【プレビュー】史上初の 「大阪の日本画」展 大阪中之島美術館で1月21日から 東京ステーションギャラリーで4月15日から

近代大阪の日本画が勢ぞろいする展覧会「大阪の日本画」が大阪中之島美術館で2023年1月21日(土)から4月2日(日)まで開催されます。近代大阪の日本画が勢ぞろいする大規模展は史上初めて。また、会期中にオープンから1周年を迎える大阪中之島美術館で開催される初の日本画展でもあります。
東京や京都とは異なる文化圏を形成し、伝統にとらわれない自由闊達な表現が多彩に、かつ大きく花開いた大阪。北野恒富、島成園、菅楯彦ら約60人の画家たちの約150点の作品を展示し、明治から昭和にいたる近代大阪の日本画に光をあてます。東京ステーションギャラリーにも巡回(2023年4月15日~6月11日)します。
大阪の日本画 |
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会場:大阪中之島美術館 (大阪市北区中之島 4-3-1) |
会期:2023年1月21日(土)~4月2日(日) 前期展示 1月21日~2月26日、後期展示 2月28日~4月2日 |
休館日:月曜日(ただし3月20日は開館) |
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで) |
観覧料:一般 1,700円(1,500円)、高大生 1,000円(800円) 小中生以下無料 ( )は前売・20名以上の団体料金 |
詳しくは(https://nakka-art.jp)へ。 |
巡回:東京ステーションギャラリー 2023年4月15日(土)~6月11日(日) |
1、ひとを描く―北野恒富とその門下
大阪の「人物画」は、明治時代後半から昭和初期にかけて、北野恒富とその弟子、樋口富麻呂や中村貞以、女性画家の島成園や木谷千種らの活躍によって大きく花開きました。
当時「悪魔派」と揶揄されたほど、妖艶かつ頽廃的な雰囲気をもつ恒富の人物表現など、多彩な人物画表現が大阪で生み出されました。






2、文化を描くー菅楯彦、生田花朝
古き良き大阪庶民の生活を温かく表現した「浪速風俗画」を確立した菅楯彦は、四条派と文人画を融合させたスタイルは、江戸時代より続く大阪人独特の洗練された感性に響くものとして広く愛されました。
弟子の生田花朝は楯彦の作風を受け継ぎながら、同時代の風俗を積極的に描きました。活気に満ちた浜辺をパノラマで色彩豊かに表現した「泉州脇の浜」など、軽やかでユーモラスな作品を多く残しました。




3、新たなる山水を描くー矢野橋村と新南画
日本の風土に基づく日本南画をつくることを目指した矢野橋村は、江戸時代より続く伝統的な文人画に近代的感覚を取り入れた革新的な「新南画」を積極的に推し進めます。

4、文人画ー街に息づく中国趣味
江戸時代、京都への玄関口の大阪では、煎茶をはじめとする中国趣味が栄え、文人画が流行しました。大阪では漢詩や漢文の教養を身に付けた市民が多かったことから、文人画人気は明治以降も続き、各地から文人画家が集まったことで、優れた作品が生まれました。

5、船場派ー商家の床の間を飾る画
大阪で広く市民に受け入れられたのが、四条派の流れをくむ絵画「船場派」です。セントルイス万国博覧会に出品し、銀メダルを獲得した平井直水の「梅花孔雀図」のように、京都生まれの「四条派」をあっさりとスマートに描くのが大阪らしい「船場派」の作風でした。

6、新しい表現の探究と女性画家の飛躍
明治時代以降、新聞社や出版社が集積した大阪には、挿絵画家などとして全国から多くの画家が集まりました。
また、大阪では江戸時代から女性画家が活躍。加えて、富裕層を中心に教養として子女に絵画を習わせたことから、上村松園、池田蕉園とともに「三園」と称された島成園や、はじめは島成園に学び、のち中村貞以に師事した吉岡美枝など優れた女性画家たちが大阪で登場しました。大阪に集まった人々や女性画家たちの新しい感性は、魅力的な表現を生み出しました。


展覧会では、島成園が子供を描いた代表作である「祭りのよそおい」や、自身が暮らす時代にふさわしいモダンな雰囲気の作品を得意とした吉岡美枝の「店頭の初夏」などが展示されます。


躍動する個性たちが集結する本展を通じて、今につながる大阪の文化の一面が浮かび上がるでしょう。
(読売新聞美術展ナビ編集班)