温に数字が加わり、情報としての人物像がより迫ってくるように感じます。会場内には、体温を淡々とフランス語で読み上げる声が薄く響き、また熱情報を音に変換したものがBGM音楽のように流れるなど、視覚や聴覚から様々な形で人物像と触れ合います。

《Triptych Mirror #1》2022年

シリコンウェハーが連なった作品。高純度の多結晶シリコンからできており、ここから切り出されたものがスマートフォンやパソコンなど現代社会で不可欠な製品の中で半導体デバイスとして使われます。一方で、その鏡面に映る七色の光やぼんやりと映る自分の顔と向きあう不思議な感覚。

映像作品も。コップに入れた食用のゼリーにハチミツを垂らし、ハチミツが落ちていくシーンをアップでiPhoneで撮影したシンプルなものですが、不思議な生命力を感じます。サーモグラフィーで肖像写真を撮る際には、モデルの方に身体を温めてくれるハチミツ入りの飲み物を振る舞うのだそうです。

平澤賢治さん

コロナ禍となって作品発表に躊躇する時期が続いたという平澤さん。「2004年の撮影当初より、生命を肯定する立場でその魅力をサーモグラフィー作品を通して発表してきました。しかし、コロナ禍になりサーモグラフィーや体温を測ることにネガティブな印象を持たれる方が増えたのではと感じておりました。これまでと同じ姿勢でサーモグラフィーの作品と発表できたとしても、こうした状況下では表現の意図が伝わるのは難しいと考えていました」と言います。パンデミックから3年近くが経過し、私たち側にもこうした作品を楽しむ余裕が出てきたようにも感じます。北千住へ足を運んでみてはいかがでしょう。

《If love is quantifiable,》2010 – 2022年

(美術展ナビ編集班 岡部匡志)