「六本木クロッシング 2022展:往来オーライ!」 身近な事象の見つめなおし、様々な隣人との共生、多文化との出会い 森美術館

AKI INOMATA《彫刻のつくりかた》2018年- 作家蔵

「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」

  • 会期

    2022年12月1日(木)2023年3月26日(日) (会期中無休)
  • 会場

    森美術館
    https://www.mori.art.museum
    港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
  • 観覧料金

    【平日の当日窓口】一般1800円、学生(高校・大学生)1200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1500円

    【平日のオンライン】一般1600円、学生(高校・大学生)1100円、子供(4歳~中学生)500円、シニア(65歳以上)1300円

    【土・日・休日の当日窓口】一般2000円、学生(高校・大学生)1300円、子供(4歳~中学生)700円、シニア(65歳以上)1700円

    【土・日・休日のオンライン】一般1800円、学生(高校・大学生)1200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1500円

    ※事前予約制(日時指定券)を導入しています。当日、日時指定枠に空きがある場合は、事前予約なしでも入館できます。

  • 開館時間

    10:00〜22:00 (火曜日のみ17:00まで。ただし12月17日(土)は17:00、1月3日(火)、3月21日(火・祝)は22:00まで)(入館は閉館時間の30分前まで)
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2004年以来、森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として開催している「六本木クロッシング」。第7回目となる今回は1940年代~1990年代生まれの日本のアーティスト22組を紹介しています。すでに長年、内外で活躍しているアーティストたちから、今後の躍進が期待されている気鋭の若手までが揃い、創作活動の交差点(クロッシング)となる展覧会です。

今回はコロナ禍によって大きく変わった私たちの暮らしを見据えて、「新たな視点で身近な事象や生活環境を考える」「さまざまな隣人と共に生きる」「日本の中の多文化性に光をあてる」という3つの観点で、展覧会を構成しています。

多様な協働作業で考える身近な事象 「アートとは?」

自作のインスタレーション《彫刻のつくりかた》を前にAKI INOMATAさんは「そもそもアートとは何?ということを考えるきっかけになれば」。

AKI  INOMATAさんは人間以外の生物との「協働」による制作を通じて、それら生物との関係性や、アートの根源的な意味について考える作品を制作しており、注目を集めています。今回の《彫刻のつくりかた》はここ数年、INOMATAさんが継続的に取り組んでいるインスタレーション。展示されているオブジェはビーバーがかじった木が原型になっています。

AKI INOMATA《彫刻のつくりかた》2018年-

「ビーバーがかじった木片を見て、これは美しいなあ、と思った」のが制作のきっかけ。まず国内の動物園いるビーバーに木片を提供。かんだりかじったりしてもらいました。それを彫刻家に依頼して自動切削機で3倍サイズの複製にしたものが展示されています。会場には制作過程の詳しい考察も展示されており、ビーバの身体の作りや、木の硬さなどによって形状が決まってくることが分かります。木の中に潜んでいる虫が食った跡も出来上がりに微妙な影響を与えます。

確かにこの造形、「アート」としか言いようがない魅力に満ちたものです。

さて、とするとこの「作品」を作ったのは誰でしょう。INOMATAさん?ビーバー?木?彫刻家?虫?と考えるだけでワクワクしてきます。「この作者は一体だれ?これを美しいと思うことはどういう意味があるの?などと考えていると、最終的にはアートとは何、というテーマに突き当たりますね」とINOMATAさん。私たちの身近な事象や生活環境の見つめなおし、あるいは「隣人との共生」ということも考えるきっかけにもなりそうです。

沖縄の現状をみつめ、決意の絵筆

自作を前に石垣さん。「身近な風景なのに描くことは本当に難しかった」

沖縄で生まれ育った石垣克子さんはこれまで、明るく力強い色彩を用いた油彩や素描などを中心に制作。素朴でかつファンタジックな世界観を表現してきましたが、今展のシリーズは少しトーンが違います。普天間基地、辺野古の埋め立て現場、那覇軍港など、私たちにとって「テレビのニュースで見たことがある」情景が、淡々としたタッチで描かれたこれらの作品の引き付ける力に驚かされます。基地や軍港が周囲の景観と地続きになっていることにも衝撃を受けます。写真や映像ではない、絵画という形式のもつ強さを感じます。

石垣克子《嘉数高台公園からの眺めⅤ》2022年

「これを描けるようになるまでに、何年もかかりました」と石垣さんは語ります。2008年以降、沖縄市のコザにアトリエを構えた石垣さんは、住まいのある那覇市内からコザに通う途中で、これらの土地の近隣も頻繁に通るようになります。「基地はなくなればいい、埋め立てもごめんだ」と思うものの、それらの土地や景観を描く対象として見られるようになったのはここ数年のこと。非常に時間がかかったそうです。

石垣克子《辺野古・大浦湾》2022年

「気軽に描けるようなモチーフではないんです。現場に立って、スケッチをするだけでも大変なことでした」。逡巡を繰り返しながら、ようやくたどり着いたのがこれらの表現でした。

石垣克子《ガジャンビラ公園からの眺めⅡ》2022年

「本土の人たちにやはりこの現状を知ってほしいという思いも込めて、描いた」というシリーズ。「日本のなかの多文化性に光を当てる」上で、沖縄の現状を知ることは欠かすことのできないものの一つでしょう。現地のアーティストの思いや眼差しを想像しながら受け止めたい作品です。

このようにコロナ禍や戦争を踏まえて、私たちの行く末を考える契機としてぜひ触れておきたい展覧会です。

展示風景。O JUNの作品
展示風景。青木千絵の漆作品。
横山奈美 「Shape of Your Words」シリーズの展示
展示風景。市原えつこ《未来SUSHI》2022年
SIDE CORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUADの展示 《rode work ver. tokyo》2018/2022年
青木野枝の展示 「core」シリーズ 2022年

(美術展ナビ編集班 岡部匡志)