【レポート】「国境の島」に2022年にオープンした「対馬博物館」(長崎県)に行ってきました

博物館から車で少し足を伸ばせば対馬の雄大な大自然を堪能できる

日本海に浮かび、海を挟んで韓国とすぐそばにある離島「対馬」(長崎県)は、古くから人と文化の交流の地として独自の文化や歴史を育んできました。そんな対馬の歴史や自然、文化を紹介する「対馬博物館」が2022年4月にオープンしました。佐賀県在住のライター藤村はるなさんがレポートします。

対馬博物館
住所:長崎県対馬市厳原町今屋敷668-2
休館日:木曜日 木曜日が祝日・振替休日の場合はその後の最初の平日、12月28日~1月3日は休館
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料(平常展):一般550円/大高生330円/中小学生220円
詳しくは博物館の公式サイト(https://tsushimamuseum.jp/)へ。

対馬の玄関口の港から徒歩10分

対馬の玄関口・厳原港

博多港からのフェリーやジェットフォイルが到着する対馬の玄関口、厳原いづはら港からほど近くにあるのが、2022年4月に開館した「対馬博物館」です。島内は車移動が中心となりますが、港から博物館へは徒歩10分ほどでたどり着くことができます。

対馬博物館の外観

鎌倉時代から勢力を拡大し、江戸時代に対馬藩を治めたそう氏の居館「金石城跡」の上に建つ「対馬博物館」。平常展は全部で6つのエリアによって構成され、それぞれの展示から対馬の歴史と文化、自然を知ることができます。

1「総合展示」 独自の自然や文化を紹介

最初のエリア「総合展示」では、対馬の自然環境や歴史を総合的に振り返ります。大型のデジタルサイネージで対馬の地形や歴史の移り変わりが解説されます。

中央にある大きなデジタルサイネージに映像が流される

対馬にかつて生息していた日本最大のキツツキ「キタタキ」の剥製はくせいをはじめ、対馬のみに育つツシマヒョウタンボクの標本、独自に進化した無形文化財の釣針「満山釣針」など、独自の自然と文化が紹介されています。

長崎県指定文化財 キタタキはく製標本
満山釣針

2「古代展示」 出土数日本一の銅矛

次は「古代展示」です。島内で最も古い遺跡は約7300年前の縄文時代の遺跡とのこと。ここでは、縄文時代、弥生時代、古墳時代までの考古遺物が並びます。これらの出土品は、九州や朝鮮半島から渡ってきたもののほか、中国とのつながりを示すものもあり、対馬がまさに「中継地」だったことを伺わせます。

増田山遺跡出土品 弥生時代 2世紀 弥生時代の銅矛の出土数は対馬が日本一

3「中世展示」国境の島ならではの歴史

3番目の「中世展示」では、中継地として国内外から様々な文化がもたらされた対馬の歴史を振り返ります。中世は蒙古襲来や倭寇などもありましたが、海上交易によって対馬が栄えていった様を史料は物語ります。

重要文化財「梵鐘」が中心に置かれている「中世展示」コーナー

たとえば、13世紀に高麗で作られた「青磁獅子形硯滴」や朝鮮文化の影響を受けた重要文化財「梵鐘」など、中国大陸や朝鮮半島との強いつながりを思わせる展示品が並びます。

青磁獅子形硯滴 高麗時代 13世紀
青磁透彫龍文墩 高麗時代・13~14世紀 多久頭魂神社 長崎県対馬歴史研究センター寄託

そのほか、倭寇の絵巻や蒙古襲来などの歴史的出来事も説明パネルを用いて紹介。海と密接に結びついた「国境の島」ならではの歴史を知ることができます。

倭寇図鑑(複製品)

4「近世展示」偽造印も 宗氏の外交術

4番目の「近世展示」では、安土・桃山時代から江戸時代の出来事を伝えます。対馬の宗氏は、日本の将軍や朝鮮国王の偽造印まで用いて、日本と朝鮮の間を、巧みな外交術で取り持ったことでも知られます。

宗氏の偽造した「徳有隣」印の複製品 原本は重要文化財、室町時代・16世紀
「中世展示」にある偽造印の押印体験コーナー。国の命運を握りかねない偽造印を押したときの宗氏の緊張感を体感できます

また、日本と朝鮮の交流の証であった朝鮮通信使の行列を描く「朝鮮国信使絵巻」を基に、行列の姿をデジタルサイネージ上で音楽と共に再現。にぎやかに躍動する通信使たちや対馬藩士の様子に、思わず引き込まれてしまいます。

デジタルサイネージで再現される「朝鮮国信使絵巻」

5「近現代展示」 写真資料で物語る国境の離島の在り方

明治以降も、対馬は国境の島として、また軍事拠点として重視されていきます。「近現代展示」では、明治以降の対馬を写真資料を通じてフォーカスしていきます。

写真資料では、旧対馬藩主の宗氏の跡継ぎとなった伯爵・宗武志と、その妻であり朝鮮の李氏朝鮮第26代国王の娘・徳恵姫の対馬来島写真などが展示されています。日韓併合時に行われた政略結婚として知られる一方で、写真からはそうした政略を越えた二人の仲睦まじい様子を感じ取ることができました。

「宗武志と徳恵姫」展示風景

6「自然史展示」 対馬の昆虫から見る多様性

そして、平常展の締めくくりとなるのが、フロア2階にある「自然史展示」です。佐賀県出身のアマチュア昆虫研究家であり、約40年に渡って対馬で昆虫採取を続けた相浦正信氏の昆虫標本資料を通じて、対馬の昆虫について詳しく知ることができます。
対馬固有の昆虫のみならず、島外からなかには中国大陸から飛んできて、対馬に迷い込んだ“迷蝶”がいたのも興味深かったです。

対馬に生息するクワガタの展示。相浦氏が手書きで解説

対馬博物館限定のミュージアムグッズは?

博物館のミュージアムショップでは、クリアファイルや手ぬぐい、文具類、収蔵品の図録などのオリジナルグッズが販売されていました。

ミュージアムショップの様子

オリジナルグッズには、対馬のみに生息するヤマネコ「ツシマヤマネコ」や、対馬市の木である「ヒトツバタゴ」、対馬の石文化をモチーフにしたものも。シンプルなデザインながら、普段使いすれば、ふとした瞬間に対馬への旅の余韻を感じることができそうです。

(ライター・藤村はるな)