【プレビュー】諏訪敦「眼窩裏の火事」府中市美術館で12月17日から

緻密で再現性の高い画風で写実絵画のトップランナーとして知られる画家・諏訪敦すわあつし氏の展覧会が府中市美術館で、12月17日(土)から2023年2月26日(日)まで開催されます。丹念な調査の実践と過剰ともいえる取材量が特徴の諏訪氏は、亡き人の肖像や過去の歴史的な出来事など、不在の対象を多く描いてきました。本展では、終戦直後の満州で病没した祖母をテーマにしたプロジェクト《棄民》、コロナ禍のなかで取り組んだ静物画の探求、そして絵画制作を通した像主との関係の永続性を示す作品群が紹介されます。

人間を描くとは如何なることか? 絵画に出来ることは何か?

これらの作品から、諏訪氏が「実在する対象を、眼に映るとおりに写す」という写実のジャンル性から脱却し、認識の質を問い直す意欲的な取り組みをしていることが分かるでしょう。「視ること、そして現すこと」を問い続け、絵画制作における認識の意味を拡張しようと続ける作家の今に迫ります。

諏訪敦「眼窩裏の火事」
会場:府中市美術館(東京都府中市浅間町1-3)
会期:2022年12月17日(土)~2023年2月26日(日)
休館日:月曜日(1/9 は開館)、12/29(木)~1/3(火)、1/10(火)
観覧料:一般700円、高大生350円、小中生150円
詳しくは展覧会Webサイトへ。

第1章 棄民

死を悟った父が残した手記を手がかりに、諏訪氏は、幾人もの協力者を得ながら現地取材にのぞみ、かつて明かされてこなかった家族の歴史を絵画化しました。

敗戦直後、旧満州の日本人難民収容所で母と弟を失った、少年時代の父が見たものとは。諏訪氏は眼では捉えきれない題材に肉薄し、新たな視覚像として提示しました。

《father》1996 年 佐藤美術館寄託
《HARBIN 1945 WINTER》2015-16 年 広島市現代美術館蔵
《依代》2016-17 年 個人蔵

第2章 静物画について

コロナ禍にあって、諏訪氏は、猿山修氏と森岡督行氏の3人で結成した「藝術探検隊(仮)」というユニットによる静物画シリーズに取り組みました。『芸術新潮』(2020 年6〜8月号)誌上で連載されたこのシリーズは写実絵画の歴史を俯瞰するもので、静物画にまつわる歴史を”遡行”し制作されました。

《不在》2015 年 個人蔵
《まるさんかくしかく》2020−22 年 作家蔵

第3章 わたしたちはふたたびであう

肖像画を多く手掛ける中で、ときには像主を死によって失うことも経験した諏訪氏。そうした経験を繰り返す中で諏訪氏は「描き続ける限り、その人が立ち去ることはない」という確信にも似た感覚にたどり着いたといいます。

例えば、1999年から描き続けてきた舞踏家・大野一雄は2010 年に亡くなりますが、気鋭のパフォーマー・川口隆夫の協力を得て亡き舞踏家の”召喚”を試みました。異なる時間軸を生きた対象を写し描くことの意味を再検討します。

《Mimesis》2022 年 作家蔵
《Solaris》2017−21 年 作家蔵

展覧会タイトル「眼窩(がんか)裏の火事」について

閃輝暗点せんきあんてんという脳の血流に関係する症状により、ときに視野の中心が溶解する現象や、辺縁で脈打つ強烈な光に悩まされることがあるという諏訪氏。この絵に描かれているガラス器を歪め覆う靄のような光は現実には存在しませんが、描かれているものは画家が体験したビジョンに他なりません。

《目の中の火事》2020 年 東屋蔵

関連事業

・山田五郎×諏訪敦 クロストーク 1月7日(土)15:00~
事前申し込み制、限定100人、無料

・川口隆夫 ライブパフォーマンス「大野一雄について」1月28日(土)18:00~(20:00終演予定)
事前申し込み制、限定100人、3000円(観覧料含む)

・「藝術探検隊喫茶室」トークイベント 諏訪敦×猿山修×森岡督行×伊熊泰子(探検相談役) 2月18日(土)15:00~
事前申し込み制、限定15人、1500円

関連事業の申し込み方法は、府中市美術館のホームページで確認を。

(読売新聞美術展ナビ編集班)