【探訪・石川県能美市②】九谷焼の世界に没入する宿泊体験が叶う!ウェルネスハウス SARAI「九谷ステイ」

近年、客室や施設内で美術作品などを楽しめる「アートホテル」が増えつつあります。一方で、「焼き物」をテーマにした宿泊施設は珍しいかもしれません。「宿泊しながら焼き物の世界を堪能する」という稀有な体験を叶えてくれるのが、九谷焼の産地・石川県能美市にある「ウェルネスハウス SARAI(サライ)」。まさに九谷焼の世界に入り込んだような気分に浸れます。

若手九谷焼作家の独創性あふれる「九谷ステイ」

ウェルネスハウスSARAI(以下、サライ)の前身は、能美市が運営する研修施設「能美市ふるさと交流研修センター」です。2022年7月からのリニューアルオープンに伴い、能美市にゆかりある8人の若手九谷焼作家が1室ずつ、計8室をプロデュース。2022年11月時点で5室が改装済で、年内にはすべての部屋の改装が完了する予定です。

今回の取材では、8部屋のうち山近泰さん、架谷庸子さん、牟田陽日さんがプロデュースした部屋を見せてもらいました。

山近泰「五彩アニマル’Z」

山近泰「五彩アニマル’Z」

壁一面に描かれているのは、いしかわ動物園(能美市)の動物たち。この「五彩アニマル’Z」を手がけた山近泰さんは、代々続く九谷焼の窯元に生まれ、現在は能美市で作陶しています。山近さんは、九谷五彩(紺青・赤・紫・緑・黄)をベースにした色彩で、動物などをいきいきと絵付けした作品を手がけてきました。その動物たちが飛び出してきたかのように躍動感に満ち溢れた部屋で、心躍るひとときを過ごせそうです。

架谷庸子「里やまの狐」

架谷庸子「里やまの狐」

架谷庸子さんが手がけた「里やまの狐」は、幻想的でありながら、どこか懐かしさを感じさせる空間でした。モチーフになっているのは、能美市の原風景ともいえる「古墳群」。架谷さんは、若手赤絵作家のひとりです。伝統的な赤絵の技法を駆使して生み出されるモダンな作風が人気を博しています。

牟田陽日「眠りの島」

牟田陽日「眠りの島」

訪れた人を別世界に引き込むようなこの部屋は、牟田陽日さんが手がけた「眠りの島」。牟田さんは、「現代の自然に対する意識の在りよう」をテーマに、動植物や古典図案などを色絵磁器に展開しています。「眠りの島」に込めたストーリーを牟田さんに聞きました。

「テーマは、”眠り”。特に、ホテルなどの非日常な空間で、眠りに落ちる前の時間に焦点を当てています。うとうとするうちに非日常と日常の境目があいまいになり、自分が個に戻っていく。そして、心の中の孤島のベッドで眠る。そんな情景を壁に描きました」

さらにこの部屋には、「九谷焼を構成する要素を展開する」という意図も込められているそうです。

「九谷焼を構成する要素のうち、絵と素材、うつわを抽出して展開してみました。絵は壁紙で表現。ランプの下にあるのは九谷の磁土で、素材を示しています。机のうえには、実際に使えるうつわ(マグカップ)を置きました」

夜光貝のランプの下にあるごつごつとした岩は「九谷の磁土」
実際に使えるマグカップも

湯に浸かりながら九谷焼の陶板を鑑賞

武腰潤「鳥たち・川辺の風景」

ウェルネスハウス SARAIには、客室以外にも九谷焼の魅力を感じられるスポットがたくさんあります。その一つがSPA。お風呂に浸かりながら、九谷焼の陶板を鑑賞できるのです。

福島武山「まつりの文」

男湯「赤絵の湯」では福島武山さんの「まつりの文」、女湯「色絵の湯」では武腰潤さんの「鳥たち・川辺の風景」を見ることができます。福島武山さんは赤絵細描の、武腰潤さんは色絵磁器の第一人者です。若手作家の世界観が広がる「九谷ステイ」とはまた異なり、九谷焼の伝統的な技法や作風を直に堪能できます。

宿泊客以外の方でも入れるので、リラックスしながら九谷焼の名品と向き合ってみてはいかがでしょう。

能美市の食材と九谷焼の鮮やかなコラボ

瞬間燻製SARAIサラダ 1,600 円

レストランでは、ランチやディナーを九谷焼のうつわで味わえます。なかでも、九谷焼の華やかな大皿に約20種類の野菜が盛りつけられたランチ「瞬間燻製SARAIサラダ」は、食べ応えも見ごたえも抜群。野菜はすべて、能美市の農家が作ったものです。

開放感あふれる窓、そこから見えるパノラマのような田園風景にも癒されます。能美市に根付く九谷焼、能美市の食材、能美市の田園風景。まさに能美市の魅力を凝縮した空間です。

サライを老若男女が集まる場に

総支配人の本多洋人さん

サライの支配人を務めるのは、能美市出身の本多洋人さん(43歳)。サライを老若男女が集まる場にすることで、能美市の活性化を目指しています。その手段のひとつが、能美市が誇る工芸「九谷焼」です。

「能美市と九谷焼は切っても切れない関係です。僕が子供の頃、普段使いのうつわや花瓶は九谷焼。地元の人の多くは九谷焼にまつわる仕事をしていました。能美市の人々は、九谷焼に囲まれて暮らしてきたのです。

最近、若手作家によって、今までにはなかったスタイルの九谷焼が生まれています。九谷ステイでは、そういった新しい九谷焼を楽しんでもらいたいです。一方で、SPAやカフェラウンジでは伝統的な九谷焼を鑑賞できます。昔から愛されてきた九谷焼の魅力を改めて感じ取っていただきたいですね」

九谷焼の名品がずらりと並ぶカフェラウンジ
解放感あふれるラウンジ

九谷焼の美の世界に没入しつつ、能美市の自然や食材も堪能できるウェルネスハウス SARAI。能美市の人々には憩いの場を、遠方から訪れた人には「ここでしかできない宿泊体験」を提供します。うつわめぐりが好きな方はもちろんのこと、「普段とは一味異なる旅をしたい」という方におすすめです。

ウェルネスハウス SARAI
住所:〒923-1105 石川県能美市石子町ハ147-1
営業時間:10:00〜22:00 ※各施設営業時間が異なります。
宿泊料金:4,950円~8,800円 ※食事代は別途 詳しくは公式サイトの「九谷ステイ」のページ
定休日:水曜日(祝日の場合営業)、年末年始
アクセス:「のみバス」連携ルート(日中)に乗車し「ふるさと交流センター・さらい」バス停下車、徒歩すぐ
詳しくは公式サイト

九谷ステイを手がける作家一覧
井上雅子
上出惠悟
架谷庸子
山近泰
山岸青矢
中田雅巳
早助千晴
牟田陽日

予約は施設へ直接電話(0761-57-1212)でお問い合わせください。

探訪・石川県能美市③に続く

探訪・石川県能美市シリーズの①はこちら

(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)